【試合評】 プロ初勝利献上の屈辱も、ニューフェイスの光る活躍劇~2016年6月1日●楽天イーグルス3-5阪神

茂木栄五郎、打率3割到達。パリーグ打率ランキング6位浮上

試合は3-5で敗れた。プロ初登板・初先発した相手の新人・青柳晃洋にプロ初勝利を献上することになった屈辱の敗戦だが、見どころもあった。

その1つが茂木栄五郎のバッティングだ。

打席に入るたび、女性ファンから飛ぶ「もぎもぎ~!」の黄色い声援。今夜も3戦連続3番でスタメン起用されると、3打席目以降、快音連発した。

5回は1死無走者から中安。高校3年夏の大会で対戦し、青柳から決勝本塁打を放っていた茂木は、この場面ではその134kmを中前へ痛烈に弾き返した。7回は4点を追う1死3,1塁のチャンス。左腕・高橋聡との対戦である。ここまで左投手には打率.243と分が悪かったが、高めに入った球をしっかり打ち返した。打球は左翼後方を襲う快飛球。落下点に入りながらも伸びてきたラインドライヴにグラブを弾かれたというレフト狩野の守備ミスを誘う二塁打は、タイムリーになった。そして3打席目は2点を追った9回2死1塁からセンター返し。藤川球児の144km真っ直ぐを芯で補足した一打は、4番・ウィーラーに最後の望みを託す、つなぎのヒットになっている。

これで、数々の打者が成績を落としてきた3番スタメンに座ってから、なんのその!と11打数8安打の猛攻だ。2夜連続の猛打賞で打率を初の3割(.304)に上げると、パリーグバットマンレースは前日9位から6位に浮上している。

気は早いが、もし茂木が打率3割を維持したまま新人王を獲得するようなことになると、これは1986年の清原和博(打率.304)以来、30年ぶりとなる「打率3割の野手新人王」がパリーグに誕生することになる!  そのことを期待し、今後も栄五郎のバットに心酔したいと思う。

両軍のスタメン

阪神=1番・鳥谷(遊)、2番・大和(二)、3番・福留(指)、4番・ゴメス(一)、5番・狩野(左)、6番・原口(捕)、7番・高山(中)、8番・ヘイグ(三)、9番・板山(右)、先発・青柳(右投)

楽天=1番・岡島(右)、2番・吉持(二)、3番・茂木(遊)、4番・ウィーラー(指)、5番・銀次(一)、6番・中川(三)、7番・島内(左)、8番・小関(捕)、9番・オコエ(中)、先発・リズ(右投)

オコエ瑠偉、魅惑の二塁打

2つ目は、オコエ瑠偉だ。

「ずっと身体能力が高いとか、ハーフだからとか言われてきた。その反抗心で、技術を大切にしてきたんです」。私がオコエに好感を抱くのは、この部分である。オコエの場合、技術に裏打ちされた身体能力なのだ。そのことを証明するシーンが本戦2打席目にやってきた。

4点を追う4回2死2塁のチャンスの場面だ。内角を2球攻められ、いずれもファウルになり0-2と追い込まれた後の2-2勝負。アウトコースの見逃せばギリギリボールだろうかというクサい変化球を、いつもは左足を上げてタイミングを取って打っていくオコエが、この場面ではノーステップ打法で打ちにいった。泥臭く軽打した打球はセカンドの頭上を完全に越え、中前へ着弾するプロ初のタイムリーヒット!

さらに驚かされたのは、その韋駄天である。向かってセンターの右斜め前、右中間前方に着弾した打球を4バウンドでセンター・高山がまわりこんだその動きを見て、スピードを落とさずに一気に2塁へ滑り込む好走塁! 返球はやってこず、悠々セーフ。二塁到達タイムは当方計測で7.55だった。これはプロの世界では8.29を切れば俊足と評価される中、そのタイムを大きく下回る電光石火のスピードタイムである。

このタイムリーヒットの談話が、また素晴らしいのだ。2軍でまわしたPDCAをしっかり1軍の舞台で昇華させているのだ。

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