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【パリーグCSファイナル】こんなことあるのか! 勝敗の綾を感じさせた唯一の得点シーン~11/10ロッテ0-1オリックス

※本稿は全文note公開中。最後までお楽しみいただけます。

眠らせておくことできるか?両軍手負いの強打者

勝ったオリックス先発・山本由伸による、5回以降は1人の走者も出さない快刀乱麻の完封劇。

負けたロッテもアンビリバボーな好プレーがあった。
遊撃エチェバリアが三遊間深くのゴロを驚異的な身体能力で好捕してグラウンドに倒れ込みながらの1塁ツーバンのストライク送球をみせた6回1死2塁の超絶技巧シーン。

大舞台にふさわしいプレーが飛び出した2021年のパリーグCSファイナル初戦。

贔屓の球団・楽天はCS1stステージで敗退したため、両軍のスミイチの攻防戦をピュアな気持ちで十分に楽しむことができた。(応援している球団が出てると、どうしてもハラハラドキドキ、期待と失望を繰り返しちゃうでしょう?)

そのなか、僕が注目したのは、ロッテのマーティン、オリックスの吉田正尚だ。

マーティンは右足中間楔状骨骨折。吉田正は右手尺骨骨折。両人ともに怪我が完治してない状況での強行プレーになっている。
つまり、この2人をしっかり眠らせておけるか否かが、このシリーズを分けるカギになると思う。

とくにマーティンは右足が痛むため、アウトコースへ踏み込んでいくことができない。

それなのにCS1stステージ、楽天バッテリーは今を見ずにシーズンどおりの配球を繰り返し、内角で手痛い一発を浴びてしまった。
黒木智宏さん、上原浩治さんが揃って「内は対応できるけど、外は難しい」と見立てたのに、今のマーティンを見ずして敗れた。同じことはこの日の解説・野田浩司さんも指摘していた。

オリックスには同じ轍を踏んで欲しくない。
そう願っていたが、山本&若月のコンビは一ゴ、空三振、空三振、一ゴ、4タコに封じた。

全16球勝負のうち内角狙い投球は3球だけ。
そのうち2球は胸元の見せ球・布石球、残り1球は1-2と追い込んでからコースいっぱい投げ切りの150キロの空三振結果球である。

インコースに対して投げミスなく、基本はアウトコースに球を集めた。
楽天バッテリーとは真逆のプランで、広瀬アリス似の強打者を沈黙させることに成功した。

いっぽう、吉田正は、中飛、中安、四球、遊ゴ。4打席2出塁だ。

凡打の2打席も、センター正面を突いた捉えた飛球と、遊撃エチェバリアが2塁をまわりこんで好処理し遊ゴ。どちらも悪くはないアットバットで、ロッテバッテリーに改めて恐怖心を植え付けたはずだ。

この人、長打がなくても、優れたバットコントロール能力とコンタクト能力による軽打で十分に応戦可能である。この日も13球と対峙し、空振りはゼロだった。

◎試合展開

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◎両軍のスタメン
ロッテ=1番・荻野(左)、2番・マーティン(指)、3番・中村奨(二)、4番・レアード(一)、5番・エチェバリア(遊)、6番・山口(右)、7番・岡(中)、8番・藤岡(三)、9番・加藤(捕)、先発・石川(右投)

オリックス=1番・福田(中)、2番・宗(三)、3番・吉田正(指)、4番・杉本(右)、5番・T-岡田(一)、6番・ラベロ(左)、7番・安達(二)、8番・紅林(遊)、9番・若月(捕)、先発・山本(右投)

 運命を分けた初回2死2,1塁

もう1つ注目した場面がある。

両軍唯一の得点シーンになった1回裏2死2,1塁、T-岡田の右安で2塁走者・宗佑磨が本塁生還した場面だ。

今シーズン、僕は走者2塁(3,2塁、2,1塁、満塁を含む)、外野へのシングルヒット1本で2塁走者がどのくらいホームに帰ってくるか? パリーグ6球団の生還率を毎日コツコツと集計してきた。その結果、判明したのはリーグ平均値61%であること。

さらに分かったことは、今季のロッテ外野陣はパリーグで最も2塁ランナーの生還を許さない優れた守備力を保持していること。ロッテと対戦した敵2塁走者はヒット1本で52%しか生還できなかった。繰り返すが、リーグ平均値61%なのに、である。

いっぽう、オリックスの2塁走者はパリーグで最も生還できない走塁下手、3塁ストップになることが最も多かった。
その生還率は49%だった。リーグ平均61%を大きく割り込んでいたのだ。

ふつうなら、あの場面はT-岡田のヒットだけでは得点が入らなかったシーンになる。

しかし、ここに運命の綾、勝負の綾があった!

優れた走者進塁抑止能力を持つロッテ外野陣だけど、その主たる源泉・筆頭格は右翼を守るマーティンなのだ。
マーティンがロッテに入団したのは19年7月。であるから、わずか2年ちょっとの短期間に強肩をフルに活かして23個という驚きの補殺数を積み重ねるという偉業をやってのけてきた。

ところが、右足骨折から戦列復帰した10/5以降はずっとDHに入り、守備に就いていない。この試合でライトを守った高卒3年目の山口航輝も高校時代は投手だったため素晴らしい肩を持つが、マーティンの一線を越えた強肩にはかなわないのだ。

もう1つ、走塁下手のオリックスにあって唯一と言ってよいほどベースランニングに長けている、このときの2塁走者・宗佑磨だった。

今季、走者2塁で外野単打1本で2塁から生還した確率は、パリーグ1位の83%を誇った。

つまり、同じ2死2,1塁でも2塁走者が福田周平(67%)、吉田正尚(31%)だったら、3塁ストップもしくは本塁憤死していた可能性はきわめて高い。

あの唯一の得点シーンで、めぐり合わせよく2塁に宗がいたことその事実こそが、勝敗を分ける綾だとひしひし感じてしまった。

そう、ロッテの石川が真に出塁を警戒しなければならなかったのは、1番を打つ福田ではなく2番・宗だったのだ。【終】

◎2021年パリーグ 走者2塁(3,2塁、2,1塁、満塁)、外野単打での2塁走者本塁生還率ベスト3
※機会10以上、当方調べ
1位:宗佑磨(オリックス) 83%
2位:中村奨吾(ロッテ) 81%
3位:小深田大翔(楽天) 80%
リーグ平均 61%
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CS敗退したので今後は退団選手の惜別記事、今季総括、プロ野球全般の話などを12/31まで綴ります。また、同内容を『まぐまぐメルマガ』でも配信中、こちらは登録初月無料です。新たな読者さん、お待ちしております!

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