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「読みたい」の地層-2020.04-3

「この本が、自分に未知の何かを教えてくれる」「特別な感情を湧き上がらせてくれる」「ここではないどこかへ連れて行ってくれる」「もしかしたら自分を変えてくれる」「あるいは成長させてくれる」そういったポジティブな予感の集積によって、本は積み上がっていくのだ。自分は元々ネガティブな人間ではあるのだけど、世界に対して肯定的でなければその衝動は起こり得ない。だからこそ大事にしたいと思うのだ。」(施川ユウキ『バーナード嬢曰く。②』、p.44)

「読みたい」という感情は、積み重なって層になる。その層は、いつか振り返ったとき、その時の自分を知る手がかりになるかもしれない。


これは、ある本を読みたいと思ったときの感情を記録しようとする極私的ジャーナルです。


ヤマト王権の考古学 「おおやまと」の王から倭国の王へ(坂靖著、新泉社)

日本史のなかの「普遍」: 比較から考える「明治維新」(三谷博著、東京大学出版会)

4月×日

土曜日の楽しみの一つ、朝日新聞の読書欄。ここの書評を読んで一度に何冊も買ってしまうこともあれば、一方、「今週は全然そそられない」という時もあるのはなんでだろうか。4月11日の読書欄は後者だった。

11日に読んだときは堀部さんが紹介していた『向田邦子ベスト・エッセイ』に惹かれたけど、今回数日たったあとにもう一度じっくり読み直して、さらに読みたい本が二冊増えた。その時の気分によって、同じ書評読んでもそそられたり、そそられなかったりする。読書欄を読んでそそられ具合に差があるのも、誌面の内容というよりは自分自身の、コンディション、の差なのだろうか。

呉座勇一さんが紹介していた『ヤマト王権の考古学 「おおやまと」の王から倭国の王へ』(坂靖著、新泉社)は考古学の研究成果から古代ヤマト国家の実態に迫るもの、のよう。日本古代史について一通りの知識を得たいなと思うも、その文献史料の少なさからか、教科書的な本の記述もあっさりとしたものになりがち。歴史学・考古学の知見を適切に参照しないと、ともするとストーリー重視というか、「歴史のロマン」的なある種わかりやすい理解に頼りたくなってしまう。ちょっと学びにく古代史だからこそ、こうしたやや専門書よりの本をチョイスすることが、いいのかもしれない。

もう一冊の『日本史のなかの「普遍」: 比較から考える「明治維新」』(三谷博著、東京大学出版会)は石川健治さんの紹介。

王政復古と称する明治維新の内実は、「中間層」による「朝廷の簒奪」であって、「下からの改革」と見た方が実情に合っている、と著者はいう。(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14437945.html?ref=pcviewer)

同じく三谷さんがNHKブックスから出している『維新史再考 公議・王政から集権・脱身分化へ』(名著。これは名著)を読んだときには、維新史についての自分の理解のあまりの浅さに驚くとともに、歴史認識をアップデートするおもしろさを感じた。本書も多分、そういう経験させてくれるんじゃないかという期待がある。


ヤンキーくんと白杖さん(うおやま作、KADOKAWA)

4月×日

いつだったかのTBSラジオ「アフター6ジャンクション」でトミヤマユキコさんがオススメしていた漫画。気になってはいたが、手を出さずにいた。

昨日、ラジオクラウドで聴きそびれている回があるなーと思って再生したら、2月27日の、作者のうおやまさんがゲスト出演した回だった。そこで宇多丸さんんと宇内さんが激推しししているのを聴いて、すぐにKindleで買ってしまった。『聲の形』のように、いわゆる「障害」というものを作品の重要なテーマに据えつつも、決して「障害者のかわいそうな話」にならず、この社会における(誰もが直面しうる)生きづらさと、それでも感じられる喜び、みたいなものを描いていることを期待。

1巻を読み始めたが、これは期待通りの予感。

STEINS;GATE

YouTubeで「マコなり社長」の動画「【外出禁止】社長が金を払ってでも見てほしい厨ニ病アニメ TOP10」で、マコなりさんが1位にあげていたのがアニメ「STEINS;GATE」。2シリーズあってどちらもdアニメで一気見したので、そのおもしろさはよくわかるし、もう一回見たくなった。

外出自粛要請と言えども、自分は普段から家に籠ることが多い。生活必需品のための買い物は禁じられていないし、特に不自由な生活を送っているわけでもない。けれども、なにかこう、選択肢を奪われていること自体がストレスになっている気もするし、気分は鬱々としてくる。そんなときに、STEINS;GATEみたいな最高のエンタメを見返すのはいいかもしれない。


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