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JLPTとは何か

先日、任意で日本語能力試験(JLPT)の模擬試験を行いました。
その結果を見ながら、思うところがあったので、今日は、日本語能力試験について書いてみたいと思います。

日本語能力試験の結果が求められる場面

日本語能力試験は、日本語を学んでいる人の日本語レベルを表す指針としてよく使われます。レベルは、N5からN1まであります。日本で勉強したり、働きたいと思った場合、この日本語能力試験を基準に日本語能力が説明されます。
改めて調べてみると、公的機関、政府の指針としても謳われているのがわかります。

まず、日本語学校(日本語教育機関)へ入学したいと考えている人には、N5レベルの日本語力が求められます。
参考:法務省 入国管理局「日本語教育機関への入学をお考えのみなさまへ」
日本語教育機関へ入学するための日本語能力について

日本の高等教育機関へ進学するときには、N1〜N2レベルの日本語力が求められます。
ただし、大学受験には「日本留学試験」の成績を利用する大学が多いので、日本語能力試験が必須ではなくなりました。また、大学によって基準は様々です。
それでも、N1〜N2レベルが大学への進学の条件として認識されています。
参考:JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)日本留学ポータルサイト Gateway to Study in Japanより
日本で勉強するためには、絶対に日本語ができなければいませんか

専門学校へ入学するには、N1かN2レベルが必要です。
参考:JASSO 日本留学ポータルサイトより
専門学校

そして、日本で就職するときは、企業によって、N3〜N1の日本語力が求められることが多いです。これも、条件として明記されていることが多いです。
例:東京外国人雇用サービスセンター主催 外国人留学生就職面接会 参加企業一覧
10月16日(火)参加企業
必要言語の欄には、N1、N2、N3などと明記されています。
  
外国人技能実習制度の介護職に関しては、日本語能力試験のN4、N3が基準とされました。
参考:厚生労働省 技能実習制度 
運用要領

と、こんな感じで、明記されてしまったら、日本語教育に関わる者として、この試験の存在は無視できません。

しかし、ここで、大きな疑問が残ります。
日本語を勉強し始めた人から、大学や大学院へ進学する人、介護職や多様な職種で働く人など、すべて同じ「日本語能力試験」という物差しで、日本語能力を測ることが妥当なのかという疑問です。
(そもそも日本語能力が測れるのかという議論は、ここでは保留しておきます)

日本語能力試験は何を測っているのか

ここで簡単に「日本語能力試験」のレベル感について記載しておきます。
 日本語能力試験を主催してしている独立行政法人国際交流基金と公益財団法人日本国際教育支援協会のWebサイトによると、この試験では「課題遂行のための言語コミュニケーション能力を測る」としています。
日本語能力試験 「4つの特徴」point1

で、「認定の目安」は、以下の通りです。

N1:幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
N2:日常的な場面で使われる日本語の理解に加くわえ、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N4:基本的な日本語を理解することができる
N5:基本的な日本語をある程度理解することができる

とのことです。

「理解する」と「ある程度理解する」との違いは何か。
「基本的な日本語」と「日常的な場面で使われる日本語」との違いは何か。

などなど、ツッコミどころは満載なんですが、この試験、「読む」と「聞く」しか、測ってないんですね。
「N2に合格しているのに全然話せない」などという言葉をよく耳にしますが、当たり前です。
話す力は測ってないから。

で、こんな曖昧なレベル感で、進学とか、就職とか、人の人生において、結構重要な選択が振り分けられてしまうというのが、どうにも腑に落ちません。

実際の日本語運用場面は測れるのか?

山の日本語学校でも、先日、日本語能力試験の模擬試験を行いました。
日本語能力試験の対策の授業は一切行っていないので、一応、期末休み中に、任意ということで受けてもらっています。
全員ではありませんが、何人か受験しました。
1年間、在籍した学生は、全員N4はクリアしました。N2、N3に合格した学生もいます。
N3を受験したけど、合格点に達しなかった学生もいます。

この結果を見ながら、改めてこのレベル感って、どうなんだろうと考えてしまうのです。
当校では、クラスを入学期で編成しており、日本語の習熟度によるクラス分けはしていないので、N2も、N4も関係ないのですが、一緒に活動はできています。
N3には合格しなくても、日本語で書かれた『リーダブルコード』という本を一緒に読んで、議論に参加している学生もいます。授業の様子については下記参照。
不思議な「読解」の授業
先日、地元の小学校でプログラミング教室を行ったときは、小学生に対し、コマンドの使い方を、日本語で丁寧に説明していました。

「課題遂行のための言語コミュニケーション能力」を測るということですが、十分に課題は遂行できているように見えます。

このような現実を見ると、N4レベルの課題遂行能力って何なのだろうかと思ってしまうのです。
N1レベルだったら、もっと完璧に課題が遂行できるのでしょうか。
「読む」と「聞く」という言語活動だけで、課題を遂行するってどんな場面なんでしょう。
ちなみに、私は、『リーダブルコード』を読んでも理解できません(笑)

考えれば考えるほど、なぜ、こんなに日本語能力試験が重要視されるのか、よくわからなくなってきます。

で、結論

と、結論をまとめ、翌朝、NOTEにアップロードしようと思っていたら、こんな報道が…
で、慌てて結論を書き換え(笑)

新たな日本語能力テスト 政府、外国人労働者拡大に備え
(日本経済新聞 電子版 2018年10月8日1:00配信)

報道によると、当面、リスニングとリーディングの能力を測るということですが、2019年4月運用開始って、ちょっと急すぎないか。
時間的な制約を考えると、日本語能力試験の文脈、場面だけを書き換えて実施という感じになりそうな予感がします。

急な展開にちょっと戸惑ってますので、今回は、ここまで。
この続きは、また、改めて書くことになりそうです。


共感していただけてうれしいです。未来の言語教育のために、何ができるかを考え、行動していきたいと思います。ありがとうございます!