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飯間浩明『小説の言葉尻をとらえてみた』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2019.04.20 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

『三省堂国語辞典』編集委員の飯間浩明さんが、『小説宝石』に連載していた「辞書屋はこうして本を読む」を加筆修正して新書化した一冊です。取り上げられるのは、1960年以降に生まれた人気作家たちの2004年以降に発表された15作品です。(桐島、部活やめるってよ・オレたちバブル入行組・横道世之介・マチネの終わりに・八日目の蟬などなど…)

小説の言葉に注目しながら、それぞれの作品の内容やテーマなどを詳らかにしていく本なのかな、と思って手にとってみたのですが、読んでみると小説を読み深めていくための本ではなくて、国語辞書編集者ならではの言葉見つけ方、小説を読むときのアンテナの立て方を見せていくという趣向の本でした。小説を楽しむための本ではなくて、言葉への感覚を鋭くして「言葉を発見する」楽しみ方を知るための本と言えそうです。

辞書にまだ載っていない言い回しを探す辞書編集者の目線は、一般の読者にとっては新鮮なものです。飯間さんと共に小説言葉を追っていくことによって、こうやって言葉を集めていくのか! こんなふうに拘っていくのか! こうやって辞書は改められていくのか! と素直に驚かされました。普段から、飯間さんのようなアンテナを持つことはなかなか難しいですが、もしかすると、私たち一般読者でも、好きな作家の言い回しに注目して作家の独自性に近づいていくなどの楽しみ方は可能なのではないか、と感じさせられました。

人のことば遣いにケチをつけるためにことば尻を捉えるのは感心しません。でも、ことばの面白さを見つけるために、ことばの端々にこだわってみるのもいいでしょう。

「エピローグ」より