#05 ダイヤモンドの「内包物の種類」に思うこと


ダイヤモンドは、地下200km以上深い地中で生成されていると言われています。


その大地は、普段私たちも目にする岩石や砂、様々な不純物で満たされていて、たとえ生物が存在することができないくらい深いところであっても、必ず他の物質が何かしら存在する場所です。


何億年もかけて結晶する宝石達の中に、例えば歪みやインクルージョン(内包物)、色の原因となる成分が含まれることの方が、何も含まれないよりも普通のことに感じますよね。

例えば「ファントム・クォーツ」と呼ばれる、水晶の結晶の中に何層かの山形の成長模様がみられるものや、バイカラー・トルマリンなどのように途中から色が変わっているものなど、その成長過程で周りの環境が変わったためにその痕跡として、成長線や色の変遷として目に見える場合があります。

地球の歴史を、インクルージョンや色で感じることができるのですね。

現代では知らない者がいない、インクルージョンで価値が上がる宝石としては、皆さんきっとワクワクしてみたであろう映画"ジュラシック・パーク”にも登場した「虫入り琥珀(コハク・アンバー)amber」が有名です。個人的には虫が大嫌いな私としては触ることすらできないのですが、あの美しい飴色の結晶の中に生きたときの姿そのままに時間が止まっているその様は、残酷でもありながら何とも神秘的で、やはり惹きつけられる美しさがあります。(それは生命の儚さもあいまっての美しさかも)


インクルージョンは、実はただ単に「不純物」として考えるものではなく、実は「その宝石が何の宝石種であるか」まで教えてくれることもある大事な指標です。個々の宝石にしか存在しない独特のものもあり(ペリドットのリリー・パッドや、ムーンストーンのムカデ状インクルージョンなど)、それだけで断定はできないですが「もしかしたら・・・?」と鑑別士が次に何の検査をして識別していったらいいかの道しるべになることも多いです。


今回は、ダイヤモンドのインクルージョンにはどんなものがあるのか?ということ、

一番多いのは、

○カーボン(黒色インクルージョン、グラファイト)

○フェザー(内部の亀裂)

○結晶インクルージョン(無色、ダイヤモンド)

のあたりでしょうか?

変わり種で言うと、

○パイロキシン・インクルージョン(グリーン)

○ガーネット・インクルージョン(レッド、赤紫、オレンジ)

がまだ手に入りやすいあたりかもしれません。


ダイヤモンドは地下何百キロも深いところで生成されるので、他のカラーストーンによく見られるような「液体インクルージョン」や「気体インクルージョン」というものはないようです。ギュッと中身が詰まったインクルージョンなのですね。


クラリティで「インクルージョンはどのようなタイプのものがお勧めか?」と聞かれることがあります。

これが、難しい。

私個人的には、フェザーよりも結晶系(カーボンやカラーレスなど)のものを選ぶことをお勧めします。

実は日本ではダイヤモンドはエンゲージメントリングのようにお祝い事に使われることが多いので、真っ黒い結晶のカーボンが入ったダイヤモンドは好まれません。なので、同じIクラスやSIクラスの石であっても、フェザーが入っているものよりもカーボンが入っているものの方が若干お安めになっています。

お勧めなのは、安いからと言うことではありません。

もちろん大きさや入っている場所にもよるのですが、フェザーは肉眼で「白く視認できる」ことが多いのですが、カーボンは結構この視認性が低いのです。(輝きや明暗のモザイクの中に隠れて見えにくい)

また、ガラスのように脆いわけではないのでここも考え方としては極端なことは言いたくないのですが、やはりフェザー(亀裂)はもしリモデルしたり使用しているときに不慮にぶつけたりして更にその傷が広がったらイヤだな、ということもあります。


ただ、これはあくまで私個人の感想なので、やはり肉眼で「輝きを妨げていないインクルージョンを持つ石」とご自身が納得できたものが一番ですね。


さて、もしグリーン(パイロキシン)や赤色、オレンジ色(ガーネット)などの結晶を伴ったダイヤモンドの場合は、中央宝石研究所において「宝石の内部世界レポート」を付けてもらってください。慣れていないと10倍のルーペを使用して内部のインクルージョンに焦点を当てて観察するというのはとても難しいですが、このレポートには検査した結晶の拡大写真が載るのです!(しかも、石種も特定してくれます。※例外あり)


何やらつらつらと長くなってしまいましたが、要は「インクルージョン(内包物)も、面白いよ」ということ。

是非、石選びの際に注目してみてくださいね。


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