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オニバスの上の天国

フォロワーさんの情報では、今年も富山県中央植物園の池にパラグアイオニバスが葉を広げたらしい。

中央植物園は植物園なのでもちろん植物の展示が充実しているが、屋外スペースには大きな人工池があり、冬には1,000羽を超えるカモ類で賑わうバードウォッチングの名所でもある。わたくし個人的にも、カモを見るなら富山市環水公園、富山新港臨海野鳥園を抑えて富山県でぶっちぎりトップのおすすめスポットである。入園料500円、JAF割で400円というのもリーズナブルだ(冬場はさらに安い)。

富山県中央食園。温室群よりも広大な池と野外フィールド。

その池の一角に、パラグアイオニバスが植わっている。
パラグアイオニバスの葉は直径1mを越えるほど大きく、葉のふちはたらいのように垂直に立っている。浮力が大きいので、小さな子供が乗っても沈まないらしく、そういうイベントも開催している。
https://www.bgtym.org/event/6072/

人間のこどもが乗っても沈まないくらいだから、カモが数羽乗るくらい訳もない。というわけでパラグアイオニバスの葉の上で休むカモたち、という取り合わせはフォトスポットとして一部のカモ好きの間で大変人気なのである。
そのオニバスが今年も葉を広げた。カモはまだカルガモしかいないが、その分観客も少なく、ゆったりと楽しめるのである。

昨シーズンの様子

久しぶりに調査のない休日である。早朝あわただしく出かける必要もない。朝寝の後にゆっくりと起き、車にカメラと双眼鏡を積んで出発する。
調査とは違い、何の気負いも使命感もなくただ鳥を見に行くのは本当に気楽でいいものである。

いざ天国へ。

芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」では、天国のお釈迦様はハスの葉の間から地獄を覗き、カンダタに蜘蛛の糸を垂らした。この舞台が南米の天国であったならば、パラグアイオニお釈迦様がパラグアイオニバスの葉の間からパラグアイ鬼地獄を覗き、パラグアイオニカンダタにパラグアイオニグモの糸を垂らすに違いない。さすが南米は多様性の宝庫である。常に迷える私たちにとっては大変有難い、パワフルな救済である。

昨シーズンの様子(いわゆる「スサー」ポーズ)

静かに憩うカルガモたちを想像しながらハンドルを握ること40分。
中央植物園に着く。とほぼ同時に雨が落ちてきた。

前世のカルマか日頃の功徳不足か。まあこんなもんである。

私はプロではないので無理はしない。合羽を着てまで鳥は見ない。雨が降ったら帰るだけである。
ちなみにプロとアマチュアの違いは腕とか機材とかウンチクとか収入ではなく、「プロには納期がある」という一点らしい。

とにかく晴鳥雨読。こんな日は大人しくおうちに帰るのである。調査のない日はのんびりと過ごさなければならない。

昨シーズンの様子

でっもせかっく植物園まで来たので、目と鼻の先にあるファボーレに立ち寄る。
ちょっぴりがっかりした気持ちをカレーに向け、無印良品で美味しいレトルトカレーを大人買いすることで割と充実した気分を味わい、家路につく。

家に車を止めるのとほぼ同時に雨は上がった。まあこんあもんである。現生は非情だ。天国に行くのはまた今度にしよう。

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