#11 宝石の「硬度」と「靭性」に思うこと


"宝石と認められる定義”には、

1、美しいこと

2、耐久性があること

3、希少性が高いこと

上記の3つが挙げられます。

厳密には上記3つすべてに当てはまらなくても、いずれかに突出して当てはまる鉱物に関しては、例外的に"宝石”と分類されるものもあります。

<例外の例>

・真珠や珊瑚(さんご)・・・そもそも石ではない。生物起源。

・オパールやトルコ石・・・耐久性低い

・アウイナイトやベニトアイト・・・耐久性低いが、希少性が高い

などなど・・・。まあ、挙げればキリがありません。

その中で今回注目したいのは「耐久性」という部分。耐久性と聞いて一番に思い浮かべるのは恐らく、宝石の「硬度(かたさ)」だと思います。

これに相応する指標として、「モース硬度」というものがありますね。

そうです、ダイヤモンドを頂点としたときの硬さの指標です。

皆さん一度は何かで目にしたことはあると思うのですが、一応さらっとおさらいをすると

モース硬度1:滑石(タルク)

モース硬度2:石膏(ジプサム)

モース硬度3:カルサイト(他、銅貨など)

モース硬度4:フローライト

モース硬度5:アパタイト(他、ガラス系のもの)

モース硬度6;ムーンストーン(他、鋼鉄のナイフなど)

モース硬度7:クォーツ(水晶、他鋼鉄のヤスリなど)

モース硬度8:トパーズ

モース硬度9:ルビー、サファイア

モース硬度10:ダイヤモンド

上記のランキングはとても有名で、「宝石として耐久性に心配のないライン」は"モース硬度7”と基準が定められています。この理由は、一般的に目に見えないホコリの中にも多くの細かな水晶(クォーツ)のかけらが含まれていて、硬度7以下の宝石たちは使用していくにつれてちょっとずつ磨耗していってしまうからだと言われています。

しかしこの「硬度」というのは、あくまでも"スレ傷に対する耐久性の高さ”であるということを知らない方も多いのではないでしょうか?

宝石の買い取りをしていた頃、使用されていたダイヤモンドを拝見させていただいたときに、エッジ(ダイヤモンドの外周の縁)が欠けたりしていることが多々ありました。それはそもそものダイヤモンドのグレードを著しく下げることになるので、金額を提示する際にもちろんお客様にその事実を説明します。

中には、

「ダイヤモンドは地球上で一番硬いのになぜ割れたのか。もしかしたら、購入の際にだまされたのか?」

「リフォームしたときに、もしかしたらガラスとすり替えられたのでは!?」

「イチャモン付けて、安く買い叩くつもりか!?」

などなど、"硬度の本当の意味”が伝わっていないことで、不安なお気持ちにさせてしまうことも多々ありました。

「硬度」は、あくまで"スレ傷に対する耐久性”なので、ぶつかったりした時の大きな"衝撃に対する耐久性”とはまた別のもの。

細かい話になると長くなるので今回は割愛しますが、ダイヤモンドは"スレ傷に対しては強いが、衝撃に弱い”という性質を持った宝石です。(完全劈開の性質をもち、これを利用してカットされる)

例えばテーブルや扉の角に、この劈開の方向に運悪く石がぶつかった過去があったりすると、「実はそのときに欠けていた」ということが生じます。リフォームなどの時でも同様。石を台座から外したり、また留め直したりする際の石にかかる圧力で、欠けたり割れたりすることは珍しくありません。

昔は年伝説のように「トンカチで叩いても割れない」なんてことも耳にしましたが、否、簡単に粉々に砕け散ります。

では、この"衝撃に強い”ということはどういうことなのか?

タイトルにもある「靭性(じんせい)」という言葉で表され、"石のねばり強さ”が高いというものになります。

この「靭性」の"靭”は、訓読みをすると「靭い(つよい)」と読むらしい(私も今回調べて初めて知りました。知らなかった・・・(笑))です。

本当の意味で強い宝石というのは、この靭性が強い宝石かもしれません。

例えば

・ジェイダイト(硬玉ひすい)

・ネフライト(軟玉ひすい)

・アゲート(めのう。多結晶質の水晶の潜晶質集合体)

などのような、小さな結晶がギュッと一つに固まった構造の宝石(多結晶質の宝石)が靭性は高くなります。

先に述べたように、「劈開(へきかい)」のように結晶の方向によって割れやすい方向があったり、石そのものが柔らかいものであっても、微細な結晶で集まっている場合はその"割れ”が隣り合った結晶にまたがって広がることは滅多になく、目に見えない微細な一つの結晶のなかで止まることで、大きな宝石としての姿では割れや欠けのような大きな欠損として現れにくいからです。

オパールやこはく、天然ガラスのように非結晶質のものは例外ですが、通常は透明な宝石は「単結晶」なので、「多結晶」のものと比べると靭性は劣るということになります。

とはいえ、硬度7以上の単結晶の宝石は、私たちが思う「ガラスのような割れ易さ」ではないので、そこまで気にして慎重になりすぎる必要はありません。

なお、宝石の耐久性の中には"安定性”といって、太陽光への耐久性や薬品への耐性なども重要な要素となってきます。

ただ、これはまた別の機会で・・・。

<募集>

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