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第6講 まるで理科の授業!プリント・加工を学ぶ

こんにちは。遠州産地の学校事務局です。
遠州産地の学校第6講は、主に天然繊維のプリント及び無地染め加工を手掛け、120年以上の歴史・伝統を守りながら、新しいことにも積極的に挑戦する日本形染株式会社にて、プリント・加工について学びました。
レポートを担当したのは東京でテキスタイルデザイナーとして働く坂本さん。今回のご縁が実際のお仕事にもつながったとのこと。今後が楽しみです。
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遠州産地の学校2期、第6講!
今回は日本形染㈱に伺いました。
日本形染㈱は、1900年(明治33年)に前身となる「木綿中形㈱」が創業。円筒型糊付機による捺染を企業化するなど、日本の捺染業界の草分け的存在の会社です。
現在はシルクスクリーン、ロータリースクリーン、インクジェットプリンターを保有し、綿などの天然素材を中心に反応染料を使用した高付加価値プリントや無地染加工を行っています。国内外に手芸やパッチワークなどの資材向けや衣料品向けの生地を製造しています。

講義の前半は技術開発部の坪井課長の座学からスタートです。会社の沿革や扱っている機械、製品の紹介のほかに色のお話も。
色の見え方は可視光線の範囲内で光に大きく影響しているとのことで、同じ色が太陽光と蛍光灯の下ではまるで違う色に見えることがあります。知らない間に日常の色が光にコントロールされているのだなと気付かされました。

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難しいことをかみ砕いて説明くださる坪井課長の色やプリントや染料のお話は、いろいろな視点からアプローチがあるので面白く、色の理解を深めるのにとてもためになる話でした。

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まるで理科の実験のような染料の固着についてのお話も。生地と染料の相性は知識として必要不可欠です。

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先程のお話を先に頭に入れ、いよいよ工場見学です。


まず生地にプリントをする前に「整理加工(精練・せいれん)」をします。これは生機(きばた)の生地の糊を落とす工程で、生地にプリントがうまく乗るようにするための作業です。この工程によりプリント前のP下(晒)が出来上がり、ここで初めてプリントの工程に移ります。

工場内に入るとたくさんのプリント生地があり、さまざまな柄や素材の生地を見ているだけでもワクワクしました。
量産に入る前の試刷の工程も見せていただいたのですが、二人一組阿吽の呼吸でとても丁寧…!1つの柄を作るのに10枚の版を使うデザインでしたが、版の入れ替えやプリント作業など、どの瞬間も無がありませんでした。
デザイナーとして仕事をしていると、試刷で上がってくるプリント生地の色の微調整って本当に大変で、時には賭けだったりする瞬間もあります。そのコントロールをしてくれるのがこの工程で、とても大事なものになります。試刷をもとに何回かやり取りして、何反にもなる生地の色を決めていく、走り出しでありベースになる段階です。

その他のラインも丁寧に見せていただきました。
シルクスクリーンプリントは、色ごとに版ズレすることなくぴったり色が重なっていく光景に感動しました。なんとこの調整も人の手で行なっているというのが凄いところ。

ロータリープリントは、台を平らではなく斜めにすることで人が作業しやすいようになっていました。とても賢い… また、それにより染料がうまく循環するので色ムラやプリント圧のムラがなくなるそうです。

日本形染㈱にはロータリープリント、シルクスクリーンプリントの他にインクジェットプリントがあります。
今回は自分のデザインしたプリント図案を訪問時に実際にプリントしてくださる…!というとてもいい企画に参加。ハーフ送りで少し個性のある花柄を作製しました。

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インクジェットは写真と同等のクオリティが再現できるので、データのイメージ通りに輪郭がはっきりとプリントされていくのを見ると綺麗で感動しました。何より仕事でロータリープリントを多く扱っている私にはとても新鮮なものでした。まだまだ機械が高く、なかなか広まっていかないのが国内での実情らしいのですが、とても未来のあるプリント方法だと仰っていました。

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ほかの受講生のプリント。色の濃淡や写真ならではのボケ感がうまく反映されています。

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こちらは日本形染㈱のオリジナル。このようにぼかしや水彩タッチのプリントもインクジェットならでは。表現の幅が広がります。
インクジェットプリントの機械の普及や生地単価などのハードルはあるかもしれませんが、そこをぜひ突破していただいて自由で面白いプリントが増えればいいなと思いました。

工場内は熱を使うこともあり、とにかく暑く、見ているだけでも体力を奪われていきます。そんな中、プリントのための環境を優先して丁寧に工程をこなしていく技術者の方に頭が下がります。

最後に見学したのは検反。検反は流れていく生地を人の目で確認して欠点を探します。その生地のスピードが私にとっては早く感じられ、かなり集中力が必要な工程だと思いました。生地欠点は一反につき10点以内、もしくはそれ以下の場合もあるそうでかなりシビアな工程でした。またそれと同時に高品質の担保に繋がる大事な現場であると実感しました。

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まだまだ経験な必要な私にとって、本当に勉強させていただいた素晴らしい現場でした。
最後になりましたが日本形染㈱の坪井課長はじめ、工場内の皆様、お忙しい中ご協力頂きましてありがとうございました。


(株)エスビープラニング
レディース布帛テキスタイルデザイナー
坂本


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