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富山の野鳥句碑

テレビ番組の影響もあり、俳句ブームが続いています。五七五の17音に季節や情景を読み込む世界一短い文学・俳句。季語として野鳥を詠んだ句も多く、野鳥観察とともに作句を楽しまれる方もおられるようです。
ところで、皆さまお馴染みの探鳥地にも、鳥を詠んだ俳句の句碑が建っていることをご存知でしょうか。

一つは身近な探鳥地としても人気の、富山市の呉羽山です。有名な五百羅漢が並ぶ階段の登り口にあります。
右上から左下に向けて

金尾梅の門 句碑

とびからすかもめも聞こゆ風雪解(かぜゆきげ)
右下に「梅の門」と書いてあります。作者は水橋出身の俳人、金尾梅の門 (かなお うめのかど  明治33-昭和55年)です。
この句の凄いのは、風と音だけしか描写していないところです。視覚を使わず「雪融けを促す生暖かい春先の強風に乗って、トビ、カラス、カモメの声が聞こえてきます」というたったこれだけの感覚情報で、読む人の中に素朴で雄大なふるさとの情景が立ち上がってきます。梅の門の繊細な感性のなせる業です。
また、梅の門の他の野鳥の句を見ると、ふとした視点の切り替えによる季節感の描写が素晴らしく、描かれている時間すべてに生活者としての作者が投影されている点も見逃せません。身近な自然を深く味わうその姿勢は、
まるでベテランバードウォッチャーのようです。

さて、皆さんは「梅の門」という変わった名前が気になっていると思います。これはむろん本名ではなく、ご自身で付けた俳号です。その由来について書かれた資料は見つかりませんでしたが、間違いなく関連があるだろうと思われるのが高岡の先輩俳人、筏井竹の門(いかだい たけのかど  明治4-大正14年)です。

筏井竹の門は北陸の地にありながら、中央の俳壇にも影響を与え続けた大俳人で、歌人でもありました。若齢の梅の門も当然その存在を知っていたはずです。「松竹梅」で一歩へりくだった梅の門を名乗ったのは、先輩俳人への尊敬の念からなのかもしれません。

ちなみに筏井竹の門の俳号の由来は本によると「家に竹で作った門があったから」というシンプルなものでした。
では、竹の門の句碑はというと、こちらも有名探鳥地である高岡市の高岡古城公園の小竹藪にあります。

筏井竹の門 句碑

宴つづく思ひの朝寝さへづれり
楽しい宴会の余韻に浸り、朝寝していたら小鳥が囀った。という、なんとも大家らしからぬ親しみやすい句作です。あるいは人生のことを詠んだのかもしれませんね。
しかし他の句を調べてみると、竹の門の格調高い作風に驚かされます。


竹の門の句の魅力は何といっても色彩感覚と構図力にあります。素材となる花鳥や背景を厳選し、鮮やかな色彩の対比や水墨画のような陰影の濃淡を使って、限られた文字数の中に広がりを持った自然を構成するさまは、練りに練った構想に沿って撮影地やレンズを選び、三脚を据えてじっとシャッターチャンスを待つ野鳥写真家にも似ています。

それぞれの句碑の建つ場所で、梅の門っぽい感性で野鳥を眺めたり、竹の門のような眼差しでファインダーをのぞいて見ると、バードウォッチングの幅がぐっと広がるかもしれませんよ。
 
参考文献 
「金尾梅の門全句集」季節発行所
「竹の門句集」高陵社   ほか

【調査地】富山市古沢 呉羽丘陵 目撃記録
【観察者名】たかはし
【天候】はれ
【観察開始日時】2022年7月29日 7時30分
【観察終了日時】2022年7月29日 18時0分
【観察概要】アブラコウモリ2 ニホントカゲ1

【観察種】
[種名] [数] [メモ]
1.カルガモ 29
2.カイツブリ 3 うち1羽抱卵中
3.アオサギ 1
4.トビ 14 上空旋回
5.ハシブトガラス 9
6.ツバメ 3
7.ヒヨドリ 1
8.スズメ 6
9.カワラヒワ 2


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