【試合評】ジョニー黒木、上原浩治さんが指摘した楽天CS敗退の原因~11/7△楽天4-4ロッテ
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前日の懸念が的中・・・
「おいおい!それを指摘する指導者やスコアラーは1人もいなかったのか...」
試合終盤、楽天サイドは前日の懸念が見事に的中する悪夢の一撃に見舞われた。
CS1stステージ初戦を4-5xのサヨナラ負けで落とした3位・楽天にとって、一夜明けた日曜日は、もはや引き分けすら許されないシチュエーションに追い込まれていた。
それでも2-3と1点を追った7回表、9番・炭谷による左中間への起死回生ソロアーチで同点に追いつく。ゲームを振り出しに戻した後も、ロッテ先発・小島をなおも攻め立てて1死3,1塁を作った。
打席は4番・島内。今シーズン17打数7安打と二桁左腕を打ちこんだ好相性を発揮し、高め真っ直ぐに詰まりながらも、左前へ落とす『一魂』の勝ち越しタイムリー。イーグルスが4-3と再びリードを握る展開になった。
しかし・・・ 前日からの不安が当たったのは直後の7回裏のことだった。
この回から三番手・酒居が登板。レギュラーシーズンでは古巣ロッテを防御率1.17に抑え、前日も7回1イニングを三者凡退に退けた28番右腕が、2死までこぎつけながらマーティンに同点となる痛恨の右越えソロを浴びてしまったのだ。
結果球はフルカウントから内角勝負の145キロの真っ直ぐ。
その速球が甘く入ったところをガツンとヤラれた。
問答無用の超弾道にライトを守る岡島の足はほぼ釘付け。ドローすら許されない状況の楽天にとって文字どおり震災10年のシーズン終幕を告げる一発になってしまった。
髪を青に染めたキューバ人がグラウンドを一周するのを見届けながら、僕は前日の黒木知宏さんの解説を思い出していた。
初戦の3回、マーティンの第2打席のときの黒木さんの見立ては、こうだった。
右足の痛みがあるということは、踏み込んで踏ん張りきれないというところなんですよね。
だからインサイドにボールが来てくれるぶんには、マーティンはちょっと楽だと思うんですよ。身体の回転だけでいいんで、つま先を上げてかかとを動かして打てばいいんで。
アウトコースは踏ん張り効かせないと(バットが)届かないじゃないですか。
だから実際、身体の近いところにボールを投げ続けてくれたほうが、身体をクルッと回転させて打つことができるんで、足にそんなに負担が来ないと思うんですよね。
踏み込んでそれを踏ん張ることが今一番しんどいのでアウトコース、遠目のボールのほうが嫌なんですよね。
まさに黒木さんが指摘したとおりの打ち方だった。
同様の趣旨は、この日の夜のNHKスポーツニュースに出演した上原浩治さんも指摘していたから、観る人が観たら気づいたレベルのことだったと思う。
ところが、楽天バッテリーは今のマーティンを見ず、レギュラーシーズンと同じ攻めを繰り返した。
ここでマーティンのコース別打率を確認してみると、
内角 .178
真中 .250
外角 .243
Total .233
である。弱点がインコースにあって、この傾向は昨年も同様だった。
シーズン中、楽天のバッテリーはこの弱点を徹底的に突いて、全434球勝負のうち内角狙い投球がじつに43.3%も占めていたのだ。
同様にこの2戦も全36球勝負のうち内角狙いは41.7%に当たる15球を記録していた。
しかし、この舞台は全選手がレギュラーシーズンとは違った精神状態に置かれたプレーオフである。
さらに言えば、マーティンは骨折した右足が癒えておらず痛みを抱えたままの強行出場。こういうときは、自分のできる範囲内(=身体をクルッと回転させて打てる内角~真中)は精一杯気張って対応しようと「燃える打者心理」で打席に入ってるはずだ。こういうとき、苦手コースは苦手ではなくなることが多い。
実際、本戦の第1打席でもシーズン中は苦手にしていたインハイを引っ張り、右翼線へツーベースを決めていた。だから、この場面では現在のマーティンの状況をしっかり読み解き、短期決戦仕様の配球をする必要があった。
それなのにイーグルスはふだんと同様の戦いを試み、この2戦でマーティンに8打席6打数2安打1打点、1二塁打、1本塁打、3三振、2四球を許してしまった。
つけ加えると、あの場面は絶対に一発だけは回避すべきところである。
だから1塁に歩かせても良かったのだ。
◎試合展開
◎両軍のスタメン
楽天=1番・山崎剛(遊)、2番・岡島(右)、3番・浅村(二)、4番・島内(左)、5番・銀次(指)、6番・茂木(三)、7番・鈴木大(一)、8番・辰己(中)、9番・炭谷(捕)、先発・岸(右投)
ロッテ=1番・荻野(左)、2番・マーティン(指)、3番・中村奨(二)、4番・レアード(一)、5番・エチェバリア(遊)、6番・山口(右)、7番・岡(中)、8番・藤岡(三)、9番・加藤(捕)、先発・小島(左投)
好投手ほど本能的に四球を出すのを嫌ってしまう
生涯通算防御率3.06のところマリンでは2.13、同勝率.600のところマリンでは.750。プロ入り後、一貫してマリンを我が庭にしてきた岸本人にとって、5回2失点は最低限の仕事になった。
5回中4回で得点圏に走者を背負う苦しい状況ながらも、良く粘って2点にとどめ、チームが勝利できる余地を残したと一定の評価はできる。
ただ、もったいなかったのは4回の同点劇だ。
前日の一発で必要以上に警戒したのか、1死後にエチェバリアを歩かせて1死1塁。バッターボックスは1打席目に中安を放った6番・山口という場面だった。
初球は内角真っ直ぐで見逃しストライク、2球目は外に誘うスライダーで空振り。わずか2球で0-2と追い込んだ投手絶対有利のカウントを作った。
しかし、ここから見きわめられ、粘られカウントは3-2勝負へ。
結果球はチェンジアップ。外角低め狙いがほどけて真中に入る失投に。これをひっぱられ、レフトの左をワンバウンドでフェンスに到達するツーベースに。
島内─山崎剛─炭谷とつないだ楽天の中継バックホームを制し、自動スタートを切っていた一走エチェバリアが長駆ホームインするシーンになった。
下記記事を読むと、高卒3年目の気鋭の右打者も必死のバッチだったことが確認できる。
◎岸孝之のチェンジアップ
上記表のとおり、岸の必殺球は前半戦は本来の姿ではなかった。
しかし五輪明けの後半戦は球速上昇、切れを取り戻して空振り率も10%近くアップへ。OPSベースでも1割以上改善させるなど、後半戦防御率3.19の好投の源泉になっていた。
それだけに山口の一撃は悔いが残ってしまう。
ここも、前述した酒居vsマーティンの場面と同じく、優れた投手ほど本能的に四球を出すのを嫌うの典型例になったと言えそうだ。
フォアボールを出したくないから、チェンジアップをストライクゾーンの枠内へ。空振りを奪うための投球ではなく、打ち損じを狙う投球になったため、コンタクトされてしまった。
もっと言えば、今季の岸が9勝10敗と負け越しに終わり、3年ぶりの二桁に届かなかったのは、追い込んでからの投球に問題があった。
この場面のようにわずか2球で追い込んだときの0-2経由の成績は、被OPS.701、被打率.280、ふつうに打たれているのだ。
最優秀防御率を獲得した2018年の当該成績は.411、.155。
そのことを考えると、今年は投手有利状況を活かせなかった。健闘したとは思うものの、追い込んでから決め球に欠いて苦しむ場面も多かったのが今季の岸と言えそうだ。【終】
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