見出し画像

【読書】 マルクス・アウレーリウス 『自省録』ーー皇帝のロックな生き方

画像1

昨年、「ブックカバーチャレンジ」という遊びが身近で流行ったことがあります。SNSで指名を受けてお気に入りの本の表紙をみんなに共有したら次の人を指名し、その人は次の次の人を指名し…とチェーンメールっぽい遊びですね。

気心のしれたリアルの友人たちの間だけでやってみたのですが、「こんな本を読んでいるのか!」と盛り上がりました。

これはその時に共有したうちの一冊。「賢帝」と謳われたローマ帝国皇帝マルクス・アウレーリアスが書き残した手記です。

元々読書と瞑想が好きだった皇帝が、忙しい軍務政務の間に書き綴った自己との対話です。著述のためのまとまった時間が取れなかったゆえか断片的なのですが、はっとさせられる鋭い洞察が多く、二千年近くも多くの人の心の糧となってきました。

他人に読まれることを想定していない自己との対話なので、何の衒いもためらいもない。「君」と呼びかけているのは自分のこと。自分に鋭く切り込む姿勢が読む人の心にぐっと迫ります。

ストア派の哲学を好んだ、と言われると何だかしかつめらしい本のように思いますが、次のような箇所を読むと全く違うと思われるでしょう。

ここで生きているとすれば、もうよく慣れていることだ。またよそへ行くとすれば、それは君のお望み通りだ。また死ぬとすれば、君の使命を終えたわけだ。以上のほかに何ものもない。だから勇気を出せ。

なんだか、良寛禅師の「死ぬる時節には死ぬがよく候」という言葉と響き合うものがある。皇帝、ロックだなと思ったものです。

次の箇所も好きですね。

何かをするときいやいやながらするな、利己的な気持ちからするな、無思慮にするな、心にさからってするな。君の考えを美辞麗句で飾り立てるな。余計な言葉やおこないをするな。

非常に迫力がありつつ、でも勇気が湧いてくる一節。これも好き。

あたかも一万年も生きるかのように行動するな。不可避のものが君の上にかかっている。生きているうちに、許されている間によき人たれ。

岩波文庫のものは精神科医で『こころの旅』『生きがいについて』などで知られる神谷美恵子の翻訳です。非常に読みやすく、見返しの案内文にもある通り、「清冽」という言葉がふさわしい名文です。

忙しい時はなかなかまとまった本が読めませんが、これなら読める。自分よりももっともっと厳しい人生を生きた皇帝の言葉に、いつも励まされています。


お読みいただきありがとうございました。スキ、フォロー、サポート、心から感謝いたします。コメントも残していただけると嬉しいです♪