見出し画像

世良田さんのおエドちゃんが来たよ

画像1


世良田波波さんの漫画「もぐら屋のおエドちゃん」が届いたので読みました!
不思議だけどあったかい昔の世界の、町はずれのお団子屋さんに、おエドちゃんて可愛い女の子が居る。そこでの暮らし、人々の温もりと優しさ、美味しい和菓子、団子屋の主人(何故かモグラの姿をしている)との生活。
荒唐無稽だけど、何処かでこのぐらいの緩さの、平和で小さな凸凹を乗り越える生活を望んでいる自分も居て。子供の頃から、田舎とか昔の世界でのんびり暮らせたらいいなと思っていた。落語の世界の長屋の噺に近いものを感じる。

もぐら屋の主人の過去、きな粉の仕入れなどから、少しずつ作中での現実世界と、おエドちゃんとして彼女が生きてる世界が繋がり始めてくる。
おエドちゃんなのに大阪で酷い暮らしをして、そんなろくでもない人生なのに、生きたいとは思った幸子ちゃんが見た夢の世界なのか、はたまた本当に、おエドちゃんの世界への入り口がこの世の何処かにぽっかりと口を開けているのか。

柔らかくて可愛い絵柄だけど、嫌な奴やタチ悪い組織はハッキリ描き出されていて、何故彼女が夢なのかパラレル世界かわからない場所に迷い込んで住み着いたのかも、結構な顛末が用意されていて。
辛いことばかりで逃げ出すことも出来ない時に、心だけでも逃がしてやれるのが現実逃避だとするならば、私はそれが得意で、思い余って小説なんぞと言い張ってネットに文章を載せているけれど、こんな風な心の世界は誰しもが持っているんじゃないかなと思う。

子供のころから、この家この父親から遠く離れた場所に行きたくて。そこで平和でささやかな暮らしをしたいと思う自分が居て。
だけどその反対に、今いるこの場所でどうにか誰かに認めて欲しくて、もう会えないであろう人に見つけて欲しいと思う自分も居て。
おエドちゃんの居る優しい世界も、幸子ちゃんの居た世知辛い世間も、どっちも自分の内側と外側で存在し続けているモノなのかもしれない。どうせ逃げるなら優しい世界がいい。

元は若草ヒヨスちゃんの漫画が読みたくて青林工藝社のアックスを買い、面白かった漫画の感想を書き、見つけてくれた作者さんたちのアカウントを辿って行ったら世良田さんのツイートを見つけたのが最初だった気がする。
何処に何処から辿り着いて何を見つけるかわからないから、現実も逃避先でも、もっとウロウロしていたいし、ウロウロ出来なくなったら本当にキツイと思う。ウロウロしていることを書けなくなったらと思うと恐ろしい。

おエドちゃんは今日も、美味しい団子屋さんで元気に働いているのだろう。
時々、会いに行ってみたいので、また続きがあれば楽しみにお待ちしております。

この記事が参加している募集

#買ってよかったもの

58,774件

小銭をぶつけて下さる方はこちらから…励みになります また頂いたお金で面白いことを見つけて、記事や小説、作品に活かして参りますのでよろしくお願いいたします。