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私とearthmanの「系」 #3 和田 洋


不思議なご縁の日だった。もう 4 年になるのか。 確かもう閉店まぎわの土曜夕方、オンボロのジムニーから若い男女が降りてきた。 うちは町外れの焙煎屋。週に 2日しか開いてない。新規で訪れる客も少ない。まして若者など。


(どちらさま?)

私は極度の人見知り。じゃなんで店やってんだといつもの自問をし、訝しげに全力の笑顔で 話しかけてみる。

すると、彼らは少し緊張しながらも人なつっこい礼儀正しさで、彼ら自身の仕事や取り組み を熱っぽく話してくれた。私は現代の 24 歳が持つ意外すぎる素朴さ、そして聡明さ漂う口 調とその内容に、急激に興味を惹かれた。


彼らは その業界に明るくないものが一番わかりやすい表現で言うところの「自然を大事にする」的 な仕事をしていた。当時株式会社パソナに在籍し、淡路島でその業務にあたっていた彼らは、 その思いを膨らませ3年のち独立。27 歳の現在は和歌山の限界集落にある今にも壊れそう な「古い家」に住んでいる。田畑を耕し森を訪ね、薪を割ったり湧き水を汲んだり。またぎ・ きこり・炭焼き・百姓、と呼ばれる仕事を自ら選び、自給自足の生活を送っている。



なるほど、ただの厭世主義にも感じるがしかし全然違う。 彼らがやろうとしていることは、食の単純な再生産や災害時のシェルター作りではなく、大 消費時代が終わった今、人が永く生活する方法を探し人々にそれを「伝えていく」ことだった。

そんな彼らの話を聞いて、以前からモヤモヤした思いを持っていた私も、環境破壊に対する 不安や自然との関わり方が輪郭を伴った意識になってきた。 というのは、私はコーヒー豆を販売しているが、店での焙煎作業が毎年確実に辛くなってお り、夏を迎えるのが怖くなっているからだ。焙煎時の室内温度が毎年 1°Cずつ上がっている。 今年はもう 44°Cに届くだろう。普通に倒れそうだ。


そして思った。もう止められないのかもしれない、もう手遅れかもしれない。でもすべてを 諦めて何も対処しないのは少し違うんじゃないかと。 できることはないか。プラスチックのスプーンがなんとなく良くないことはもう肌で分か っていて、「できれば避けたほうがいいよね」くらいの感覚はむしろもう私だけではなく全 ての人が持ち合わせていているんじゃないか。

かといって今さら現代の便利を捨てなくてもいい、むしろもう捨てられないという正直な 気持ちもある。火は薪よりガスが早いし水は湧き水よりも水道のほうがラクだ。これも人類 の叡智であり感謝して使うべきものだと考えている。

その矛盾を彼らにぶつけてみた。


すると彼らは言う。 「土にまみれた自然な生活」か「コンクリート箱で快適な暮らし」のどちらかを選ぶのでは なく、あくまで現代にマッチした便利と心地よさのバランスを見つけることが大切だと。 そして、キャンプやバーベキューが好きでもいいし、窯でピザを焼きたいでもいい、アウト ドアで土や水や火に触れたいでもいい。どんな気軽な入り口からでも、さまざまな切り口で 自然の大切さを伝えることができると。それが中庸を知る彼らの最大の魅力であり武器であった。


彼らに強く興味を持った理由はまさにここだ。意識の(小さな)変化の先にある、「便利と心 地よさの均衡がとれる地点」を私は彼らと探してみたいと思った。相入れるポイントが必ず ある。しかもそれぞれの人にとってそれぞれの快適なポイントが。


本当におもろい奴らです。 まずは一度彼らに会っていただきたい。彼らの話に少しだけ耳を傾けてみてほしい。 応援はそれからでもいいと思います。なぜなら現代の「成熟し全てが揃ってしまった世界」 で手探りの新しい価値探しは、勢いだけで突き進んできた私の時代感とはまた違った「丁寧 さ」「慎重さ」も必要だと感じるからです。

もちろん私は心から彼らを応援します。そしてそのためにこれからも彼らの話を聞き続けていこうと思います。

そんな彼らの想いを読んでみてください。お願いします!
https://readyfor.jp/projects/we_are_earthman


こんな素敵な文章を書いてくれた
和田さんは、神戸でスペシャリティコーヒーの焙煎屋・喫茶室を「豆の匠」
という屋号で営まれてます☕️
珈琲大好きな私たちが惚れている豆の匠さん、是非行ってくださいね〜✨
(喫茶室のオープンは、水・土の午後のみです!)

◆Instagram:@mamenotakumi
◆HP           :https://mametakucoffee.com

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