レモンの木が教えてくれたこと
3週間の入院中、友人にお仕事として頼んでいた作業の中の一つに、庭の草木の水やりがあった。予算の都合上、毎日というわけにはいかず、郵便物の確認と併せて週2~3回の頻度で依頼していた。
退院した日、帰宅して真っ先に目が行ったのが、庭の草木たち。
連日の猛暑である程度は覚悟していたものの、多くの植木が茶色く干からびていて、中でもズボラな私が唯一といってもいいくらい、特別扱いで大事に育てていたレモンの木(2年前の誕生日、母がプレゼントしてくれたもの)が無残に落葉して、小さい実が2つ生っていたのも真っ黒になってしまっていた。
ごくわずかに新芽が顔を出していたけれど、このままダメになってしまうのではないかとショックで、私は半泣きになりながら水やりをして、液体肥料を2本挿し込んだ。
自分の分身のように可愛がっていたレモンの木が、まるで私の身体状態とリンクするかのように弱ってしまったのは、もしや私の厄を引き受けてくれたのではないか、とさえ思えてきた。
レモンの木が枯れる原因をググってみると、いくつかの理由の中に水不足が挙げられていた。私が退院してきたからには、何とかこの木を再生させたくて、毎日たっぷり水やりをし、どうか蘇ってほしいと祈りながら、懸命に世話をした。
そこまでしてもダメだったとしたら、私の身代わりになってくれたせいで力尽きたのだと思って諦めるしかないけれど、とにかく自分にできるだけのことはしたかったから。
すると、日を追うごとに少しずつ新しい葉っぱが出てきて、ずいぶんと元気を取り戻してきた。
ここ数日は、アゲハ蝶がやってきては、いくつもの卵を葉っぱの表裏を問わず、たくさん産み付けている。
蝶には申し訳ないけれど、せっかくこうして順調に再生してきてるのに、ここで葉っぱがボロボロになるのは絶対に嫌なので。
私は、数の子の粒のようなクリーム色の卵を見つけるたび、イタチごっこのようにせっせとつまんでは捨てるのが日課になりつつある。
これは何も植物を育てるのに限った話ではなく、種まきはもちろん大事なのだけれど、種まきだけして放置では期待するような花は咲かないし、実も生らない。日々の水やりをはじめとしたお世話がめっちゃ大事。
少しばかりお世話が行き届かない期間があっても、すぐにダメになってしまうわけではないけれど。放置が長期化し、とことん萎れて完全に枯れてしまう前に、こまめな水やりを再開させたら復活できるチャンスはある。
そう教えてくれたレモンの木に感謝。