【試合評】岸孝之「機能しない」自慢の快速球~5/12●楽天2-5ロッテ
この敗戦は勢力図を塗り替えるかもしれない
ペナントレースも約4分の1を消化し、今季の勢力図もあらかた見えてきた。
優勝争いは楽天vsソフトバンクによる一騎打ちの様相だ。
二強を追いかけるのは3位・西武。正捕手・森の負傷離脱で皮肉にも防御率が改善され、主砲・山川がすこぶる元気なだけに、不気味に映る。
残り3球団は三弱だ。
昨季の覇者・オリックスはコロナ禍で戦力揃わず、遂に吉田正も罹患離脱してしまった。開幕前にかなりの数の評論家が優勝候補に推したロッテも、荻野や外国人の不振が響いて打線に元気がない。
BIGBOSS率いる日本ハムは、もはや笑いのネタ状態なのだ。
しかし本戦は、そんな勢力図を塗り替える《起点》になりかねない恐れが出てきた。
「久々に外国人3人が打ったのでビックリしました」
首位・楽天に今季初の連敗をくらわせ、敵地でカード勝ち越しを決めた井口監督は、試合後、報道陣に上機嫌だった。
それもそのはず。外国人3人で4安打2打点、2二塁打、1本塁打。
勝敗を分けたマーティンの隠れた好守備
なかでも帰ってきた助っ人の活躍が際立った。
マーティンは極度の打撃不振で前日まで2軍調整。しかし菅野の負傷離脱で見切り発車的に1軍に再招集されていた。そのなか、好守で躍動したわけだ。
バットでは2点目を先導するツーベース。守備では楽天に1点差に迫られた6回1死1塁、マルモレホスの右翼線二塁打をスライディングキャッチ。1塁走者・島内を3塁停止させ、同点のホーム突入を防いだ。このプレーは楽天側からすれば、地味だが決定的に痛かった。
レアードは約1ヵ月ぶりの3号ソロ。打率.191だったエチェバリアも2本のツーベース。
浅村が1号が出てからすっかり自分を取り戻したように、もし3者が本戦をきっかけに打撃の調子を取り戻したとしたら・・・
楽天vsロッテは来週の週明け、今度は舞台をマリンに移しての3連戦が予定されている。それだけに、楽天サイドからすれば、同じ負けでも外国人3人に活躍を許しての敗戦はできれば避けたかった。
機能しない一丁目一番地
先発・岸が7回途中8安打4失点で今季初黒星を喫した。
ロッテとは今季はやくも3度目の対決。
本戦終了時の対戦打席数は、髙部10、中村奨9、佐藤都9、レアード9、安田3、マーティン9、岡9、エチェバリア6、松川5となっており、相手も岸の球筋に慣れ、対策を講じてきた部分もあるのだろう。
そこへきて、5月に入り岸の状態も下降線。この2つの要素が重なってしまった。
球種別で確認すると、佐々木明奈さんのベンチリポートでもあったように、昨年から被打率が約1割改善されたチェンジアップ(.283→.192)は、本戦も上々。数多くのカウントを稼ぎ、結果球でも6打数1安打の.167と素晴らしい戦績だった。
いっぽう、心配になってしまうのは、軸球で生命線、この人の一丁目一番地に当たるストレートだ。
当該11打数5安打の.455と打たれ、長打3本を許した。
象徴すべきシーンが4回にあった。
帰ってきたマーティンとの2打席目の勝負だ。1打席目はフルカウントから内を狙った真っ直ぐがはずれて四球を与えていた。
2打席目も2-2と追い込んでいた。変化球で0-2と追い込み、外に2球散らした後、勝負球は再びインコース。
岸は142キロの真っ直ぐをインハイ厳しいコースに投げ込んだものの、これをスムーズにさばかれてしまう。伸びていった打球は右翼ポール際のフェンスダイレクト。その後、ロッテの3点目につながるツーベースを弾き返されてしまった。
捕手・炭谷のミットは内角低め気味だった。そのためもっと低いところに投げるはずがうわずってしまったのかもしれない。それでも、インハイは間違いではなかった。
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