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日本の『e-Sports』が今どうなっているのか-究極のレッドオーシャンで勝機を探す

初めまして、株式会社イイトリ代表取締役の相間です。

我々イイトリは2020/7からe-Sports領域で事業を開始している会社です。

今e-Sports業界に参入するということはどういうことなのか、業界は今どういった状況で、これからどう変わっていくのか。自身の経験や、業界の様々な立場の方とお話しさせていただき、その方々から教えて頂いたことを、私なりに飲み込んでまとめさせて頂きました。

まだまだ未熟で発展途上なこの業界、変化のスピードも凄まじく、正直この情報も数か月たったら古いものになるんだろうなと思いながら執筆しておりますが、少しでも誰かのお役に立てれば幸いです。

世界の『e-Sports』の今

e-Sportsは2000年前後から流行し始め、今なお成長を続けている市場です。

競技人口は野球やゴルフを超え、テニスに並ぶ1億人にまで到達しました。世界的な大会も増え、その賞金やスポンサードで生計を立てるプロゲーマーも増えてきました。

それに付随してe-Sports関連ビジネスも増え、ゲーム制作だけではなく、大会運営、プロチーム経営、施設の運営など、ビジネスモデルは複雑に増え続けています。

世界の市場規模は2019年に1200億円を超え、さらに数年以内には2000億円を超えると考えられております。

その成長を見越して新規参入する企業も多く、ゲーム関連企業以外からも市場への参入が後を絶ちません。(中にはミュージシャンが作ったチームもあったとか)

未熟で未来ある市場だからこそ、さらなるビジネスチャンスを求めて、多くの人と資本が集まってきているのです。


日本の『e-Sports』の今

続いて日本の市場についてです。

日本は世界に大きく遅れ、2018年頃から爆発的にe-Sportsという概念が広まりました。

原因となったのはアジアオリンピック。同大会にてエキシビジョンマッチにe-Sportsが採択され、また次回開催の正式種目となることが決まり、日本中にその存在が知れ渡りました。

市場規模もこの年から13倍に膨れ上がり、50億円規模にまで成長しました。その後も年に120%近い成長を続けており、2023年には150億円規模にまで成長すると言われています。既に大小様々な企業が業界に参入して、市場の成長を加速させています。

図5

と、ここまでであれば、おお凄い!ぜひe-Sportsで事業をやろう!となる人も多いと思います。実際、国内でe-Sportsに参入しようとする企業は大変多く、かく言う私もその一人なわけです。

しかし、実態はそんなに甘くはありません。ここからは、そのことについて触れていきます。


日本市場の現実

今の日本のe-Sports市場を一言で言うなら、究極のレッドオーシャンです。

未熟な市場に対して、資本力のある大手企業がこれでもかというほど投資を繰り返し、現状では利益が出ないのに強豪がひしめいている、かなり異質な市場が出来上がっているのです。

原因は様々ありますが、一つ大きなものを挙げるとすれば、前述した世界市場からの遅れでしょう。

世界から10年単位で遅れた結果、日本の企業は市場参入前から2つの情報を得ることが出来るようになりました。

1つが市場のポテンシャルです。

世界的な流行を見れば、その市場が秘めているポテンシャルの高さは一目瞭然です。何年かかるかは別問題として、今後間違いなく日本のe-Sports市場にもさらなる流行が訪れるでしょう。

もう1つの情報が成功するビジネスモデルです。

日本ではまだまだ未熟な市場も、世界的には20年近い歴史があるe-Sports。多くのビジネスモデルが生まれては、成功、失敗を繰り返してきました。日本はその背中を見ながら、成功したものだけを模倣すればいいのです。

つまり日本企業は、これから成長することがほぼ確実な市場に、どんなビジネスモデルが成功するのか、前例を見た状態で参戦できるのです。

これらの結果として、資本力のある大手企業が、成功する可能性が高い事業に対して、毎年何億という赤字を出しながら、それでも投資を続けるような市場が出来上がりました。現時点で考えつくようなビジネスモデルは軒並み世に出ているか、世界で失敗済みのもの。資本金の少ないベンチャー企業はもちろん、数千万円規模での事業展開でさえ、生き残っていくにはあまりにも難しい市場となったのです。


『e-Sports』市場にこれから参入する方へ

ここから先は、そんなe-Sports市場にこれから参入したいと思っている方に向けた内容です。

もしこれを読んでいる方が十分な資金を持っているのであれば、他国の成功例を倣い、これから流行するであろうビジネスモデルを探し、それに最大限の投資をすればいいでしょう。

ビジネスモデル自体は、世界の市場を探せばいくらでも転がっています。資金力があるのであれば、それの模倣で十分にリターンを見込めるでしょう。大会運営事業でも、プラットフォーム運営でも、e-Sportsといえばこれ!と言えるものがない現状は、かなりのチャンスなのではないでしょうか?

問題なのは十分な資金がない方々。小さなスタートアップや、少額での事業立ち上げを命じられた方。

一番は参入しないことです。そうすれば赤字も出ません(笑)

まぁ、こんな記事読む方がそんな情報を求めていないのは百も承知なわけですが、それでもやはり強いこだわりがないのであれば、今からの参入は正直お勧めできません。

そう言われても諦めきれない、私と同じような強いこだわりのある方向けに、私がこの市場に見出している勝ち筋を少しだけお話しします。

その勝ち筋が、日本のゲーム市場の独自性です。

実は日本のe-Sports市場は、世界とは大きく違う部分がいくつかあります。その結果(?)多くの企業が参入しているにも関わらず、日本の市場は進むべき方向も定まっていない、あやふやな状態が続いています。

私はこの独自性が日本のe-Sports業界を、世界とは全く異なる形で発展させるのではないかと考えています。またそうなれば、他国と同様の発展を前提としているビジネスモデルではなく、日本独自の形態に合わせたビジネスモデルが必要になるとも考えており、私はここに勝機があるのではないかと考えています。

その日本が抱える独自性のうち、個人的に特に面白いと思っているのがゲーム市場の性質の違いです。

実は日本は様々な要因から、ゲーム市場の性質がe-Sports強豪諸国とはかなり異なります。下の図はe-Sports主要3か国と日本の、ハードごとのゲーム市場の比較です。(2018年のデータ)

図4

これを見るとわかるように、日本は諸列強と比較してPCゲームの市場が非常に弱く、現状のPC主体のe-Sportsでは大きな遅れを取っています。

しかしながらモバイルの市場では、実は諸列強と比較しても一切負けていないのです。

もちろん、今のe-SportsはそのほとんどをPCで行っているため、いくらモバイルで負けていないとしてもあまり意味はありません。

しかし、もし世界のe-Sportsの中心がモバイルになったらどうでしょう?
もしくは言い方を変えて、モバイルとPCに性能差がなくなり、同じレベルでゲームが出来るようになったらどうでしょう?

そうなればPC市場での遅れは意味を持たなくなり、日本のe-Sports市場は世界と同水準にまで追いつけるかもしれません。

もちろん、もっと様々な要因が絡み合っているため、そんな単純な理屈では語れませんが…

とにかく日本はその市場の偏りから、世界的なe-Sportsの発展とは全く異なる道を進むのではないか、と私は考え、ここにわずかな勝ち筋を見出しているのです。


まとめ

もっと多くのことを語りたいのですが、長くなってきてしまっているので今回はこのあたりで締めさせていただきます。

日本のe-Sports市場は、世界に比べて大きく遅れ、結果として国内の市場は猛者が赤字覚悟で挑む、究極のレッドオーシャンとなりました。

私はそんな市場で起業します。

もちろん、勝ち筋が全くないと思っていれば起業なんてしません。今回触れたこと以外にも、まだまだ勝ち筋は残っています。

とはいえ、強敵があふれている市場であることには間違いありません。

今後も引き続きnoteにて市場や経営について語っていければと思いますので、レッドオーシャンに挑むスタートアップがどういった道をたどるのか、ご覧いただければ幸いです。


Twitterやってます
https://twitter.com/aima_yujin


参考サイト一覧

・オタク産業通信/【市場比較コラム】日本・アメリカ・中国・韓国における家庭用・モバイル・PCゲームの市場比較
・Biz Arts/データで見るeSports / eスポーツ業界・市場動向レポート(日本・海外)
・PR TIMES/2018年日本eスポーツ市場規模は48.3億円と推定 ~Gzブレイン発表~
KADOKAWA Game Linkage

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