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口腔内スキャナーで型をとってつくった詰め物を入れてみた

前回、口腔内スキャナーで型をとったお話をしました。

その時のお話はこちらです。

さて、今回は出来上がった詰め物を入れてみたというお話。

作った詰め物は・・・

自分の口腔内データを技工所に送信して1週間くらいで詰め物が出来上がって来たんです。(これまた写真がなくて申し訳ありません)

作った詰め物は2本。

材質は共にジルコニアなんですが、ちょっと毛色が違うんです。

それは、「内側性」と「外側性」

絵に表すとこんな感じ。

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「内側性」は咬む面だけ詰める、「外側性」は咬む面以外のところも詰めるという具合でしょうか。

今回の自分の詰め物は、右下の手前が「外側性」、奥が「内側性」という感じです。

実際、保険の詰め物を作るときは、模型上で製作します。詰め物の部分にワックスでまず形をつくり、ワックスを金属に置き換えるという作業工程になります。ワックスで形作るときに、この「内側性」「外側性」の特徴を捉えておく必要が実はあるのです。(そう考えると歯科技工士は職人技です)

実際にセットしてみた

まず削ったところを覆っていた仮蓋を除去します。

そして、出来上がった詰め物を試しに削った箇所に入れてみます。

まずは、フィット感を試します。実際は、接着剤で固定するのですが、どんな詰め物もフィット感を見ないといけないんです。

外側性の詰め物は「スポッ」と収まりよく入りました。フィット感良好。

しかし、内側性の詰め物は少しカタついたんです。詰め物の端っこを軽く押すと、反対側が浮く。俗に言う「シーソー」している状態なんです。

保険の詰め物を作った時は、詰め物と模型があるので、「どこがあたってシーソーしているのか」が分かるんです。でも、口腔内スキャナーで詰め物を作った場合は、

模型がない

んですよね。

しかし、今回ご協力していただいた先生はすごかった。

詰め物のどこがあたっているか、これ、分かっちゃったんです。

(これは臨床経験がモノをいうのではないかと思っています)

なので、詰め物の一部分を軽く削ったことによって、「スポッ」と収まっちゃったんですよね。すご。

これでフィット感はOK。

次は、材質がジルコニアであるので、接着剤で歯にくっつけちゃいます。

皆さんはご経験があるかと思いますが、「ぐーっと咬んでいてくださいね」ってやつ。あれ、接着剤が固まるまで待っている時なんです。

そして、噛み合わせの調整です。

噛み合わせは、

「軽く咬んでみて、違和感があるかどうか」

違和感があるなら

「咬合紙を咬んで見て、軽く歯ぎしりしてマーキングされるところが強くあたっているのでそこを削る」

という形で調整していきます。

咬んでくださ~いってやつ

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こんなんですよね。これこれ。

自分は、感度が鋭い(自称)ので、噛み合わせ高いかな~という感じでした。なので、咬合紙をキリキリ~と咬んで、調整してを数回繰り返しました。そして、いい塩梅の高さになりました。

そして、最後に残ったことがあるんです。噛み合わせだけじゃないんですよね。

それが、「隣の歯との接触具合」なんです。

自分は外側性の詰め物があるので、詰め物が接している歯との接触具合を見ないといけません。これは、接着剤を付ける前のフィット感でも見るのですが、実際は、「デンタルフロス」が通るかどうかで見たりもします。

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かくいう自分は毎日デンタルフロスをしていますよ。(デンタルIQ高め)

実際先生がデンタルフロスを通してみると・・・

「あれ、通らないな~」

う~ん、これは、接触具合が強いんだな~。

この接触具合って、弱すぎると隣の歯が動いてしまったり、食べ物のカスがたまりやすかったり、でも強すぎすると、デンタルフロスが通らなかったり、掃除しにくかったりと難しいんですよね。そして、弱いのがいいのか、強いのがいいのかは先生の考え方によって全く違うんです。

なので、先生からは、

「デンタルフロスが通らないから、歯間ブラシでケアして下さい」

とのこと。これね。

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まあ、特に問題は無いので歯間ブラシでケアすることにします。(デンタルIQ高めなのでw)

という具合で無事に詰め物を入れることができました。

結果、自分の口の中の写真はこちら!

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近くでじーっと見るとわかるんですよね。

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遠目で見てみるとまあ、馴染んでるというか。

色合わせに関しては、色見本で色合わせをしている様子を技工士さんに写真で送っていますので、精巧に作っているかと思います。口を大きく開いて写真を撮ってますので、詰め物ここだ!というのが分かるのですが、通常会話をする、日常生活をするのであれば、まず分かりづらいと思います。

個人的には、詰め物がなかった1ヵ月間のストレスもあり、機能面、審美面で大いに満足しております。もう二重丸!

ちなみに、写真撮影は、

様子1

様子2

こんな感じです。歯科医院で撮ったんじゃないですよ。

会社で、衛生士さんの元撮影しましたw

口腔内スキャナーとデータの話

さて口腔内スキャナーで型をとって詰め物を作ったわけですが、詰め物も自動化されて作るには作るんです。実際、ジルコニアのブロックをCADで削りだして~なんて、さすが、デジタル化の波がきている!と思うでしょう。

しかし、自動化するにしても「隣の歯との接触具合」だったり「フィット感」だったり、これらはデザインする歯科技工士が数値で具合を決めることがソフト上で出来るんです。

今回制作した詰め物、歯科技工士さんに聞いたら「隣の歯との接触具合」は「あえてきつくしている」ということだったんです。物が詰まらないようにすること、接触具合が弱いとよくないので、あえてきつくすることで、実際は歯科医院で調整しながら入れてもらうのが理想だったり、ジルコニアを削り出した後、一層薄く陶材を盛るのですが、それできつくなっていたり。
そして、「フィット感」。これは、接着剤の厚みがどれくらいかをソフト上で調整できるんです。接着剤の厚みを薄く設定すると、フィット感はきつくなるかもしれない、厚く設定するとゆるくなるかもしれない。

これらの数値の設定は歯科技工士が行っていて、それぞれの考えに基づいています。そして、それぞれの考え=製作している詰め物の数、症例数、すなわち、口腔内スキャナーでとった型の数であり、「データの数」なんです。

現在、口腔内スキャナーでクラウンタイプ(被せ物)と外側性の詰め物は多く作られています。そもそも、口腔内スキャナーの走りとなったのは、クラウンタイプから作れます!というところなんですよね。

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だから、製作数も多いし、型の数も多い、すなわちデータの数も多いんです。(作っている技工所にもよりますが)

しかし、内側性の詰め物に関してはまだまだ製作数が少ない=データの数も少なかったりするんです。(2020年1月現在)

口腔内スキャナーで内側性の隅の方まで撮影出来ていないから?というわけでもなさそうです。(口腔内スキャナーに明るい人に聞いてみました)

製作数が多いとデータの数も多くなる、そうすると、歯科技工士の経験数も向上することにより、ソフト上でのパラメータの設定値も一定値に収束してくると思うんです。今は、収束しているところなのかな。

しかしながらです。今後の展望として、

パラメータの設定も歯科技工士の手を介さずに、AIにディープラーニングさせることによってもっと楽になって、歯科技工士は最後の微調整、マシンメンテナンスにシフトしていけるのかなとも思っています。

だからこそ、口腔内スキャナーで型を一つでも多くとって、データをどんどん蓄積していくことが、口腔内スキャナーにとって、歯科業界にとってHappyになることなのだろうと思っております。

そいう言った意味では、「歯科業界」におけるデータ活用はまだまだスタートもしていない、むしろ、これから面白いことが起こっていくのかなと思っております。

最後に

これから歯科業界では口腔内スキャナーを皮切りに「デジタル化」が進んでいきます。それに伴い、「データ活用」も必須になってくると思います。データ活用することで歯科業界ならず患者さんや歯科医院さん、業界の人たちがHappyになるであろうと勝手に妄想しております。そんな世界、ワクワクしちゃいますよね。

様々な方に今回ご協力頂きました。歯科医院さん、口腔内スキャナーで立ち会って下さった所長さん、営業さん、作って下さった歯科技工士さん、写真を撮って下さった皆さんにお礼申し上げます。

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