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講演、ワークショップ(1回目)新居浜市

新居浜市市民文化センター 2023年10月12日(木)


講演1「小さなまちでのユニークな文化実践」
大澤寅雄氏(合同会社文化コモンズ研究所 代表・主任研究員)

文化芸術振興において、町の大きさだけが文化度を測る材料ではありません。日本国内では、地域ごとに独自の文化政策が制定されており、そのユニークな取り組みが地域特有の文化を形成しています。例えば、北海道東川町は「写真の町宣言」を掲げ、写真を中心に地域を形成する政策を展開しています。写真甲子園などのイベントを通じて、全国から多くの人々を呼び寄せています。行政と市民が共有する、「写りの良いまち」を目指す姿勢が注目を集めています。
三重県伊賀市では「伊賀市文化振興条例」が、文化芸術が社会的な価値を引き出すことを掲げています。市民と市が協力し、文化芸術のコミュニケーション力や表現力、共感力、創造力が社会参加を促進し、課題解決に寄与するための施策を講じるという内容です。例えば、「クラシックのいろは」プログラムを通じて、初心者でも楽しめるクラシック音楽に親しむ取り組みが行われています。
大阪市・能勢町では、「浄瑠璃の里文化振興条例」が浄瑠璃を地域文化として位置づけ、町民が積極的に関与しています。伝統に縛られない柔軟なアプローチで、後継者養成や「浄瑠璃シアター」の開設などが行われ、2007年にはサントリー地域文化賞を受賞しました。
香川県・小豆島町は瀬戸内国際芸術祭の拠点であり、多様なアーティストが滞在し、制作、展示、公演を行う地域です。「小豆島町芸術文化のまちづくり条例」では、町民が芸術家を歓迎し、地域資源を活用した芸術活動に参画することを掲げています。これは、独自の記述であり、小豆島ならではのアプローチを示しています。


報告ビデオ「愛媛県の文化芸術活動状況とこれからについて」
愛媛県 文化振興課

県民総合文化祭は、愛媛県内の文化芸術団体が一堂に集うアマチュア文化の祭典です。愛媛県文化振興課はその魅力や文化芸術の豊かさを、動画を通じて伝えてくださいました。
この祭典では、愛媛県で文化芸術活動を続ける意義を深く考えさせられる機会でもあり、地域の文化や芸術の振興に対する新たな視点を持つことができます。愛媛県の文化芸術がさらに躍進するために、県民総合文化祭はますます重要であると感じました。


講演2「新居浜市の文化芸術活動状況とこれからについて」
高橋 綾氏(新居浜市企画部文化スポーツ局文化振興課文化まちづくり係長)

平成31年に、新居浜市は文化芸術基本法に基づき、10年間の新居浜市文化芸術振興計画を策定しました。2028年までの予定で、現在が計画の5年目に当たります。
この振興計画には、新居浜市の文化芸術の現状と課題が詳細に記載されています。文化芸術団体の担い手として、各ジャンルの文化団体が協会に加盟し、春の市民文化祭、美術展覧会、秋の芸術祭などを通じて市民に文化芸術の魅力を提供しています。しかし、団体数の減少、高齢化した会員、新規参加者の不足、練習場所や活動資金の不足などが課題となり、さらにはコロナウィルスの影響により活動が制約されています。
文化芸術関連施設についても、10年間で新たなミュージアムや文化施設を整備したものの、昭和37年開館の市民文化センターの老朽化が大きな問題です。
これらの課題に基づき、「文化芸術の香りを未来に伝えるまちづくり」を基本理念に掲げ、基本目標4つを達成するため、子ども対象の文化芸術事業や学校・団体との連携事業、才能の伸ばし支援など様々な取り組みが展開されています。文化祭や芸術祭、展覧会、演奏会などの実施、情報発信強化、市民文化センターの再整備基本構想策定、育成プログラムの検討など、地域全体の文化芸術活動を支える計画が進行中です。
市民文化センター整備方針では、ホールを中心にした複合施設として、多様な世代が交流できる場所となるよう計画されています。バリアフリー、ユニバーサルデザイン、環境への配慮も重視し、施設の管理・運営も貸館利用から市民と共に事業を企画・開催・発信する形態に転換して、市民に身近な存在となるよう進められます。


講演3「文化施設の役割と取り組み」
草加叔也氏(岡山芸術創造劇場ハレノワ劇場長)

文化芸術基本法の前文「文化芸術は、人々の創造性をはぐくみ、その表現力を高めるとともに、人々の心のつながりや相互に理解し尊重し合う土壌を提供し、多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成するものであり、世界の平和に寄与するものである。」等をご紹介いただき、文化芸術基本理念からは自主性の尊重、創造性と職能、権利と人権、文化芸術の発展、多様性の尊重、地域文化の発展、国際交流の推進、教育との連携、国民の意見の反映、文化芸術の活用など興味深いキーワードが浮かび上がりました。
文化芸術の分類としては、一般的に知られる芸術だけではなく、生活文化など、街並み、環境、風景、営み、祭り、自然も文化芸術としてとらえることもできるそうです。
また、具体的な事例として那覇市で開催されているりっかりっかフェスティバル、石川県七尾市にある能登演劇堂での無名塾によるクリエイション、鳥取の鳥の劇場、大分県竹田市久住町にある野外劇場を拠点にする和太鼓演奏グループDORAM TAO、富山県利賀村の利賀演劇フェスティバル、北海道東川町の写真甲子園、倉敷特別美観地区、富山県富山市八尾地区の風の盆をご紹介いただき、地域と文化芸術をご紹介いただきました。


講演4「地域と新しい文化施設の関係と役割」
草加叔也氏(岡山芸術創造劇場ハレノワ劇場長)

2023年にオープンした岡山芸術創造劇場「ハレノワ」。2つの公立ホールを統合して作られ、建設には3年の歳月がかかりました。まずは岡山の地図を見ながら、劇場と駅、市役所、他の文化施設や商店街、県庁の位置関係が解説されました。
岡山芸術ミッションでは、「したしむ」「はぐくむ」「ささえる」「つなぐ」のテーマが掲げられましたが、「つくる」が足りないと考え、新しい劇場での「文化芸術の創造」を強調しました。検討会や市民説明会、パブリックコメント、シンポジウムを通じて市民の意見を取り入れながら、2019年から開設準備室が設けられ、ワークショップや演劇身体ワークショップが展開されました。
ハレノワの事業展開イメージは、魅せる、集う、つくるを結びつけ、劇場を通じて教育や観光、国際交流が交差し、まちの活性化に寄与することが目指されています。
劇場には公演がない時でも入れるオープンロビーが設けられ、大中小の劇場だけでなく、アートサロンや制作工房も備えられました。最後に、地域の文化芸術拠点の役割は、文化芸術を通した交流促進やコミュニティ醸成、成果を発信することが強調され、ハレノワのミッションとして、舞台芸術の創造と発信、地域の活性化、岡山という都市の価値向上が挙げられました。


ワークショップ
土谷 享氏(美術家ユニット KOSUGE1-16)、森川好美氏(デザイナー/エンジニア)

ワークショップでは、福祉、建築やランドスケープデザイン、舞台芸術などを専門にした様々な分野の参加者が集まり、地域資源や地域課題に関するアイデアを出し合いました。その中で、最終アウトカムとして「インクルーシブな社会」、中間アウトカムに「障がいへの理解につながる」、直接アウトカムは「劇場をつくる」が浮かび上がりました。そのほかにも、企画するイベントを通じて「ルールを見直すきっかけ」や「他の人の制作物にも関心を持てる」や「心が豊かになる」、「家庭ではできないことをしたい」など、書ききれないくらいたくさんの意見が生まれました。最終的には、クリスマスイベントとして会議室を劇場にしようというアイデアを話し合いました。次回のワークショップではさらに内容を深めて話し合います。

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