【試合評】田中将大を甦らせた中14日の夏休み~7/16○楽天7-3オリックス
夏休みの効用
負ければ連敗は6に伸び、最大18あった貯金は消滅の瀬戸際。5.5差の間に5球団がひしめき合う混戦から脱落しかねない危機的状況があった。そんな窮地を救ったのは投打の軸。
この試合をもし落としていたら、2戦目の敵先発は楽天が苦手にする田嶋、3戦目は早川抹消で藤平のお試し先発が予定されており、8連敗に伸びる危険性もあったわけだ。だから、この1勝の意味は大きい。
先発・田中将は5/10以来の白星。7回3安打無失点で今季5勝目をあげた。
チームは5連敗で自身も約2ヵ月白星から遠ざかる状況。しかも投げ合う相手は当代随一の山本由伸だ。そんな背景があったので、序盤は自身の投球よりも、とにかく敵を乗らせないよう細心の注意を払った難しい投球のように感じられた。
その証拠に、この日の第一投はスライダー。
ふつうは真っ直ぐだ。先発投手たる生き物、投球の軸となるストレートを第一投に投じて、その日の調子を確認したくなるもの。
実際、背番号18は昨年23登板中19試合で真っ直ぐを第一投に選択している。今年もここまで全試合ファストボールだった。それなのに、今回はスライダー。1番打者が先日中日から移籍してきたばかりの石岡、データのない打者という事情も加わり、慎重に入ったものと思われる。
NPB復帰後では最多となった四死球4個も、そのことを裏付けている。
1回2死2塁で4番・吉田正への四球は明らかに勝負を避けたように見えたし、2回先頭・マッカーシーへの死球は厳しく内角を攻めた結果ゆえだった。
また、立ち上がりに3番・中川にツーベースを弾き返された影響も大きかった。
内角狙い内角到達の148キロ真っ直ぐ投げ切りという素晴らしい球だった。それを上手くさばかれた影響は大きく、結局この試合、右打者47球勝負で内角狙いはわずか7球にとどまり、右打者には両サイドを広く使う組み立てがままならなかった。
いっぽう、山本は序盤3回ほぼ完璧なピッチング。こういう展開になると、今季の流れを踏まえれば、先に失点するのはマー君のほうと思われたが、最後までホームを踏ませなかった。
好投の要因は打線の援護に加えて、中14日も大きいだろう。
「少し不本意ながらいただいてしまっていた」と語る『夏休み』が効果を発揮した。この間、フィジカル面のリカバリーよりも、メンタル的な部分でもリフレッシュが大きかったと想像する。
NPB自己最悪5連敗で田中将大投手のメンタル心配。昨年あれだけ無援護だったのに、過去と他人は変えられない思考のもと、原因を常に自らの中に探した。年末のNHKプロフェッショナル仕事の流儀は観てて痛々しかった。しかし今年は広島戦で「いい当たり、ありました?」昨日は「めげそうなときあります」
— eagleしばかわ🦅 (@eagleshibakawa) June 18, 2022
Twitterにツイートしたように、夏休み前、マー君のメンタルは相当ヤバかったと思われる。もしあの精神状態で本戦を迎えていたら、先に持ちこたえられず崩れたのはマー君のほうだったかもしれない。
0-0で迎えた4回2死2,1塁のピンチ、8番・若月をインスラで空三振に仕留めることができたのも、中14日でメンタルが復活したことがそうさせたと思われる。
右投手が右打者の内角にスライダーを投げ切るのは相当レベルの高い作業になる。
真っ直ぐと比べて変化球は制球するのが難しい。ましてやインスラは抜けたら死球、甘く入れば長打リスクが多分にある。だから、なかなか使える手札ではない。実際、今季のマー君は5/3○E2-1Fの4回無死1塁、松本剛を右飛に退けた結果球の1球だけしか使用していなかった。
それほど選択肢としては少ない手札を、ここで使用して意図どおりに投げきることができた要因には、中14日の効用が大きかったと思うのだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1658011946559-ep5bC1xqK3.png)
オリックス=1番・石岡(左)、2番・宗(三)、3番・中川(中)、4番・吉田正(指)、5番・杉本(右)、6番・マッカーシー(一)、7番・紅林(遊)、8番・若月(捕)、9番・安達(二)、先発・山本(右投)
楽天=1番・西川(左)、2番・銀次(指)、3番・浅村(二)、4番・島内(右)、5番・茂木(三)、6番・鈴木大(一)、7番・辰己(中)、8番・炭谷(捕)、9番・小深田(遊)、先発・田中将(右投)
山本由伸の必殺球を看破した小深田
5回の先制4点劇。まずは小深田の四球出塁が大きくモノを言った。
多くの四球を選ぶタイプではないが、プロ1年目から高い精度のPlate Disciplineを維持する168cmの小兵打者が、ここでよくぞ四球をもぎ取った。
なかでも1-1からの第3球だ。
山本由伸が投じてきたのは低め誘い球のフォーク。山本のフォークと言えば、当代ではロッテの佐々木朗希に肩を並べるほどの威力を持つ。
この日はボール先行カウントからの使用も目立ち、2回2死1塁、辰己には3-1からフォークで空振り、3-2になってさらにフォークで二ゴに退けるシーンも目撃されていた。
5回小深田の3球目までに投じられたフォークは18球。その内訳は以下のとおり。
空振り 6球 (空三振1個含む)
見逃しストライク 1球
カウント稼ぎのファウル 4球
2ストライク以降ファウル 1球
ボールカウント 3球
凡打 2球 (二ゴ、二飛)
失策 1球 (一ゴ失)
このように、その大半が山本有利の結果になっていた。
ボールになった3球は、2球がベース盤は大きく外れたもの。残り1球が高めに浮いてしまったもの。
しかし・・・(続く)
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