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チェーンソーマン

チェーンソーマン、私は単行本で買っていたのだけれど、今週最終回が発売されたのでうっかり最終回だけ読んでしまいました。はあ。第二部も制作されるということだけれど、どうなるんでしょうね。デス・ノートはLとの戦い編で終わって欲しかった私なので、期待半分心配半分というところです。

すでに多くの人がチェーンソーマンの魅力について考察したり語ったりしているだろうから、私が今更考察してもと思うのだけれど、あの作品はとても示唆的だったので、自分の整理のために、なぜあの作品が魅力的なのか書いておこうと思う。切り口がMECEじゃない可能性が高いけれど、またなるべくネタバレをしないようにするけれど、全く読んだことがない人や、9巻まで読んだ私よりも読んだ巻数が少ない人にはネタバレになる可能性があるので、適宜回り右してください。

1.キャラクター

 なんといってもキャラクターの魅力は脇に置けないだろうと思う。主役のデンジくん、アキくん、マキマ、パワーちゃん、岸辺、そのた多数の鬼殺た……いや、デビルハンターや魔人、悪魔の造形や性格、能力は百花繚乱だ。デンジの胸にチェーンソーのバネ? があるのがまずいい。しかしこういうのはデンジ単体、マキマ単体がいいという訳ではなくて、その中に(一応)良心というべきアキくんとかがいるから良いのであって、全部バランス、有機的なつながりがあるかないかという問題だと思う。

2.伏線(と結果の距離が遠い)

 冒頭の、デンジくんとマキマの約束からして伏線なのだけれど、「あれはどうなるんだろう」というのが(実は)沢山ちりばめられている。読者は展開の早さに困惑させられながらも、先を読みたくなるのはこの仕組みが機能しているからだと思う。

3.余計な描写はしない

 2で伏線を張っていると書いたものの、チェーンソーマンは余計な説明が極めて少ない。同時期にヒットしている「鬼滅の刃」とは対照的だ。「鬼滅」では主人公をはじめとするキャラクターの独白が非常に多い。それは状況や心情の説明になるので、キャラクターがどう考えているかが分かるという意味では良いのだけれど、共感したい読者には向いても驚異を得たい読者には向かないのだと思う。チェーンソーマンでは、デンジやアキくんがわずかに心情を吐露するシーンがあるけれど、そのポイントは絞られていたり、他者がデンジの心情を推し量って代弁するような形でなされる。説明が少なかったり、独白が少ない作品の行間は読者が埋める。チェーンソーマンを読んでいて一番の利益は、「これはどうなんだろう」と想像を巡らせることができることだと思う。

 そして余談だけれど、これはチェーンソーマンが漫画だからすごく機能したと思う。小説だったら戦闘シーンから何から言葉で説明しなければならないので、それも当然やりようはあると思うけれど、漫画のようにはいかないだろうし、漫画のレベルを小説で実現しようとするのはかなり難しいんじゃないかと思う。

4.ギャップ

 バイオレンス漫画(といいつつ、バイオレンス漫画という定義は私の中で曖昧なのだけれど)のバトルシーンがメインでありつつも、突然差し込まれる、デンジの女性に対する述懐がエモい。その落差は大きな魅力だと思う。人間らしい環境で育てられなかったというデンジの出自はとても計算されていて、魔人や悪魔含む他者へのこういう感情を、デンジは今初めて獲得したのだというのを読者が知る、デンジと同時に共有するという形になっているのがすごくにくい。

 これは逆でも良いと思う。ずっとエモで引っ張っていってストンと残酷な滴を垂らすと、読者は心が揺らされる。読者を惹きつけろ、常にドキドキさせろ、寿命を縮めろ、言葉で、絵で殺せって感じである。


さいごに パワーちゃんはマキマになれるか

 私はパワーちゃんびいきなので、デンジがマキマの方ばかり見てパワーちゃんをペットくらいの扱いにとどめていることが悲しい。

 パワーちゃんはどう振る舞ったらデンジにとってのマキマになれるんだろうか。結論から言うと、多分それは非常に難しいんじゃないだろうか。

 デンジはパワーちゃんのことを、良くも悪くも知りすぎてしまっているし、近い。だから(こんな風な世界観じゃなかったとして)、これからパワーちゃんがたとえデンジから距離をとっても、あるいは突然普段とは全く異なる振る舞いをしても、「まあパワーだし」とか「血でも足りないのか?」にしかならないと思う。ああ悲しい。

 とはいえ、一度だけマキマの誘いを断ってパワーちゃんの元に残ったのは、そこに愛(どんな性格の愛かはさておき)があったからなんじゃないかなあと思う。でもそのことにデンジは気付いていないのだよねえ。ああ悲しい。

 出会いで全て決まってしまったんだろうなと思う。本当に身も蓋もないのだけど。最初の入り口が全てで、基本的にそれ以降のことで最初をひっくり返すことは難しい。これはどんな人間関係にも大体言えることですよね。ああ悲しい。


※note30日チャレンジ8日目 累計 14,778文字 (オフライン含め16,608文字)

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