【試合評】 エースの快投をチームの勝利につなげた新旧好打者の活躍劇~2016年5月12日○楽天イーグルス4-0西武

「素晴らしい!」「抜群!」

試合中に届けられた両軍投手コーチの先発評が、ハイレベルの投手戦を良く表していた。

「素晴らしい!」は楽天・与田コーチの則本評。菊池雄星を「抜群!」と表現したのは西武・土肥コーチ。そのフレーズどおり、ゲームは両先発投手の息詰まる投げ合いで進んだ。お互い一歩も譲らず、共に7回を零封した。

両雄は立ち上がりからエンジン全開、異次元の快投になった。

則本が本戦最速153kmを1回に計測すると、菊池も負けじと154kmを早々にマーク。真っすぐの走りが大変素晴らしく、鎧袖一触の三者凡退で8回戦は始まった。

2回、両軍初安打を記録したが、無得点に終わる。

1死後、則本は5番・浅村に力で右前へ運ばれたが、6番・栗山に仕事をさせない3球三振。前夜2本の適時打7番・炭谷には投ゴ。隙の無い投球で後続を退けた。

直後の裏、イーグルスは1死3,1塁を作る。36打数16安打の.457を記録する5番・松井稼、24打数8安打.333の6番・銀次。菊池との対戦通算打率3割超えの両バットマンが突破口を切り開いた。

菊池の本戦最速156kmを右中間へ弾き返すツーベースは松井稼。銀次は初球アウトローのスライダーに空振りした後、2球目の同じ球を今度は巧打した。1打席内で同じ球種に2度の空振りは滅多にない(今季はわずか2度のみ)というコンタクトヒッターの特徴を発揮。内野の頭上をふわっと超える中安で2塁の松井稼を3塁へ送り込む。

しかし、ここは菊池に踏ん張りを許している。

8番・茂木が1塁に歩いて2死満塁まで攻め立てたが、7番・福田、9番・嶋がともに空三振。唸るストレートと切れ味鋭いスライダーにバットがまわり、点が入らない。このチャンスを逃した楽天は、翌3回以降7回まで僅か1安打に抑えられてしまう。

両軍のスタメン

西武=1番・秋山(中)、2番・木村昇(三)、3番・メヒア(一)、4番・中村(指)、5番・浅村(二)、6番・栗山(左)、7番・炭谷(捕)、8番・木村文(右)、9番・金子侑(遊)、先発・菊池(左投)

楽天=1番・岡島(右)、2番・藤田(二)、3番・今江(三)、4番・ウィーラー(指)、5番・松井稼(左)、6番・銀次(一)、7番・福田(中)、8番・茂木(遊)、9番・嶋(捕)、先発・則本(右投)

則本、最大ピンチを白眉のバックドアスライダーで切り抜ける!!

5回、則本は本戦最大のピンチ。ここをしのいだのが、大きかった。

先頭の6番・栗山に右安され、7番・炭谷バントの1死2塁。8番・木村文を空三振に仕留めた2死後、今江の1塁悪送球エラーで2死3,1塁としてしまう。打席は1番・秋山。3球続けてストライクゾーンを大きく外れる失投になったことで、勝負を避けるフォアボール。2死満塁で楽天バッテリーは2番・木村昇との勝負を選択した。

プロ14年目のユーティリティとの勝負は根競べの9球に及んだが、集中力を切らすことなく正念場を制したのが、終盤の味方勝利につながった。

2球目で早々に0-2と追い込んだ後、真っすぐとフォークのコンビネーションでねじ伏せにかかった則本。しかし、3球目~8球目までことごとくファウルでカットされ、対決は9球勝負にもつれていた。ラストは外から入れるアウトコースいっぱいのスライダー。直前の8球目、外角ボール球に手を出してカットした木村昇は球審にストライクゾーンの確認をし、ボールと告げられていた。球を見きわめたいという意識に、この打席で初めて投じられた予想外の外角スライダー。その組み合わせが、木村昇を硬直させた。まさに白眉のバックドアになった。

翌6回、2本のヒットを許してピンチを招く(うち1本はセンター福田の拙守によるポテン安打)、2死2,1塁で7番・炭谷。岡島守備範囲の右飛に仕留めて切り抜けると、7回は三者凡退。球数が120球を超えてきてもストレートは150kmを越える球威を維持するなど、今季一番のピッチングで西武打線を単打5本に抑え、よせつけなかった。

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