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【イベントレポート】Web3がもたらす新たな社会 〜自律分散化する社会の中で今後大企業が果たす役割は?〜【上】

 2ヶ月に1回のギャザリング、One Hundred GIFTs、
2022年10月26日に開催されたテーマは「Web3がもたらす新たな社会」。
【上】、【中】、【下】の3部でイベントレポートをお届けします。
 
前半は、メインスピーカーに湯川鶴章氏(ITジャーナリスト。AI新聞編集長)を迎えweb3の基礎について解説いただきました。
次に、湯川氏×武井浩三氏(社会システムデザイナー)で、「Web3は社会・企業をどう変化させるか?」を対話しました。
後半は、Web3の分野で活躍する、志村 美代子氏(Webビジネステクノロジスト)と、栗本 拓幸氏(Liquitous代表)に、それぞれの実践するGIFT&ACTIONを語っていただきました。その後、希望者による対話会も初開催されました。

この記事は湯川氏による基礎解説について。
ホットトピックについて、いつもにも増してテンポ速くギュギュっと詰まった内容に注目です!(今回の告知はこちら

 

はじめに、GIFT発起人・岩波から

今日のテーマWeb3.0ですが、最近DAOや自律分散型社会を耳にすると思いますが具体的に何なのかを片鱗をつかみたいと思います。
オムロンの創業者、立石一馬さんが提唱した未来予測理論であるSINIC理論によると最適化社会(葛藤の時代)を経て、2025年ぐらいから「自立社会」になると言われています。その際に、科学・技術・社会性の三つ巴で進化していきます。
 
社会性だけを発展させようとしても、社会実装するための科学と技術がないと文化は変化しません。インターネットができて自律分散的な動きができたのが最適化社会で、今Web3やDAO、NFT、ブロックチェーンで技術化ができてきたことで、より自律分散的な社会が実現されようとしています。
 
今はどちらかというと私たちの社会性、頭の方に集中しているので、より柔軟に理解や活用ができれば、より一人ひとりが生きやすい社会に近づける可能性が高いはずです。そういった議論を今日はできればと思います。


「Web3とは?」ITジャーナリスト湯川氏による解説

みなさん、こんにちは。湯川と申します。私は元々、新聞記者でアメリカに20年くらい住んでいました。今日は、Web3は何で、世界にどのような影響を与えるかについてお話しします。
はじめに、Web1は一方通行でマスメディアやYahoo!のようなもの、Web2はSNSでこの時代に儲かりすぎなくらいめちゃくちゃ儲かった企業がありました。
その反動でWeb3というのが始まり、GoogleやAmazonに集中している権力とか富を分散しようという流れがあります。Web3のWikipediaの説明に「分散化」とあるのですが、非中央集権という意味で、富や権力が一部の企業や人に集中していない状態のことを言います。

ゲストの湯川鶴章氏。ITジャーナリスト、AI新聞編集長。

ここから用語の説明ですが、先ず「ブロックチェーン」というのはオンライン共有台帳で、一つの台帳を複数で共有するものです。例えば10人で共有していたら、台帳の中身を9人がみて一人が違うと改ざんしたとわかってしまう。改ざんできないので実際にお金のやり取りをしなくても金銭の授受ができるようになって、仮想通貨もできるようになります。

次に「トークンベース経済」というのは、お金ではないけれど何らかの価値を持つものを言います。「トークン」というとWeb3の世界では、仮想通貨やデジタルアートなど金銭的価値のことです。リアル経済以上に斬新で活発な取引が行われているので、将来オンライン経済が大きくなると言われています。

またWeb2のアンチテーゼ(反立)というものがあって、テック大手に富とパワーが集中した富や権力をもっと人々の方へ戻したい、Power to the peopleという意味でWeb3が出てきました。
それに加え個人的にはWeb3は、価値観変化だと思っています。これまではプログラムの非中央集権化が進んで、例えばMicrosoftのWindowsをみんな使っていましたが、最近はLinux(リナックス)のようにオープンソースで分散して作っていて、企業が1社で作ったソフトの方が大丈夫なのか?という価値観に変わってきています。ソフトウェアの認識の変化に5~10年かかりましたから、データも同じくらい時間をかけて変化する流れになりそうです。こうした価値観変化がかなり重要だと思っています。

さて、Web3で本当に分散化社会って創れるんでしょうか?
ニュースではメタバースやNFT、仮想通貨でどうやったら儲かるかの話ばかりが出ていて、分散化や非中央集権と真逆の話に感じるかもしれません。まだWeb3が始まったばかりで全容がつかめていないために起こっていることです。
例えば、トランジスタの発明→ラジオ→パソコン→スマホ→情報化社会の変化が劇的に起こったように、業界人はパソコンが出たくらいから変化を感じていましたが、一般の人は本当か?と思っていてわかり始めたのがスマホが出た頃です。ブロックチェーンが出てきたのが十数年前、その次に仮想通貨、そして今がNFT・メタバースの段階です。これが分散化社会にどうか変わり、変化するのか全工程を見通せなくて当たり前です。
 
具体的な進化をみるために、トークンでWeb3の現状を話します。
初めは代替可能トークン(Fungible Token)しかなく、使い道は仮想通貨でした。数年前に代替不可能なトークン、NFT(Non Fungible Token)というのができました。例えば、あなたの絵と私の絵は同じ1ビットコインでも描かれた内容が違うので交換ができない、特別なものだとなりました。イマココです。
2022年5月になってSBT(Soul Bound Token)といって譲渡不可能で、公にしてもいいようなものが出てきました。情報は、一般公開する情報と公開しない情報に分けられます。卒業証書でいうと、同じ大学のものをもっていても、オンラインコース終了証や受賞歴、論文、ブログ記事など公開しても問題のない範囲のSBTの情報が加わることで本人認証できるようになります。

これによりセキュリティが強化されます。公開しても良い情報はSBT、公開したくないものは外付けのハードディスクやクラウドサービスで手元に置きます。分散型のクラウドシステムも出てきていて、何ヵ所もバラバラのストレージにデータが置かれるので全てをハックしないと中身がわからないようになっています。また、公開する場合もどれくらい期間なのか、誰に公開するかも細かく設定でき、安全性を高めています。10秒だけパスワード共有というものもあります。
 
では今後どんな社会になっていくのか?可能性あるシナリオとしては、あらゆるデータを個人が管理し、その個人データを管理して企業と売買交渉する協同組合ができると思います。その協同組合はDAOという自律分散型組織という新しいタイプの民主主義組織です。好きな時に好きなタスクで貢献して、より豊かに生きていけると言われています。

そもそもなぜテック大手に富と権力が集中したのでしょうか?AmazonやGoogleのおかげで便利になっているし感謝すべきという声もありますが、シリコンバレーにいると若干違うと感じています。世界一経済がいい土地なはずなのに、ラーメンが1杯3000円して、ホームレスもめちゃくちゃ増えている。格差は顕著になっているんです。
日本は失われた30年と言われていて、アメリカ経済は伸びたと言われています。ところが、GAFAMというテック5社を除くと日経平均とあまり変わらずアメリカ経済が伸びてないとグラフからもわかります。

ハーバードビジネススクールの二人の教授の論文”Competing in the Age of AI(AI時代の戦い方)”によると、産業革命時代以降全ての企業が大量生産型で、製造工程・業務工程を細かく細分化して、専門性を高め分業化する方法です。我々の身の回りのほとんどのビジネスモデルが大量生産型モデルです。経済学でいう「収益低減型」で、規模を大きくすると収益が小さくなる仕組みになっています。

ところが10年前にインターネットの普及で、真逆の「収益逓増型」の新しいモデルが出てきました。正のスパイラルで、データが増えればAIが賢くなりサービスが向上しユーザーが増え、ユーザーが増えればさらにデータも増える、とぐるぐるスパイラルが回って、一人勝ちになっていく、Google MAPはその一例です。

データが富を生む時代で、全てのビジネスをAIで収益逓増型にとなっていくのですが、問題は勝っている企業が富を独り占めにしてしまうことです。それをWeb3で止められないかというのが今起こっていることです。
具体的にどうすればいいのか?一つはより多くのデータを共有すること。GoogleやAmazonがもっていない、財務や健康といった個人データを共有して有効活用して、DAOのような自律分散型組織に移行すること
もう一つは、個人データを積極的に共有する価値観変化を起こすこと。そのためには3つの必要な条件があります。①社会貢献であるという認識、②セキュリティの向上、③インセンティブ(自分が得をするか)です。
 
例えば人類の大きな問題であるガンの解決のために、個人のDNAや生活習慣のような健康データを集めることで、AIがガンになる確率をかなり正確に出してて解決できるのではないかと言われています。他にも認知症やうつ病もデータが集まれば解決できるので、OpenMinedというボランティア団体が価値観を変えてデータを提供しようよと訴えています。

現在、最も賢いAIと言われるのがGoogleの開発したLaMDA(ラムダ)ですが、WikipediaやWebニュース、SNSなどの情報を集めてきてAIに学習させています。ですがLaMDAですらもっていない情報も山のようにあって、全体のデータ量の数%しかもっていないのです。我々がデータを共有していくとAIはもっと賢くなって(Web2よりも)めちゃくちゃ大きな富をWeb3では作れるので、社会全体で豊かになっていけます

*【中】、【下】のリリースもお楽しみに!
      以下の動画では全編ご覧いただけます。

 

【今回の動画】


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