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シェーカー家具における平等性

シェーカーの人々はコミュニティー内で利用するために家具や道具を自分たちで製作しました。その他にも衣類や建築、食料といった自給自足の理念は彼らの共産的集団生活の中心に据えられたものです。

幸福や安息を体現する地上の楽園を標榜し、最盛期には6000人を超える教徒が複数のコミュニティを展開し、アメリカ東部を中心に集団生活をしました。彼らの幸福や安息についての考え方は、信仰に基づく極めて宗教性が濃い部分であり、また場を改めて考えられればと思います。

実際に男女、人種、職種、その境なく、同じ物を使い、同じ物を食べ、同じように生きていた平等な共同生活は、南北戦争以前のアメリカにおいては先進的な取り組みであったとも言えます。

男女の平等という点で言えば、独身主義を徹底するシェーカーにとって、男女の性は明確に区別され、決して交わってはならないものでもあります。したがって、性としては二分された上で、それぞれに平等に、公平に労働や役割が与えられ、生活の環境が整えられていたとも言えます。

男女という点で見ると、現代社会のジェンダー論とはまた違った、シェーカーの考える平等観が存在していることに気がつきます。


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シェーカーの運営の中で、宗教規模が拡大する中でも、どのコミュニティーであれ同じ生活と労働の環境を整えることが目指されました。

前提として、コミュニティーでの生活が信仰と救済に深く関わるシェーカーの宗教観にとって、人や場所によって差が生まれるというのは、彼らの根源にあるプロテスタンティズムの基本姿勢とも矛盾が生まれます。


生活の平等を管理するために「規格化された同じ家具」を使うことは環境作りとして非常に効果的な手法でした。コミュニティや時代、作り手によりディティールに差はありますが、基本的な構造は順守され、大きく逸脱したデザインは晩年になるまで見受けられません。

新たにコミュニティーが建設されるときは、建築をはじめとした、他のコミュニティー同様の家具、建具、道具がそのコミュニティーのために新調されました。

使用者の身長に合わせた椅子の製作や仕事場に合わせた家具類など、同じ構造を持ちながら、異なるサイズを持つようなシェーカーの規格的で柔軟な家具製作は、時代や場所を問わず同様に行われました。

各種のサイズ展開があったオーバルボックスはその最たる例です。

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小さな村の家具全てを新調すると考えると、その必要数を納品するには、規格的なものづくりは生産性も高く、効率的で歓迎されるものだったと推察されます。

更に、同じ物を淡々と作るというプロセスは個人的なアイデアや自惚の芽生えの抑止として、シェーカーの無個性主義や合理主義にも通じています。


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こういった宗教集団として教徒に差があってはならないという事情も、生産する家具や道具を規格的に統一する根拠の一つとなっています。そして実際に同じ家具、道具を扱う生活環境は彼らにとって平等性を保つ役割も担いました。

教徒には平等に家具が与えられ、その家具は彼らの平等な生活を整えるために、同じようにデザインされました。

言うなれば、シェーカーの考える平等な社会、コミュニティを実現、継続するための役割をシェーカーの家具は担う一面も持っていたということでもあります。


その家具を生産する工房に関わる作り手の人々は、ある種定められた様式や形式の中で、より良い物を追求し、試行錯誤を続け、今私たちが触れるようなシェーカー様式を確立しました。

彼らの宗教的な思想やモチベーションは、私たちにとって一見、縁遠いようにも感じられますが、シェーカー家具を通して奥深くを考えるとき、多くの学びや気づきを得ることができます。

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