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30_2ndプロジェクトの活動スケジュール 【山の日本語学校物語】

これは、とある町に開校した「山の日本語学校(仮名)」の物語です。PBL(Project-Based Learning:プロジェクト型学習)を通して、ITエンジニアがどのように言語を学び、専門性を身につけていったのか、また、語学を専門とする日本語学校が、どのような組織として、専門領域や地域社会と結びついていったのか、さらには、そこでの教師の役割などを探究していきます。

下記のマガジンで連載しています。


前回(29回)では、メインの活動をどのようにデザインしたのかについて書きました。活動目標を「2050年の未来予想図を説明する」とし、2050年の未来がどのようなものかがわかるような作品に仕上げることをプロジェクト活動のゴールとしました。

今回は、この活動を3カ月というプロジェクト期間に合わせて、スケジューリングしていく作業について書きたいと思います。

プロジェクト全体のデザイン

まず、2ndプロジェクト全体のデザインについて説明します。

メインの活動は「未来予想図を創る」ですが、2ndプロジェクトでは、キャリア教育のための活動も目標としています。さらに、十分な言語活動の場となるように学習環境もデザインしていくことになります。28回で説明したように、キャリアと日本語教育に関しては以下の課題を設定していました。

  • キャリア教育:どのようなITエンジニアになりたいかを言語化する

  • 日本語教育:ITエンジニアの話を聞いて正確に理解する

これらをメイン活動に組み込んでいくのですが、結構な力技です。言葉で説明するのはなかなか難しいのですが、以下のようにイメージしました。このイメージをもとにプロジェクト全体のデザインについて説明します。

いちばん上の「活動」は、29回で説明したように、このプロジェクトのメインの活動「未来予想図づくり」になります。

キャリア教育では、「ITエンジニアとしてのキャリアを考える」ために、第一線で活躍するITエンジニアの話を聞くことになっていました。運営側からは、なるべく多くのエンジニアに会わせたいという提案がありましたが、エンジニアの話をじっくりと聞き、内省を促しながら、個々の学生の中に落とし込んでいくためには、人数をしぼった方がいいと判断し、講師を2名に限定しました。

この「エンジニアの話を聴く」という活動を「エンジニアとのセッション」と呼ぶことにしました。「講義」のような名前にしてしまうと、「教えてもらう」という意識が生まれるのではないかと思ったからです。また、「講師」という名前もやめ、「エンジニア」とか「ゲストスピーカー」という表現を使うことにしました。

ゲストスピーカーの人選や依頼は、運営側がしてくれました。ゲストスピーカーには、メイン活動の内容を説明し、ITエンジニアのキャリアを考えるきっかけとしたいという活動の目的を共有しましたが、私はどんなエンジニアに来てもらえるのか、よくわからない状況で活動をデザインしなければなりませんでした。2期目がスタートしてからも、運営側とやりとりを続け、スケジュール調整をしながら活動をデザインしていくことになりました。

日本語教育については、エンジニアの話を正確に理解するために、「インプット→聴く→理解」という流れで言語活動をデザインしました。

これらの全ての活動が相互に影響し、「未来予想図」プロジェクトを推し進める原動力となるよう全体をデザインしました。

ステージの設定

プロジェクト全体のデザインができた段階で、これを3カ月の期間に落とし込んでいきます。スケジュールを考えるとき私は、全期間を3〜4段階くらいのステージに分割して考えることをします。一気に目標まで進めるのではなく、3〜4つくらいに区切って、進行具合のチェックポイントを設けるようにします。各段階で、振り返りの機会を設けておけば、途中で不具合が生じても、軌道修正がしやすくなるからです。

今回は、活動を大まかに3つのステージに区切って考えることにしました。以下のような感じです。

  • 第1ステージ:「未来予想図」のイメージ作り

  • 第2ステージ:ITエンジニアとのセッション

  • 第3ステージ:「未来予想図」の完成

各ステージごとにメインの活動を設け、小さいプロジェクトを3回回すイメージで設計しました。このようにすると、それぞれの活動に区切りがつけやすくなります。プロジェクトにスケジュール変更はつきものですが、各ステージ内で変更を収めるようにすれば、プロジェクト全体のスケジュールに大きな影響を与えることなく調整できます。

実際、2期目が始まる段階では、どんなエンジニアがきてくれるのか全く読めなかったため、上記のように3つに分けてスケジュールを提示しました。しかし、2期目が始まってから、講師を2名に限定することにしたため、最終的に4つのステージに分けて、スケジュールを組み直しました。実際にプロジェクトを回しながら、調整を続けなければならないというギリギリの状況で、かなり柔軟性が求められました。

活動スケジュール

2期目が始まるときに、担当教師間で共有したスケジュールは、前述したように、全体を3つに区切ったものでした。しかし、スケジュール調整をしながら進めていたため、各ステージが始まる直前にスケジュールを変更するということもありました。また、2期目は、地元の小学校や複数の大学との交流の機会もいただき、たびたび微調整が必要でした。

スケジュールは、Googleサイトを使用して担当教師間で共有していました。また、同様に、授業記録もGoogleサイトで共有していたため、その日の進み具合を見て、対応を考えました。

ここでは、各ステージが始まる直前に提示したスケジュールから、プロジェクトに関係ある部分を抜き出したものを以下に掲載します。

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