【読み切り】女領主のストラテジー
私は自身の城である門前で薄汚れた浮浪者が着るようなローブを剥ぎ取り風に流れるままローブは飛んで行った。
私の視界には選択肢がありますが一択しかありません。
「これでも私の顔を忘れたのか? バノン」を選択。
内心渋りながら選択肢通り振る舞います。
貴族らしきNPCキャラクターは瞳に涙を溜め感涙して咽び泣きました。
「生きてらしたのですね、レイア様」
(生きてるも何もゲームプレイしたばかりでプレイヤーが死んだと思われた亡き王族の血筋って•••プレイヤーに何人亡き王族が居るんですか)
生憎、このVRストラテジーのストーリーは一切他プレイヤーと混じり合わない事になっています。
ならどこで混じり合うかと言えば【交易】【ランキング】あとなんだったか忘れてしまいました。
灰色か白に近い煉瓦式の城の門まで続く橋で遠くの城の方から運動はあまり得意そうではない方がえっちらおっちら走って来られます。
私の前にまで来ると「ぜえ、はあ、ぜえ、はあ、はあ」と膝に手を当てて呼吸を整えようとします。
(リアルですねえ、グラフィックもですがAIのNPCの動きがリアリティあると言いますか)
男は顔を上げて瓶底眼鏡をクイッと上げます。
「無事ご帰還出来て何よりです、領主様」
私の目の前にまた選択肢が現れます。
「長い間、政務を任せてすまなかった」
「私の代わりに仕事をやってくれて大義であった」
「労いの言葉の前に現状を聞きたい」を選択する。
私は一番下の「労いの言葉の前に現状を聞きたい」を選択。
カリスマup
どうやら選択肢次第で能力値が上がる事が分かりました。
「はい、問題は山積みです資源不足や軍事力の低下、近隣国との敵対などの問題があり」
今度は選択肢次第で報酬が貰える選択肢ですね。
まず農地がどれくらいあるのか分からない事とそれに従ずる人がどれくらいか分からないといけません。
私は【詳細】を選択し農地の広さと耕している物から労働者の数を見ました。
とうもろこし。農地3:3につき労働者一人。
資源不足なら農地拡大を
労働者を増やせを選択する
〈ダイヤ5つ貰った〉
ダイヤは基本的になんでも使えます。
課金すれば貰えるものにダイヤが含まれていたりするのが常です。
逆に硬貨は何をするにも必要不可欠なもので沢山あればあるほど良いです。領民の働きぶり次第で硬貨を常に獲得できます。(それを税収と呼ぶ)
次に最初からあった伐採場と採石場、採鉱石場、果樹園、農地、牧場の拡大をします。
拡大に伴い労働者を適切に割り振ります。
また選択肢が出てきます。
「四人の貴族騎士がレイア様に仕えたいそうです」
能力値を見ましたが全員レベル1の最低平均値ですね。
仲間にしなければ新たな騎士たちが来る事になります。
(ゲームを早く進めたいなら受け入れる一択でしょうね)
能力値を見る
受け入れてレベル上げするを選択する。
自身でスカウトするから結構だ
国力up
国力が上がればランキングも上がりますし敵に対する攻撃力にも繋がってきます。
とりあえず瓶底眼鏡さんと騎士の名前を一覧から見ます。
思えば瓶底眼鏡って名前なんなんでしょうか?
シリル・ドゥ・ルソー【叡智の図書館】(瓶底眼鏡)
ドゥドゥ・エル・カペラニ【忠実なる騎士】(忠実犬)
マルシャル・クロード・ラポルト【敏腕な商人】(商売人)
ケヴィン・デル・オコボ【法律の守護者】(法律法律煩い人)
ルノー・ヌダム・ダルベレ【貴族騎士】(娯楽騎士)
シリルが「市内を見回るのはいつが良いでしょうか」と尋ねてきます。
私は内政庁で政務処理を終え領地管理を行いとうもろこしと税のリソース回収を行ったばかりです。
(そう言えば一度も街に視察に行ってませんね。税やとうもろこしは受け取っているけれど領民の仕事ぶりは見ていなかったです)
行く
行かないを選択する。
「••••いいえ、それはアナタに任せます。私は軍事力の強化、資源不足の解決、近隣国との友好関係。これらを解決しなければ街にでても恥晒しとなる事でしょう」
シリルは納得しきった顔で「分かりました、それらの解決の糸口としてお耳に入れたい話がございます」
聞くを選択する。
聞かない
暗がりの室内に蝋燭のランプの光だけが室内を明るくします。外はもうすっかり夜です。
私は机の上で手を組み顎を乗せます。
「ほう、それはなんでしょう」
シリルの顔は蝋燭で照らされています。だが陰影はくっきり分かれている事が分かります。
シリルは勿体ぶらずあっさり言いました。
「四大貴族です、伝統派、成金派、才能派、人徳派。四つの派閥は女性が中心となって派閥争いしています」
このゲームは男女平等と謳っていますが実は少しだけズレています。
男性プレイヤーなら四大派閥は男性となり女性プレイヤーなら四大派閥は女性となります。
何故そうなったかと言えばテストプレイヤーが四大派閥を色仕掛けで攻略した為AIの倫理観に多大なる破壊を与えるとし同性の四大派閥となったとか。
またAIのNPCと結婚から子作り出来ますが男性プレイヤーが望むようなエロシーンも女性が夢に見た朝チュンもありません。
その名も【婚約者システム】(婚約破棄はありませんが解消はあります)
イケメンや美女をプレイヤーの【婚約者】として城に招き入れ〈ギフト〉を送り〈デート〉の回数を重ねる事で【結婚】から【子作り】まで一気に駆け上がります。
子供はAIですがプレイヤーの行動記録で性格を分析し選んだパートナーと合致してる点のみ残しあとは教育課程で性格が変わっていくスタイル。
子供の育成次第で国力は上がり重要だといえます。
しかも伴侶は複数人可能で同性パートナーあり。
だけど恐ろしいシステムがまだあります。
ランキング上位者には結婚した相手キャラと公式でツーショットされ宣伝に使われます。
承認欲求の強いプレイヤーはランキング上位を目指し逆に恥ずかしがり屋は別にどうでも良いという感じで。
いや、カップリングランキング(自カプ推奨)ってなんですか! NLのプレイヤーばかりではなくBLやGLを狙ったプレイヤーがカップリングランキングを荒らし回ってるのは見ていて壮絶です。
(これが偉人キャラゲーじゃなくて良かったです。そうしたら歴オタが自カプとカップリングランキングで荒らし回るに決まってますからねえ)
実際某偉人キャラが出るVRMMOストラテジーでは【織田信長の嫁一号】の垢名から【伊達政宗の名前使ったやつ殺す】から【徳川家康と子作りしちゃいました!】まで自己主張の強い垢が乱立し男プレイヤーに至ってはセクハラギリギリまで攻めた垢名まであります、怖いです民度が。
その某偉人キャラが出るVRMMOストラテジーは公式でランキング上位者に対し【誰々の嫁の称号】から【誰々の夫の称号】まであり公式が【認知】した! という証欲しさに重課金と廃課金者が存在し日々マウンティングのゲーム内掲示板らしいです、絶対に精神衛生上良くない事が分かります、病むか荒みますよ絶対。
オリジナルキャラで本当に良かった良かったです。
だけどカップリングランキングのせいでプレイヤーが性別を偽る輩が多く存在しています。
同性キャラクターを攻略できる時点でもはや四大派閥の同性の必要性も皆無に等しいですが運営はそこは頑なだったらしく同性プレイヤーで攻略できる四大派閥(ハーレム不可)なのでルートに入れば他ルートに行けない仕様になっているとか。
運営に絶対腐女子か百合男子居ますね。
さて四大派閥の話に戻します。
【伝統派】 シャルロット・ディ・カスティーユ
【成金派】 イレーヌ・ド・マンチーニ
【才能派】 ローラ・ド・ブラン
【人徳派】 フローラ・ド・デュポン
このVRストラテジーでは剣以外の武器に〈魔法〉が出てきます。
伝統派と才能派は魔法を重視。
成金派は魔法道具で一代を無し伝統派から蛇蝎の如く嫌われており。
人徳派はそれこそ聖職者や聖女を多数輩出し。
伝統派&才能派&人徳派vs成金派の構図が出来上がっています。
アレですね分かりやすく言うなら一人がイジメのターゲットになってるおかげで他は大丈夫••••だいぶ酷いですけどそんな心理が働いているのは間違いないわけで。
取り入るとしたら成金派以外になります。他貴族を敵に回すのは面倒ですし。
だけど
(プレイヤーには全魔法に適正がありますから自由に育成できる事。問題はそこなんですよね。攻略サイト見ても『基本自由だから』でかわされます。どの育成法が良いか分かりませんし)
本音を言えば魔法道具(魔導具)を使いたいです。
魔導書とか使ってみたいです、とても。
そう考えていると選択肢がまた出ました。
誰から魔術を教わりますか?
選択肢が現れます。
シリル (瓶底眼鏡)
マルシャル (商売人)
ケヴィン (法律法律煩い人)
え? 教わる事が出来るんですか?
リソースの回収と国力を上げるため騎士たちのレベル上げに勤しんでいました。
このゲームには属性値と属性があります。
四つの属性の効果を表示するなら、
武力属性 バトル挑戦時の兵士の損失を決める
智力属性 銀貨の数を決める
政治属性 穀物の量を決める
統率属性 兵士の人数を決める
(騎士のレベル上げでストーリーが解放出来ました! やったー!)
するとシリルではなくマルシャル(商売人)が内政庁にやって来ました。
マルシャルが私の机に布を被った物を置き「広げてよろしいか?」と尋ねます。
また選択肢です。
見るを選択する。
見ない
そこには乳白色の石が置かれていました。
「市場で出回っていた物です、幸いコレ一つで見て間違いないかと」
私はソッと触れるとイメージが強制的に流れ込んできました。
血飛沫と断末魔の竜。
『我らがニンゲンに何をした!』
それは悲哀で。
『ニンゲン、ニンゲンが我らを壊す』
それは憎悪で。
『ニンゲン奪ったものは必ず取り立てる』
それは執着。
『ニンゲン、ニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲン』
それは必ず来る一つの未来を示していた。
『殺す』
これは竜石で呪いの石。竜でしか獲る事が出来ない。特殊な魔石。
「竜は加護の象徴。その竜が多数殺されたとなれば竜は竜石を辿り報復に来るでしょう」
また選択肢です。
混乱を避けるためには市場調査が妥当と私は判断し。
市場の調査を選択する。
軍事力を上げ迎え撃つ
「マルシャル、必要なら人をいくらでも使いなさい。ですが極秘で動きなさい。他の誰にも知られてはダメよ」
「ハッ、マルシャル五日ほど時間を下さい。やり遂げてみせます」
「気をつけて、バックは大物貴族かもしれない」
「承知」
ブンッと身体が振動したかのように二重三重になるとマルシャルは一瞬で姿を消しました。
内政庁の扉が開かれます。シリルでした。
「アレ? 今マルシャルさん居ませんでした?」
「ちょっとおつかいを頼んだの」
「なるほど商人ですもんね」
シリルがジッと石を見つめている事に気づく。
「それは」
(マルシャルさん、一緒に持って行きなさいよ)
選択肢が出ます。
私はこの選択肢にだいぶ時間を掛けました。
剣技を打ち合い火花が散る。
ここは騎士の修練場です。
ドゥドゥとルノーが騎士たちを監督していました。
ドゥドゥが手を胸に当て一礼。
「レイア様、魔術の勉強は」
私は反対側の壁に立てかけられている剣を手を差し出し広げて剣の回りが緑色に淡く光ると宙にふわりと浮き高速で私の手に柄の方から向かってきます。
パシッ
私の右手には剣が握られています。それを音を立てて床に突き立てます。優雅に。
剣の素人が無闇に振り回したら危ないですからね。かなり重みのある剣でしたし。
ドゥドゥが「お見事です」とお世辞か本音か分からないですが素直に喜びます。
「剣技はまだまだですが奪う事で戦意を失わせる事くらいは出来るようにならなくてはとシリルと相談し編み出した術です」
「シリルも鼻が高いでしょう」
ルノーが「ほらほら見てないで打ち合う打ち合う」と集まってきた騎士たちを離散させます。
「それでどうかなさいましたレイア様」
「四大貴族と会う前に別の貴族の友達を作りたいと思いシリルから【お茶会】を提案され何か良い茶葉とお菓子はないかしら?」
ルノーが率直な疑問を口に出します。
「それならマルシャル殿の出番では?」
「彼には別件をお願いしているの」
「それならこのルノーにお任せを」
ルノーが言うには市場には貴族御用達の茶葉やお菓子などがあるらしくお忍びで買いに行く人も居るとか。
ルノーがリストを作ります。
「助かりますルノー」
「いえ、しかしレイア様がジャスミンやアールグレイ、アッサムが好みとは知りませんでした」
「アールグレイには必ずミルクを入れて頂戴。ジャスミンには沸騰したてのお湯は使わないで。必ず冷ましてからにしてねあとアールグレイに使った茶葉はパウンドケーキに混ぜてね勿体無いから」
「了解です味見には自信あります」
「こらこらティア(料理長兼メイド)には余分に多く作ってもらいますから」
ルノーが辺りに人が居ないか警戒し、いないとわかると耳打ちしてきました。
「シリルから聞きました、問題が解決しないと市場に、民に合わせる顔がないって」
「え、ええ言ったわ」
「そこで四大貴族以外で解決法があります」
選択肢が出ます。
聞くを選択する。
聞かない
「ぶっちゃけ有力貴族の令息や令嬢と【婚約】しちゃえば良いんです」
その方法は考えなかったわけではありません。
しかし【婚約者】の上限は決まっています。
「援助の約束が叶ったら婚約解消したら良いんですよ」
「それは流石に筋が通りませんよ」
ルノーは「良い考えだと思ったんだけどなあ」と愚痴をこぼします。
「そうですか、分かりました俺はもう何も言いません」
ルノーがリストアップされた物を買い出しに出かける、そのついでに料理長兼メイドのティアに必要なものを聞きついでに買い付けるとか。
「正直な話【婚約者】はじっくり決めたいんですよね」
扉の手前でケヴィンが手を掛けようとして一瞬止まる。ノックを忘れた自身に気づいたのだ。
「あらケヴィン」
「失礼ながら判断を仰ぎにきました。暴徒を起こした人たちの処罰をどのようになさいますか?」
牢に入れるを選択する。
国外追放する
「牢に入れなさい。彼らは我が国の市民です。事情を聞き改善を目指します。ただし」
「改善以前の問題なら国から追い出しなさい」
「ハッ、処刑でなくて良いのですね?」
「殺るなら裏で行いなさい。表には決して出すな」
「善良な民の幸福のためにケヴィン邁進致します」
「頼みますよケヴィン」
扉を閉めたケヴィンは鼻歌歌いながら部屋から出て行った。
「さてシリル。そこに居ますね」
部屋の影から手には竜石を布の上から両手で持っているシリルが現れます。
「竜には竜同士、特殊なテレパスがあります。一体やられたら『それはソイツが弱かっただけ』で片付けられます。ですがそれが複数で親子共々となれば話は変わってきます。竜は加護の象徴。竜の雛鳥は大切に育てられ親の竜は旅立ちます。この竜石は竜の群れではなく飼われていた竜の竜石です。だから人語を理解していたのかと」
「分かったわ、つまり?」
「この竜石が他に呼びかけても暴れ回るだけで意味がない、というか野良の竜に人語は理解出来ません感情を感じ取るだけです」
「そう••••問題はその高価な竜石の出所なのよ。竜石は普通なら値段がつけられない価値だから」
(マルシャルの報告を待つしか出来ないんですね)
森の中のアジトにマルシャルと複数人の【影】が付き従います。
戦闘のあとのようで呻き声を上げている者はロープでまとめて縛り上げられボロボロでごちゃごちゃと散乱しているアジトの机には竜のイラストがバツマークで描かれている紙をマルシャルは取り上げてしばらく見つめ目を見張ります。
「そういう事か」
四大派閥の【伝統派】にして血筋が【人徳派】のカトリーヌ・ド・モリニエール。
あだ名は【竜皇女】。
【伝統派】の一人、父【竜殺しの勇者】アラン・ド・モリニエールの血筋を継ぎし《》。
彼女は窓からさす月明かりに照らされ満月を見上げていました。
「許さない、絶対に」
その瞳には怒りが宿っていました。
ルノーが拍手で迎え入れ食卓にはパウンドケーキに紅茶が並べられています。
「良かったですねキアラ嬢と友達になれて」
キアラ・ド・ヴァロワ令嬢。派閥は【人徳派】で本人は魔法の才があり【才能派】の援助を欲しているとか。
「彼女の魔法植物に対する知識の深さには感嘆を覚えます」
彼女の才こそ【成金派】が欲してやまないでしょう。
「彼女が魔法薬師になった暁にはぜひ援助をしたいものです、純粋に」
シリルが言います。氷だけ入ったコップを持ち上げて鳴らします。底には【浄化の刻印】が刻まれています。
「ですが、レイア様の刻印術には目を見張るものがあります。最初に教えた【操糸】魔術も充分凄いものでしたし」
ドゥドゥが続きます。
「確かに男でも半年振らないと持てない剣を糸も容易く操ったのは見事としか言えません」
ルノーはパウンドケーキを頬張りながら紅茶を流し込む。
「んぐ、うちの領主様は天才、で良いんじゃないですか?」
選択肢が現れました。
私の夢は立派な領主になる事です
私はいずれ女王になるつもりですから
いや、どっちを選べば良いんです!?
ゲームのテーマは「女王」と「領主になって民を導く事」。
これはストーリーの分岐に関わる選択肢ですね。
私はしばらくの間悩み、選択しました。
昼頃。場所は騎士たちが固唾を飲み込んで見守る騎士の修練場。
「ドゥドゥ、今日こそ剣を振るってもらいます」
「そうだぞ! 俺は振るって一敗したんだからな!」
「ルノーが負けたのは過信と慢心だ。反省しろ」
「そんなあ」
始めの合図と共に【縮地】魔法で距離を縮めます。
剣を打ち込むと見せかけて裏に回り込み「馬鹿正直に突っ込まないのは流石です」背中に打ち込んだ木刀は木刀でいなされます。
「まだまだぁ!!」
身体に【操糸】魔法と【刻印】魔法を木刀と身体にのせて、身体の軌道を自由に頭のイメージで設定しドゥドゥに合わせて打ち込みます。
押したり引いたり攻めたりそれを繰り返し身体の軌道は縦横無尽でドゥドゥを翻弄します。
ドゥドゥは喜びに感嘆し「さすがっ」と言います。
私はドゥドゥから離れ「?」ドゥドゥが訝しみました。
「ドゥドゥ、言ってましたよね? 男の人でも持つのに半年かかったと」
「それが•••••ーーっ!?」
ドゥドゥの手から一気に木刀が重力を持ったかのように地面に矛先が落ち地面を軽くヒビ割れを起こします。
「な! これは」
(軽いはずの木刀が剣以上の重さだと•••!?)
「重力の刻印です、私は操糸で身体を操りその負荷を重力の刻印で相殺しました。そしてその負荷を」
ずしり
さらに地面に深く沈む木刀。
「これでも私に勝ちは譲らないと?」
『剣技はまだまだですが奪う事で戦意を失わせる事くらいは出来るようにならなくてはとシリルと相談し編み出した術です』
「お見事ですレイア様」
私はやっと木刀の矛先を下げ「ふぅー」と息を吐いた。
「ひゅー、流石領主様」
「下手な口笛はするなルノー」
「相変わらず手厳しい」
私は騎士たちにタオルなどを渡され「凄かったです!」「勝てるとは思いませ、いえ勝てると信じてました!」など訓練騎士たちに囲まれてしまいました。
ドゥドゥが近づきます。
「? どうしましたか」
「試合後の握手、忘れてましたよ」
「ああ」と私は頷き手を差し出します。
手を握り合う。
「見事でしたレイア様」
「ほとんどまぐれみたいなものです、ですが勝ちは勝ちです」
「ええ、誰にも文句は言わせません私が」
手が離れる。
(私より一回りも二回りも大きい手だった)
私が、ドゥドゥに勝った。
なんとも言えない気持ちが胸に広がる。