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ブックレビュー

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2018年3月の記事一覧

【ブックレビュー】伴走者

漆黒の闇の中から音だけが聞こえる。なぜかとても静かで、聞こえるのは自分の足音と淡島の声だけだ。街の音は聞こえない。 不思議だった。浅生鴨さんの「伴走者」を読んでいるときの自分はいつもこんな風だった。主人公は伴走者である淡島なはずなのに、私がいつも憑依してしまうのは、盲目のランナー内田の方だった。 伴走者。視覚障害のある選手の目の代わりとなって周囲の状況や方向を伝えたり、ペース配分やタイム管理をしたりする存在。 元プロサッカー選手で事故で盲目となった傲慢で自分勝手な内田を

【ブックレビュー】伴走者②

違うのかもしれない。 慮るだけではダメなのかもしれない。 前回、浅生鴨さんの「伴走者」について書いたブックレビューについてだ。 実は前回のブックレビューは、「夏・マラソン編」を読み終えた直後に書いた。そして、この文章は、「冬・スキー編」を読みながら書いている。 私たちは、無意識にコミュニティを選ぶ際、自分自身がマジョリティになれるコミュニティを選ぶことが多いのではないだろうか。 お金持ちはお金持ちと、同じ大学出身者同士と、子供がいる家族同士と、同じ性的嗜好を持ち合わせ

【ブックレビュー】青くて痛くて脆い

人生において「忘れることのできない大きな後悔」というのは、誰しもが持っているのではないだろうか。 昔、「一人で生きていこう」と決めたことがあった。誰かに影響されることではなく、誰かに影響を与えてしまうことが怖かった。それが自分を守るための唯一の方法だった。 でも、大人になった今は思う。 一人でいることはそんなに難しいことではないかもしれない。 一人でいれば傷つかないかもしれない。 でもさ、やっぱり、つまらないんだよ、生きてないんだよ、と。 だから「生きている限り傷つけ!」