猛禽をお寿司に例えてみた
娘が韓国の女性アイドルグループにはまっていて、部屋中にポスターを貼っているのだが、私みたいなおっさんには全員同じ顔に見えるのである。
その旨を娘に伝えると、かなりムッとして「お父さんの部屋に貼ってあるタカのポスター(※識別用のシルエットのやつ)のほうが全部同じに見える。キモイ」と言われ、冷戦状態に突入してしまいました。
そこで、野鳥に全く興味のない娘による「猛禽なんてどれも同じ」発言を受けて、一般の方に各種の違いを感覚的に伝えるべく、猛禽をお寿司に例えて説明してみることにしました。
これによって、娘から見ても猛禽のレア度や観察できた時の興奮度が共有できるものと思います。
トビ……かっぱ巻き
一瞬、ガリでもいいかとも思いましたが、いちおうお寿司の仲間、という位置付けです。カッパ巻きがお寿司の一種であるのと同じく、トビは猛禽の一種なのです。ひとつふたつなら箸も伸びますが、ひと皿に六貫とか乗ってくると「もういいよ!」って思います。
ノスリ……おいなりさん
今日は白ご飯だと思っていて出てくると嬉しいが、今日はお寿司だ!というテンションの時にいなりずしが出てくるとちょっとガッカリ。それでもかっぱ巻きよりは随分上。そんな位置付けです。ただし、「ああ、今日のお寿司っておいなりさんのことか」と思ってスルーしてしまうと、中にはレアな具(オオとかケアシとか)が混ざっていることもあり、注意が必要です。
ミサゴ……玉子
一見、猛禽らしからぬ外見ながら、目立つところでいろいろ動いてくれるミサゴは、微妙な味わいを楽しむ玉子の如しです。一瞬ガッカリ、でも嬉しい。私は好きですよ。
イヌワシ……大トロ
クマタカ……中トロ
この二種はキング・オブ・寿司ネタで間違いないでしょう。当然、絵皿に一貫だけ乗って登場です。よそ行きに着替え、姿勢を正して「わざわざこれを食べに行く」というスタンスが必要な二種です。でも年に数回食べると満足な気もする、そんな距離感を表現してみました。
ハヤブサ……タイ
オオタカ……ブリ
トロに次ぐ魚介の王様はこの二種でしょうか。シャープでキレのあるハヤブサはコリコリとした白身魚、ゆったりと羽ばたくオオタカは脂の乗った冬の幸、のイメージです。日常で口にするとその日一日が幸せです。
オジロワシ……カニ
オオワシ……ウニ
これも絵皿です。「美味しいんだけど基本的に本州の産物じゃないんだよね」「あれ?去年ウニ食べたっけ?」という感じ。年に一回食べるチャンスがあれば、それで満足です。オオワシの方が顔がこってりしているのでウニ決定。
ハイタカ……ビントロ
ツミ……カツオ
ビントロそれ自体は美味しいんですけどね。トロだと思って口に入れると、ちょっと騙された感があるじゃないですか。中途半端すぎてなかなか皿に手を伸ばすきっかけがないけれども、食べるとそりゃ美味しいさ、そういう感じです。あと、ツミは個人的に好きなんです。
チョウゲンボウ……ネギトロ
リーズナブルで子供達にも大人気、お手軽にトロの美味しさを体験できる。そんな手巻き寿司界のヒーローです。玉子と並んで小学校低学年の寿司入門者にはテンション高めで紹介していきたいですね。
チュウヒ……エンガワ
薄い翼にキリっとした顔立ちで草原を低空飛翔するチュウヒは、歯ごたえの良い白身の中でも最上級のエンガワ。でも味的にはやはり通好みの域でしょうか。ある程度、他の猛禽を味わい尽くしてからたどり着く境地なのかもしれません。
サシバ……イクラ
お寿司のイクラとサシバの渡りは数が勝負。シャリを埋め尽くさんばかりのイクラのお寿司は、ウニや大トロにも匹敵します。でも「あそこのイクラはすごいから!」とかいう情報に期待して行くと、大抵イクラはほんの数粒だけで、半分以上がキュウリだったりするんですよ。それってほとんどカッパ巻きじゃないか。ちぇっ。
ハチクマ……〆鯖
正直、あんまりカッコよくないこの鷹の魅力は大人にならないとわかりません。かといって、大人でも〆鯖ばっかり続けて食べる人はあまり見かけません。中トロやブリの合間に食べるからこそ渋い味わいが広がる一品です。
フクロウ類……貝類
赤貝、ミル貝、つぶ貝。たいてい「時価」です。怖いです。フクロウ類と貝類はマニアックな大人の世界ですね。どこにでもいる割には姿がレアなフクロウ。居るところには居るけれども並んでいる客が高級そうで近付きがたいコミミズク。コノハズクやアオバズクも、知人の紹介がないと入れない「一見さんお断り」な隠れ家的雰囲気のお店でこっそり提供されています。そうかと思えば若鳥が校庭に普通にとまっていたりもします。フクロウ類はレア度の相場の見極めが難しい、投機性の高いお寿司だと言えます。
モズ……サーモン
今、回転寿司で一番人気のサーモンはモズ。これは評価というよりも、こうあって欲しいという私の願いです。モズはその昔、猛禽類に分類されていました。近所でお手軽に猛禽の雰囲気を楽しめる上にかっこいい。子供たちよ、もっとモズに注目しろ。
さて、娘にこの表をみせたところ、「お寿司食べたくなった」との感想でした。そして家族で回転寿司に行き、韓国アイドル好きの娘と野鳥好きの父の妥協点として双方がいいと思えるものを探した結果、「石田ゆり子和平協定」が締結されたのでした。
冷戦終結。
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