20190222表紙

【戦評】「鷲の注目株」西口直人の誤算。67球で空振りゼロ ─ 2月20日●楽天3-8日本ハム

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投打かみ合わず、3回まで0-6に

昨日台湾遠征メンバーを発表した楽天は、本日は今シーズン4試合目の対外戦。
真冬とは思えない日差しで関東では気温20度を超えた今日、イーグルスは本拠地・金武で日本ハムと実戦を戦っている。

昨年、このカードは本当に色々あったと思う。

「東北開幕の惜敗」に始まり、「岸孝之のスミイチ完封勝利」。
「宋家豪の来日初勝利」や「山下斐紹の劇的サヨナラ弾」などもファイターズ戦だ。

9月には北海道胆振東部地震が発生。
交通機能の麻痺で日本ハムが仙台へ移動できず、試合中止になる事態もあった。

色々あったが、結果は10勝13敗2分の負け越し。

新陳代謝激しく若手の台頭著しいファイターズは一筋縄ではいかない相手だが、今年はぜひとも勝ち越したい。
イーグルスが躍進したとき、このカードはお得意様になっていることとが多いのだ。
たとえば、2013年は16勝8敗、2017年も16勝9敗と大きく勝ち越して、躍進に弾みをつけていた。

さて、本日は投手陣が崩れて3-8と、大敗している。

弓削隼人、西口直人、鈴木翔天、福井優也、森原康平とつないだ「新戦力&若手のリレー」は、相手打線に西川遥輝3ランを含む13安打を計上。
三番手・鈴木が登板した6回以降はゼロに抑えた点は評価できるが、先発・弓削は2回4失点、二番手・西口も3回4失点と計算が狂い、今シーズン最多の8失点を喫した。

一方、打線は「過去の人」斎藤佑樹の前に3回無安打無失点。
これが響くかたちになり、結局、5安打3得点のみ。

それでも、二番手・中村勝を攻めて、5番・ウィーラーが豪打一閃。
乾いた快音を轟かせながら左翼席へ消えたフライボールは3ランになり、はやくもチームの本塁打は6本と、例年以上のハイペースで量産している。

※・・・斎藤は2/11韓国NC戦でも2回零封、これで合計5回無失点。

両軍のスタメン

日本ハム=1番・西川(中)、2番・大田(右)、3番・王柏融(左)、4番・近藤(三)、5番・横尾(指)、6番・清宮(一)、7番・杉谷(二)、8番・黒羽根(捕)、9番・谷内(遊)、先発・斎藤(右投)

楽天=1番・田中(中)、2番・島内(右)、3番・浅村(二)、4番・ブラッシュ(左)、5番・ウィーラー(三)、6番・銀次(一)、7番・藤田(遊)、8番・堀内(捕)、9番・渡辺直(指)、先発・弓削(左投)

浅村の初打席・初球二塁打! ウィーラー3ラン!

ヒットは以下の5本だった。

●楽天移籍後で初の実戦になった浅村栄斗が右翼二。
●ウィーラーによる元気印の左本3ラン。
●藤田一也による1,2塁間ゴロ突破の右安。
●足立祐一が今季5打席目で初ヒットを飾った左翼二。
●内田靖人によるショートオーバーの左安。

5安打は2/16ロッテ戦(●E1-4M)に続く今季最低だが、中身があった。

たとえば、浅村栄斗の初実戦・初球ツーベースだ。
6点を追う4回2死走者なし、中村の得意球カーブを逆らわず右翼線へ弾き返した。

昨年は鷲投手陣いったい何本打たれたのか?という、浅村の代名詞といえる『右方向への長打』が炸裂した。
それも、例年高い初球スウィング率が示すように、この打席も攻撃的なバッティングで初球を芯でとらえてみせた。

この一撃で中村にダメージを与えた楽天は、2死走者なしからの3得点!

2死2塁で後続のブラッシュの打席時に暴投発生し、浅村は3塁へ。
すると、ブラッシュもMLB通算22.5%のボール球スウィング率が示す『確かな選球眼』を発揮し、動揺隠せない中村を追いこんでいく。
再三の誘い球をぐっと我慢して四球出塁し、ウィーラーにバトンをまわした。

今季も元気な来日5年目はボール先行1-0から甘く入った投球を応戦した。
ブラッシュが変化球をことごとく見きわめてボールにしたことで、当時、中村はストライクに相当飢えていたと感じる。
ウィーラーに投じた1-0からの投球は、文字どおりストライクを取りたい一心の速球だった。

そういえば、ウィーラーは昨年副将に任じられながらも、久米島に姿なし。
金武キャンプ初日の2月中旬にチームに合流したものの、調整が遅れたのか、開幕前の対外戦59打席で一発ゼロに終わった。
打球が上がらずに開幕を迎え、本領発揮できなかったことも、3月4月の大失速の原因の1つを作っていた。

それだけに、ウィーラーの3ランは明るい材料と言えそうだ。

成長を感じさせる内田靖人のクリーンヒット

さてさて、浅村、ウィーラーと同じく印象に残ったのは、内田靖人の左安だと思う!
9回1死走者なし、井口和朋とのフルカウント勝負は、昨年の経験を感じさせる遊撃頭上を射抜く快打になった。

初球は変化球で見逃しストライク、0-1。
2球目は内角に、3球目は一転して外角へ。
両サイドに速球を投げ分けられ、1-2と追い込まれてしまう。

しかしこの後、2球連続で低めの変化球を我慢して見切ったところが真骨頂だった。
カウントを作り直し、はたして3-2からの外角速球を狙撃したのだ。

相手バッテリーにしてみれば「布石球」だったはずだ。
変化球を見切られているので、1球真っすぐを挟みたい。
真っすぐで1球押してファウルを打たせて、最後は変化球に戻ろう。

そんな相手の青写真を逆手に取った狙い撃ちは『昨年の経験を感じさせてくれるヒット』になった。

本戦途中出場の内田のもう1打席は三ゴ。
しかし、この三ゴもホットコーナーを襲う強烈な打球だった。
長打コースが相手好守に阻止されてアウトになったが、酸いも甘いも経験した昨年が内田を成長させていることは確かなようだ。

気になる連携ミス

この試合、今シーズンは遊撃での勝負を宣言をしている藤田一也が「7番・遊撃」で先発出場している。
遊撃スタメンは2/17ロッテ戦に続く2度目だ。

前回は逆方向で2打数1安打、今回は引っ張って2打数1安打。
出場したゲームでは必ずヒットを飛ばし、ここまで4打席17球、空振りゼロは、さすがだ。

そして、本戦では守備でも遊撃前方のボテボテを上手くさばいた。

初回、西川の遊ゴである。
弓削の投球に差し込まれドン詰まりになったゴロ。
藤田がチャージしてグラブに収めるまで、緩く3バウンドして転がった打球を、淀みない動きで1塁へ送球した。

一方、やや不安残る場面も見受けられた。

2回無死2,1塁、ピンチの場面だ。
打者は杉谷拳士、バッターボックスに入るやいなやバントの構えである。

その初球前、弓削の2塁牽制で藤田のベースカバーが遅れ、あわや中前への悪送球という場面があった。
もちろん、新人の弓削がサイン勘違いした可能性のほうが高いが、藤田が絡むそういうシーンがあったのは事実だ。

そして3回無死2,1塁。
清宮幸太郎が中前へ高々と打ち上げた凡フライである。

しかし、打球を追いかけた遊撃の藤田、左翼から前進してきたブラッシュ、同じく中堅の田中和基が落下点でまさかのお見合いし、打球はポテン...
上空に強風が吹いていたというわけではなかったように思う。

結果は「中ゴ」だった。
慌てて田中がポテン打球をひろい、2塁が間に合ったから事なきをえたものの、少しイヤな場面になったのだ。

いくら守備名人の藤田といえども、本格的な遊撃守備は久しぶり。
ましてや共に守りに就くのは経験に乏しい若手や文化が異なる新外国人である。
こういうプレーはどうしても出てくる。

この時期に1つずつ潰し、準備万端で開幕を迎えたい。

左vs左で快音なし

ところで、本日、Number Webで以下の記事が公開された。

卓丸が登録名を八百板から卓丸に変更したその事情、オフの自主トレ模様、ライバルの存在、今年にかける思いなどを、同じ福島県生まれのスポーツライター、田口元義さんが綴ったものだ。

その卓丸は本戦途中出場し、打席は5点を追う7回、2死3,2塁のチャンスでまわってきた。
ところが、左の堀瑞輝の前に3球三振に倒れた。
これで卓丸の対外戦成績は、8打数2安打2三振になっている。

この対決、外角の初球と2球目を連続して見逃し、早々に0-2と追い込まれてしまった。
3球目はアウトローに大きく曲がるスライダー。
この必殺球に身体が派手に泳がされ、空三振を喫した。

左vs左を制し、ここで1本打ってくれれば・・・という場面だったが、仕方がない。

◎対外戦における楽天左打者の左投手成績

上記表のとおり、卓丸のみならず楽天左打者は対外戦でまだサウスポーからヒットを打っていないのである。

これは、キャンプの打撃練習に原因があると思う。

今季の打撃投手の陣容がどういう顔ぶれなのか正確には確認していないので、はっきりしたことは言えないが、フリー打撃のとき、左打者はもっぱら右投手の球を打っているのでは?と思うのだ。

実際、島内宏明を調べてみた。

球団公式サイトに掲載されている練習メニューで、島内の打撃練習に登板した打撃投手、現役投手は誰だったのか?

土屋朋弘、下地栄輝、金森久朋、佐藤学、美馬学、ハーマン。
調べた限りでは全員右投手だった。

島内だけでなく、他の左打者も似たような傾向では?と思う。

そのため、あの場面、卓丸の凡退も仕方がないと感じた。

球界全体でも、右投手と比べて左投手はどうしても頭数が少ない。
であるから、当然、打撃投手も右>左だと思う。

楽天は主戦級に左打者が多い。
開幕後に「左vs左」がネックにならないように、オープン戦や練習試合のの場数を大切にしながら、開幕へ向かって欲しい。

投手陣の成績と寸評

弓削=2回、打者12人、球数41、被安打4、被本塁打1(西川)、奪三振0、与四球2、与死球0、失点4。
西口=3回、打者18人、球数67、被安打7、被本塁打0、奪三振1、与四球2、与死球0、失点4。
鈴木=2回、打者8人、球数34、被安打1、被本塁打0、奪三振1、与四球1、与死球0、失点0。
福井=1回、打者13人、球数13、被安打1、被本塁打0、奪三振0、与四死球0、失点0。
森原=1回、打者3人、球数13、被安打0、被本塁打0、奪三振2、与四死球0、失点0。

弓削は193cm左腕、片山博視(191cm)を抜いて球団生え抜き左腕では最身長である。

プロ初の実戦登板は、ほろ苦いものになった。

初回は3単打で1失点したものの、ストライクゾーンでの勝負を徹底。
ボール球が2球以上連続する場面はなく、リズムは良いように思われた。

ところが、ゾーンに球を集めすぎたのを反省したのだろう。
あるいは、投球の質の再現性に乏しいのかもしれない。
翌2回はボール先行が目立つことになった。

先頭打者にストレート四球。
後続打者にも2球目までボールと、6球連続ボールが続く場面も。

西川の3ランは「左vs左」の痛恨。
打った瞬間の右越え弾になってしまった。

41球を投げて20球スイングされ、空振りわずか1球。
調整不足なのか、実力不足か、緊張感からくるものか、球にキレがないように思われた。

球に勢いがないのは、二番手・西口も同様。
67球を投げてスイング30球中、空振りはまさかのゼロだった。
昨年は8月下旬から全階層で好投続きだったのに、いったいどうしてしまったのか・・・

一方、三番手・鈴木は、大飛球アウトや走者を出しながらも、ゼロに抑える粘投をみせた。
杉谷との対戦ではインコースを攻めてバットをへし折る場面も。

上々だったのは、福井と森原だ。

福井は早大時代のチームメイト、斎藤の好投に触発された部分もあったかもしれない。
2打者をあっさりゴロで退けたが、2死から横尾にヒットを許して、清宮勝負。
3-0とボール先行し打者有利の状況になったものの、憶することなく勝負を挑み、定位置の平凡中飛を誘う投球で退けた。

森原は13球で空振り3球。
力強い速球はもとより、低めのフォークで三振を奪う場面もあり、調整が順調であることをを感じさせた。【終】

・・・というような試合評を今シーズンもnoteマガジン『楽天ファンShibakawaの犬鷲観戦記【2019前半戦】』に50本以上綴っていく予定です。単売1本150円ですが、定期購読がオススメ! ご登録は下記からどうぞ!




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