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通訳訓練を始める英語力の目安

こちらのブログ記事で書いたように、通訳者という職業は、今、岐路に立たされています。

でも、通訳訓練のクラスに入学を希望する方が引きも切らないことを考えると、通訳者という職業、あるいは通訳という活動は独特の魅力があるのでしょう。

私もその魅力に惹かれここまで歩んできた一人です。

通訳者という職業を目指すのであれ、語学を学ぶ一環としてであれ、通訳訓練は語学力向上に大いに役立つと思います。

さて、それではいつ頃から通訳訓練を始めたらよいか。

シャドーイング、リプロダクションなどを取り入れるのはいつの段階からでもできるでしょう。また、昨今では、サイトラ(サイト・トランスレーション)を大学受験の勉強などに取り入れる動きもあります。

このように、通訳スキルを身につけるための基礎訓練はどの学習段階においても取り入れていくことが可能です。さて、本格的に逐次通訳ができるようになるための訓練を始めるには、どれくらいの語学力が必要でしょうか。

経験則ではありますが、私はこれ位の英語力があったほうがよいと思っています。

英検準一級の一次試験を当てずっぽうではなくなぜ自分がその答えを選んだのか説明できるレベルで、コンスタントに95%以上正解できること(誤りが全体を通して1 〜2問のレベルです)
Voice of America Learning Englishの音声素材なら一度で理解でき、PBS Newshourの音声・映像素材は一度では理解できないまでも、スクリプトを読めば大半を理解できること。
・スピーキング能力については、英検準一級のスピーキングテストNo.4(社会性のある内容)について一定の時間話せること、NHK語学講座でB1レベル(ラジオ英会話)以上の題材についていけ、テキストの英語を聞いたら即日本語を言うことができ、日本語を聞いたら即英語を言うことができること。

なぜ英検準一級かといいますと、一級では語彙が特殊なので除外しました。また、どちらかというとTOEICはビジネス向け、TOEFLは学術向けですので、どちらにも対応できる、よく練られた問題が多い英検を目安にしています。

リスニングについては、通訳訓練を初めて実施するクラスに合わせています。そのクラスでは他の素材も使いますが、PBS Newshourでリスニングとシャドーイングの練習をすることが多いですね。

NHKのラジオ講座は実は大変優れもので、ビジネス英語レベルの講座をしっかり勉強すれば、ある程度の通訳にも対応できるようになります。実際、私も、杉田敏先生が担当していらした「やさしいビジネス英語/実践ビジネス英語」を長年聞いており、社内通訳者だった時は、ラジオ講座の完全暗記と新聞記事のサイトラで訓練に励みました。

かなり高度な英語力が必要とされていることがお分かりいただけるかと思います。でも、これ位英語の実力を上げてから本格的な通訳訓練を始めたほうが、通訳訓練の成果が出やすいと思います。

もう一つ付け加えると。通訳訓練はどうしても母語を介しますので、「英語を英語のままで理解し駆使できればよい」という方は、通訳訓練を英語力強化の一環として実施しても、ある程度のところで見切りをつけてもよいかと思います。また逆に、「通訳者になりたい、通訳をやってみたい」という方は、母語と外国語との間で苦労することを厭わない覚悟が必要になるかと思います。



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