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シェーカーの清掃意識

独身主義に並んでシェーカーが厳格に守ったものに清掃の意識があります。

『楽園に埃はない。』

"There is no dirt in heaven."

というマザー・アン・リーの遺した言葉が象徴的に示すように、清掃はシェーカーにとっての楽園の条件の一つとして考えられました。彼らの清掃へのこだわりは生活規範や家具のアイデアの中にも見つけていくことができます。

まず顕著であるのが、『収納』です。

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彼らの代表的なアイテムでもあるオーバルボックスは実に多様なサイズで制作、収納道具として使用されました。建築の段階から、壁一面に引き出しを取り付けた建具は、図録や資料でも頻繁に登場します。

収納のための設備という点では、大量の洗濯物を干すためのドライラックを縦長に並べた部屋や、壁面の至る所に取り付けられたペグボードなど、収納や整頓に対してのこだわりは大小さまざまに確認できます。

ペグボードには箒などの清掃道具やコートや、ハット、椅子など日常的に使用する物が掛けられていたようです。

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次に、前提となる共同資産の考えにより、私物や個人が不必要な物を持たないことで『物自体が少ない』ことが挙げられます。

これは現代のミニマリストにも通じますが、道具、衣類をはじめとした過剰な私物を持たないことにより、特に身の回りの整理が極めて容易だったことは清掃の上でも重要な点です。


家具については、共通して『軽い』シェーカーの家具は移動しやすく、ペグボードを利用して壁にかけることも、別の部屋に持ち運ぶことも容易でした。

『壁にかけられた椅子』のイメージは、彼らの行動の独特さ、その空間の静けさを呼び起こすようなビジュアルとしての斬新さに加えて、清掃意識を強調する行為にも感じられます。


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また車輪が脚部に取り付けられ、1人でも移動することができるような加工が施されているベッドは移動を前提にした作りであるところなど、彼らのこだわりや工夫が感じられ、非常に興味深いです。

1852年にパテントを申請し、対外的にティルターが発表された時にも、『床を傷つけず、カーペットを引き裂かないで傾けることができる』と謳っていたことにも、物を綺麗に使うことへの関心や意識の高さを感じることができます。


このようにシェーカーの清掃意識は、彼らの暮らしや道具の随所に散りばめられ、彼らのものづくりの中にもある種の前提として組み込まれていたもののようにも感じられます。

清掃を目的にしたものづくりというよりも、

暮らしの上での日々の清掃をいかに邪魔せず、効率よく行えるかということを当然のように配慮されたものづくり

そのように捉えると、シェーカースタイルについてまた考えの深まるテーマだと感じています。


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