#09 ダイヤモンドの「カラット(重量)」に思うこと

ダイヤモンドやカラーストーンは、「カラット(carat)」という単位で「重さ」を表します。

カラットは「大きさ」だと思っている方は多いと思いますが、これは「重さ」の単位です。比較的その粒の大きさが揃っていたと言われる「イナゴ豆」を天秤にかけて重さを量っていたことが語原で、その豆がギリシャ語で「カロブ」と呼ばれるところからきていると言われています。

1ct=0.2g。

しかし、私たち宝石業者も、ニュアンス的にはカラットを「大きさ的な認識で」使うことも多いです。
なぜなら、比重(ある物質の、同体積の水に対する比率)というものは個々の宝石に固有の物で、個体によって変動するものではありません。

例えばダイヤモンドの比重値は「約3.5」。これはどのダイヤモンドであっても変動するものではありません。
だとすると、カラット(重量)が同じであれば、同じダイヤモンドは大体同じ大きさになるわけです。

しかし、ここで問題になってくるのが「カットバランス」なのです。
例えば、1カラットのラウンドブリリアントカット・ダイヤモンドに期待される大きさは、直径6.3mm~6.5mm以上。この数値は、ラウンドブリリアントカットの理想的なプロポーション(カット評価で言うとGOOD~EXCELLENT)において、バランスがいいと考えられる直径になります。
私たちが「1カラットのダイヤモンドがほしいな」と探したときに、納得できる"見た目の大きさ”ということになります。

しかし、先の記事でもお話ししたように、宝石のカットは歩留まり(元の原石の大きさ)を最大限生かした形にカットされるため、いびつな原石やインクルージョンの入る位置によっては希望通りのプロポーションにはなりません。
ようは、直径が小さい分、厚みが出てしまったり、逆に厚さが薄い原石からだと直径は大きいが厚みがなく、透け感のあるカットになってしまったりするわけです。
でも、カラットは「重さの単位」なので、たとえ直径が6.0mm未満で厚さがあるダイヤであっても、逆に7.0mm近い直径があって厚さがないダイヤモンドであっても、「1カラット(0.2g)」ということがあります。

私たちの目では、6.0mmないダイヤモンドは「1カラットです」と言われても、見た目には0.8カラットや0.7カラットに見えてしまいますし、逆に6.7mmや6.8mmのダイヤモンドは1カラットと比べるとだいぶ大きく感じます。(宝石の直径の0.1mmの差は、肉眼では結構違って見えます。機械があったら、お店で比較してみてみてくださいね☆)

じゃあ、カラットにこだわるよりは見た目の大きさを重要視した方がいいねとなると、それはまた違ってきます。その宝石種によって「光が宝石内で屈折する度合い=屈折率」という物が存在していて、各カット面がその数値にずれた角度でカットされていると、「透け感」といって光の抜けが出来てしまい、本来その宝石が発揮できるはずの「輝き」を生み出すことの出来ないプロポーションになってしまうことも多いからです。

宝石業界の中でも、「1カラットのダイヤモンドを探している」というと、暗黙の了解で「せめて6.3mm以上の、肉眼で1カラットだと認識できるサイズ」という感じで、重さの単位を言いつつ大きさまで結びつけているところがあります。販売店によってはカラットをまるで大きさのように表現しているところもあると思いますが、これはあくまで購入する側にとって分かりやすくするための表現だと思っていただければと思います。

個人的には、ダイヤモンドで言うと0.9ct台で6.3mm前後のカットGOODくらいのダイヤモンドがお勧め!枠に留めたときのサイズ感としては1カラットのダイヤモンドと遜色ないです。しかも、ダイヤモンドの代金というのは「1カラットあたり○○円」で計算されるのですが、この「1カラット」の壁は高く、1カラット以上と1カラット未満のダイヤモンドでは値段が全く違ってきます。
おなじ見た目の印象でも、0.9カラット台のダイヤモンドが断然お得。
もしダイヤモンドを選ぶところから始めてお仕立てをする際は、是非ルース(裸石)の状態で、比較してみてからお選びすることをお勧めします。

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