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講演、ワークショップ(1回目)西予市

西予市宇和文化会館 2023年10月11日(水)


講演1 「文化から観光を考える」
吉本光宏氏(合同会社文化コモンズ研究所 代表・研究統括)

最初に、「文化観光推進法」の目的が紹介されました。この法律では、経済的な恩恵を文化に循環させ、文化への理解を深めるための観光が定義されています。また、芸術祭について触れられました。芸術祭は急速に増加しており、里山型と都市型に分けられます。里山型の代表的な芸術祭としては、「瀬戸内国際芸術祭」が挙げられ、吉本さんが視察した際の写真を交えて紹介されました。この芸術祭は、島の人々が新しい活動を始め、移住者が増加する中で地域の復興が実現しています。国内外から多くの観光客が直島などの島を訪れるようになっています。
「地域のありのままの文化を観光資源に」というテーマでは、盛岡のようなまちなみで、現地の文化や人々と交流することが旅行の目的になっていることが強調されました。山梨県の小菅村も注目されており、空き家をホテルに改装し、美しいウェブサイトで地域の魅力を紹介しています。この取り組みにより、直接小菅村に向かう観光客が増加しています。
かつては観光資源の開発が観光客を引き寄せる手段でしたが、現代アートが里山観光の触媒となり、地域の文化や暮らしを訪れる観光客に魅力的に伝える役割を果たしています。地域文化の観光化とまちづくり・地域活性化が共存しているのが現代の観光の特徴です。


報告ビデオ「愛媛県の文化芸術活動状況とこれからについて」
愛媛県 文化振興課

県民総合文化祭は、愛媛県内の文化芸術団体が一堂に集うアマチュア文化の祭典です。愛媛県文化振興課はその魅力や文化芸術の豊かさを、動画を通じて伝えてくださいました。
この祭典では、愛媛県で文化芸術活動を続ける意義を深く考えさせられる機会でもあり、地域の文化や芸術の振興に対する新たな視点を持つことができます。愛媛県の文化芸術がさらに躍進するために、県民総合文化祭はますます重要であると感じました。


講演2「西予市の各地域への政策とこれからについて」
清家昌弘氏(西予市政策企画部地域づくり活動センター推進室室長)

西予市の地域づくりの試みについて過去の事例をもとにお話しいただきました。市町村合併に伴い、広域化した市域では一律的な行政サービスでは地域の課題に十分に対応できなくなった状況が生まれました。このため、地域の課題に焦点を当てた住民自治として、小規模多機能自治の取り組みを進め、地域コミュニティが積極的に地域づくりに参加する体制を整備してきました。市内には27の地域づくり組織を設立し、地域ごとに使途を決定できる交付金制度を導入し、市の職員からなる地域担当職員を配置して各地域の自主事業をサポートしました。また、地域おこし協力隊の隊員数が増えたことにより関係人口も増えることとなりました。そして、生涯学習の拠点であった公民館を地域づくりの中心に転換し、市民との協働で地域づくりを進める地域づくり活動センターが令和5年4月に設立されました。持続可能な地域づくりを目指して市民と行政の協働による地域づくりへの挑戦が始まったところです。
文化芸術と地域を結びつける具体的な事例として、西予市では「うた」が挙げられます。地元出身のシンガーによって制作された市歌「いつの日も」や、豪雨災害の被災児童が支援に対する感謝や復興へ向かう前向きな気持ちを歌詞にして制作した「のむらのうた」、子どもたちや地域住民が参加したワークショップを通じて制作された「大和田のうた」、廃校になった小学校の校歌を再評価し、地域を見つめ直すきっかけとして校歌のミニコンサートなどを企画した「校歌の効果で愛する地域を残してこうか」など、様々な音楽プロジェクトが実施されております。これらの活動を通じて、文化芸術が地域住民のつながりを深め、地域づくりに寄与していることがわかりました。


講演3「文化施設の役割と取り組み」
草加叔也氏(岡山芸術創造劇場ハレノワ劇場長)

文化芸術基本法の前文「文化芸術は、人々の創造性をはぐくみ、その表現力を高めるとともに、人々の心のつながりや相互に理解し尊重し合う土壌を提供し、多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成するものであり、世界の平和に寄与するものである。」等をご紹介いただき、文化芸術基本理念からは自主性の尊重、創造性と職能、権利と人権、文化芸術の発展、多様性の尊重、地域文化の発展、国際交流の推進、教育との連携、国民の意見の反映、文化芸術の活用など興味深いキーワードが浮かび上がりました。
文化芸術の分類としては、一般的に知られる芸術だけではなく、生活文化など、街並み、環境、風景、営み、祭り、自然も文化芸術としてとらえることもできるそうです。
また、具体的な事例として那覇市で開催されているりっかりっかフェスティバル、石川県七尾市にある能登演劇堂での無名塾によるクリエイション、鳥取の鳥の劇場、大分県竹田市久住町にある野外劇場を拠点にする和太鼓演奏グループDORAM TAO、富山県利賀村の利賀演劇フェスティバル、北海道東川町の写真甲子園、倉敷特別美観地区、富山県富山市八尾地区の風の盆をご紹介いただき、地域と文化芸術をご紹介いただきました。


講演4「災害からの復興と文化芸術活動による人のつながり」
大澤寅雄氏(合同会社文化コモンズ研究所 代表・主任研究員)

「復興と文化芸術活動による人のつながり」に焦点を当て、「共生の可能性を探る」として、最初に講師自信の農的な生活と野生動物の関係を通じてその重要性について論じました。次に、夏祭りと避難訓練の結びつきに着目し、祭りと防災を組み合わせることで、地域住民が夏祭りに参加することで顔見知りが増え、住民参加が促される相乗効果が防災に繋がる可能性を強調しました。そして、「自治力」が文化芸術と防災の共通項であるとの問いかけもありました。
その後、劇場での例として「避難訓練コンサート」の取り組みを紹介。コンサート中に避難訓練が行われる斬新な発想に触れました。
本題では、「文化芸術が防災に影響や効果があるか」に焦点を当て、「イザ!カエルキャラバン!」プログラムを紹介。このプログラムでは、楽しみながら消火や救出の技術を学び、おもちゃの交換と防災訓練を組み合わせた独創的なアプローチが成功を収め、国内外で展開されていることを強調しました。


ワークショップ
土谷 享氏(美術家ユニット KOSUGE1-16)、森川好美氏(デザイナー/エンジニア)

ワークショップでは、地域の課題とそれを生かすイベントに焦点を当て、グループワークが行われました。議論の中で挙がったキーワードには、防災士、重要伝統建造物群、技能実習生、日本農業遺産、養殖産業などがありました。最終アウトカムとしては、「優しい心を持つ」「リーダーが増える」などが挙がり、その中間アウトカムとしては、コミュニティイベントの増加、防災意識の向上、積極性の向上などが挙がりました。
具体的な活動としては、防災士のデモンストレーション、非常食試食体験や消防メシ、防災訓練、歴史ウォーキング、民俗芸能大会などが提案されました。さらに、グループワークでは、地域づくりの拠点施設として「地域づくり活動センター」が市内27か所に新たに設立されたことを踏まえ、こども防災士の育成方法や特産品の活用、新たにできた拠点を有効活用する方法についても議論されました。

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