pixta_働き方改革小話

脱・空気が支配する組織

厳しすぎるルールは無秩序と同じ

最近、セキュリティの専門家から「セキュリティのインシデントを起こす企業はPマークやISMSなどの認証を取っている企業の方が多い」という話を聞きました。なぜ、その様になってしまうかというと、ルールが厳しすぎて、こっそりルールを破る行為が横行するようになるためだそうです。

マネジメントシステムの認証はざっくりいうと以下のような過程ですすめます。

①リスクをアセスメントし見えるかする

②把握したリスクに対して組織の特性・発生の可能性・発生した場合に被る損害のインパクトに応じてリスク対応(回避、転嫁、軽減、受容)の方針を決める

③実際に運用可能なルールやプロセスを決めてる

④実行しているルールやプロセスの改善を繰り返す

上記の中で②③を検討する中で思考停止が起こり、全てのリスクを回避するようなルールを作った結果、実質的に運用不可能なプロセスが完成し、こっそりルールを破られてしまう、誰もが「そんな規則守ってられるか」と言ってはばからない”なあなあ”な組織文化が醸成されてしまいます。

背景には、何が何でもリスクをなくしたい「ゼロリスク志向」があると思います。リスクをゼロにするために、とにかくリスクへの対応策は考えなしに回避、結果として厳しすぎるルールと煩雑なプロセスとなり、裏プロセスが横行します。「過ぎたるルール」が「及ばざる」状態になってしまいます。


働き方改革の思考停止

昨今の働き方改革の風潮を見ていると、労働時間の短縮ばかりを求めているように見えます。時間が来たらPCを自動的にシャットダウンするなんてことやってる組織もあるようですが、この手の取組はたいがい思考停止が起きてしまっていると思います。本来削るべきは労働量なのですが、仕事の成果を減らすわけにはいきません。つまり、生産性を上げる取り組みをしなければならないのですが、単純に労働時間を削るだけで生産性が高まるはずがありません。恐らく、この様な当たり前のことはルールを決めている側の人間も皆承知していることだと思います。しかし、当たり前の主張をすることが出来ないために、働き方改革も変な方向に向かっているのです。


空気が支配する組織の弊害

日本の組織は古くから空気に支配される傾向があるように思います。その空気がメンバーの要望の集積よりは、組織の面子や対面という”面”から生まれてくることも多々あります。「こんな厳しすぎるルールは守れない」とか、「そんな時間を絞られて私の仕事が終わるはずがない」なんて思っていても、それを声に出すことができない。そういった空気が小の虫を殺して大の虫を生かす方向に促し続けます。そうやって"角を矯めて牛を殺す"ような結果になった事例は枚挙に暇がありません。昨今の日本企業の不祥事も先の敗戦も原因を突き詰めるとそういったところになると思います。


ルール作りより先に健全な文化を

この様な空気が出来る要因に、「マウンティングの欲求」、「思い込み」、「同調圧力」、「諦め」があると思っています。

べからず集を作りたがる人は「マウンティングの欲求」が強く、細かいルールを設定することで無意識のうちに相手を自分の制御下に置こうとするわけです。基本的には組織の上に立つ人がこのような態度を取りがちです。

長年の慣習や古い成功体験は「思い込み」となり、合理的でないことも「常識」と思い込んでしまいます。細かいルールの考えの根っこにはこのような思い込みがあったりします。その不条理に気が付いた人は「出る杭」とみなされます。異質なもに対して寛容でない日本人の気性から出る杭が打たれてしまいます。また、出る杭が打たれるという強い強迫観念があるため、それが「諦め」になってしまい、組織の中でおかしなルールや慣習が定着していきます。

そんな環境の中で問題解決の役割を背負わされた人は自分が責められることを避けるために「全てのリスクを避けてしまえ」とばかりにゼロリスクの実現に走り、また、新たな不条理なルールが生まれてきたりします。

このような組織風土を変えていかなえれば、働き方改革も真の成果は生まれてこないのではないかと思います。


まずはリーダーが変化しましょう

前述のような組織の病理を治療するには、まずは組織のトップが考え方を変えなければどうにもならないと思います。マウンティングをしてマイクロマネジメントをせっせと行うのは1つには人を信頼していないことにあるかと思います。性善説に基づくマネジメントについてはこの記事に記載しているので是非ご一読して頂ければと思います。

思い込みに関しては、問題解決の思考(こちらの記事をご参考に)を鍛えなければなりません。トップが学び見識を広めるとともに、社員教育にも努める必要があります。

これらをやっても「同調圧力」と「諦め」があると、組織が健全になっていくことはありません。そういったことを払拭していくためにも、組織のトップは明るい未来を語り、そこに向かうためにどの様な姿勢を組織が求めているかをしっかり発信し、時間をかけて浸透させていく必要があるでしょう。


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