【試合評】 ファイターズに粘り強さを見せつけた終盤7回裏の同点劇~2016年4月9日●楽天イーグルス7-9日本ハム

同じ負けにも、意味ある敗戦と価値なしの犬死がある

負けにも「価値ある負け」と「価値に乏しい負け」または「全く無意味な敗戦」が存在する。

例えば、昨年よく見られた序盤先制され中盤終盤とリードを広げられ、1度も追いつくことなく先行逃げ切りを許した敗戦、投手陣が炎上するワンサイドの大敗などは、ほとんど価値がない。同じ負けなら潔く大敗したほうが切り替えやすくなるとは言うが、相手チームからしてみればそこに「怖さ」を感じることはないし、統計学の視点から見ても大敗はマイナスの得失点差を増やすだけで全く意味がない。接戦を落とした場合でも、昨年のオリックスに多かった先制し、リードを広げた後に逆転されての敗戦だと徒労感が募るばかりである。(昨年のオリックスは1点差負け32試合のうち、20試合が逆転負けだった)

その点、本戦は違った。初回から取られて取って取られてを繰り返したシーソーゲームは7回表終了時、5-7で楽天が2点を追いかける立場にいた。そこからの同点劇。本当に見事だった。

ファイターズは7回から宮西がマウンドへ。左肘クリーニング手術の影響で本戦が今季初登板になったとはいえ、勝利の方程式の一角を担う歴戦のサウスポーだ。その宮西から1四球1安打で好機を作り、栗山監督を慌てさせ、敵軍が継投作戦に出た変わりばなをしっかり攻めた。

4番・ウィーラーが1塁に歩き、塁上全て埋まった1死満塁、打席は5番・今江だ。ファイターズの五番手・高梨は決め球のフォークが決まらない。投げる球を無くし、やぶれかぶれで投じた甘い速球を、得点圏打率.417の背番号8は見逃さなかった。コンパクトに右前へ弾き返すタイムリーで1点差に迫ると、その後に2死満塁で代打起用の枡田が試合を振り出しに戻す同点の押し出し四球を見きわめた。この一連の同点劇は、今後のペナントーレースへ向けて、楽天ファンに大きな勇気を与えるシーンになっている。(楽7-7日)

両軍のスタメン

日本ハム=1番・陽(中)、2番・杉谷(右)、3番・田中賢(二)、4番・中田(一)、5番・近藤(指)、6番・レアード(三)、7番・西川(左)、8番・市川(捕)、9番・中島卓(遊)、先発・加藤(左投)

楽天=1番・岡島(右)、2番・福田(右)、3番・銀次(一)、4番・ウィーラー(左)、5番・今江(三)、6番・茂木(遊)、7番・藤田(二)、8番・後藤(左)、9番・嶋(捕)、先発・塩見(左投)

日本ハムに恐怖感を植えつけた価値大、布石の黒星

結局、8回9回にリリーフ陣が失点を重ね、7-9で敗れる形にはなった。

しかし、ファイターズの栗山監督、選手達にどう感じただろう。「今年の楽天は相当に粘り強いなあ・・・」といった印象を強く植えつけることができたと思うのだ。

プロ野球は、どんなに強いチームであっても年間60回は負けるスポーツである。負けは負けでも、どのような形で負けたか重要で、その意味では本戦は今後の戦いを有利に進めるためにも意味ある「布石の敗戦」になったと思っている。

ファイターズは15安打で、イーグルスは9安打。岡島、福田の1、2番が2安打。銀次、ウィーラー、今江、後藤が1安打。勝利投手はマーティン(1勝0敗)、敗戦投手はリズ(0勝1敗)。チームは連勝が3でストップ。同日、西武がロッテを降したため、西武が単独1位に浮上。楽天はゲーム差0.5で2位に後退した。

問題は解決されていなかった

結局、問題は全く解決されていないことが露呈した。

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