ウルトラマンタロウって何かとアレ

ウルトラマンタロウを初めて見たのは幼稚園の時だった。年長さんのころにBS11で再放送を流していた。ある日、自宅のテレビ画面が急に
ヒューーーーーーーーーーーーーン…
ポチョン
ヒューン、ヒューン
ってなった(わかるかよこんなもん)

あのー、急に真っ暗闇に火花が散るんだ、それが暗闇の奥へ走って行ったと思ったら今度はその闇の向こうから青い光が生まれて、ウルトラマンTタロウってタイトルが出る。
そのままオープニングテーマに雪崩れ込むのだが、これがまたカッコイイ。
作詞作曲は阿久悠・川口真というから豪華。
デゲデゲデン!ドン、デン、ドンじゃんじゃかじゃんじゃか
ウールートーラーの父が来たーーーー
あんま歌詞書くとまずいんだっけか。

まあとにかく、あの主題歌と背景のZAT(ウルトラマンタロウに出てくる防衛軍)の基地がサイコーなんだ。ZATの色んなメカが次々に発進していくところを、信じられないぐらいアップで撮ってる。全部ミニチュアを動かしてるんだけど、子供じゃなくてもアレを初めて見たら驚くぜ?
平成も終わるっつーのに、未だにあれは凄いと思う。
歌詞もまたいいんだよな。
空を見ろ、星を見ろ、宇宙を見ろ
彼方から、迫りくる、赤い火を
とか
アレは何、アレは敵?アレはなんだ?
謎を秘め、襲い来る、侵略者!
とか。大きな声で歌うと実に爽快だ。
ウルトラ豆知識で言うと、この歌を作詞した阿久悠さんの息子さんの名前が太郎なんだよね。それで、自分も子供から尊敬される父親でありたいと作詞をしたという。
まあそんなことはつゆ知らず、当時の私は毎週ウルトラマンが見れるということで実に楽しみだった。ちゃんと夕方5時からの再放送を見て、同時にビデオにも録画していた。
最初に録画されていたのは蔦怪獣バサラ。よりによってそんな話から見始めることねえだろ、ってぐらい陰惨で全然救いのない、人もバンバン死ぬ話。
ウルトラマンタロウは明るい、ふざけた怪獣が出る、ZATって防衛軍も終始和やかでレオと違って殉職者もいない、なんていう奴はハッキリ言ってモグリである。レオはレオでアレだけど、実はウルトラマンタロウも相当アレな話が多いのだ。
このバサラにしたって、捨て子だった女の子がお寺にある捨て子塚から生えている赤い花をハサミで切っては道行く人に配っている。この花を目印に夜な夜な蔦が延びて、その家の人の血を吸って殺して回るのだ。どうだ、これがウルトラシリーズ10周年記念作品の中でフツーに放送されてたんだぞ。
女の子はあるお金持ちの家に貰われて行くのだが、そこのむっちりした昭和のマダムって感じの女主人もあわれ蔦の餌食に。
誰かあー!誰かあーっ!
という断末魔がまた悲惨極まりない。

最後はウルトラマンタロウに倒されたかのように見えたバサラだが、お経とともに亡霊となって蘇りその場で炎上。同時に捨て子塚まで爆発、お寺ごと灰になって…
女の子だけが残される。
どうだ、これでもタロウは明るいか?
ふざけた怪獣ばかり出てくるか???

よくいう火山怪鳥バードンなんてのはまだわかりやすいんだ。
アレはアレでどうかと思うし、私もバッチリ心に傷を負った。
けど、タロウが恐ろしいのはそのすぐあと。
親子の怪獣フライングライドロンの回だ。宇宙を旅する渡り鳥であるところのフライングライドロンという怪獣がいる。この子供の方が、ちょうど地球、それも日本で開催されている花火大会の打ち上げ花火を見て、思わず地球に近づいてしまう。
すると地球の引力に引き寄せされてしまい、花火の直撃を食らって地上へ墜落する。

恐らく鳥目というぐらいなので目がよくて、それで花火もくっきり見えたと思われる。

そのフライングライドロンの落っこちた田舎町で暮らす一人の未亡人。結構美人でまだ若い。
彼女は少し、頭がその、ちょいとしたハッピークラッシュ状態で。
毎日呆けたようにふらふらと生きていた。
そこに落下してくる巨大な怪獣。
蒸し暑い、濃い緑の田舎の夏。
汗ばむ壊れた未亡人。
泣き叫ぶ怪獣。
やがて暴れ始めたフライングライドロンと戦うウルトラマンタロウに、土砂降りの雨の中、石だらけの河原で未亡人が叫ぶ。
可哀想じゃないですか!
泣いているじゃないですか…!

どうかしてるだろコレ。完全に特撮ヒーロードラマのやることじゃねえもん。
暑い暑い真夏の夜に完全にぶっ壊れた未亡人が、見えもしない怪獣が泣いている!と土砂降りの雨んなか河原で叫びまわっていると思って見ると、ゾッとするぐらいどうかしている。

それからタロウのZATにも殉職者は存在する。メインの隊員じゃないけど、宇宙ステーションの佐野さんという人が改造ベムスターに飲み込まれて宇宙ステーションと運命を共にしている。
あのベムスターの回も、若き日の大和田獏さんが寺小屋の熱血先生を演じていたり、途中でむやみやたらにサボテンダー、ベロクロンまで出てきたりとテンコ盛りを通り越したメガボリューム。
なので宇宙ステーションの悲惨な末路もかすみがちなのだが、ZATなんてなんだよ!と絶望し号泣する少年たちもいるし、タロウだって一時退却するぐらいの激戦だった。

見れば見るほど奥が深く、明るい話は徹底的に明るく、そうじゃない時もマジで振り切ってくる。
それがウルトラマンタロウの魅力であり恐ろしさなのだ。

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