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[1月第2週] Weekly DAO Report Vol.51 | StrideがDYDXのリキッドステーキング開始へ DAOの分散化にも期待できる理由を解説

Cosmos最大のリキッドステーキングプロトコルであるStrideが、DYDXトークンのサポートを開始すると発表した。リキッドステーキングとは暗号資産のステーキングの際に代替トークンを発行する仕組みだ。一般的にステーキング解除には時間がかかる。その間、代替トークンを使うことで他のDeFiで運用したり場合によってはイグジットできることがリキッドステーキングのメリットだ。DYDXトークン保有者にとっては有意義な選択肢の一つになるだろうが、実は、DAOの分散化にとっても大きな意味がある。本稿ではリキッドステーキングがDAOの分散化につながる理由について解説する。

リキッドステーキングの仕組み 

まずは、dYdXのリキッドステーキングの仕組みについておさらいしよう。DYDX(dYdXはプロジェクト名、DYDXはトークン名)のステーキング解除には、30日間かかる (アンボンディング期間と呼ばれる)。この日にちが長すぎるのか妥当なのかについてはコミュニティで議論が行われている。今回、DYDXをStrideでステーキングすることで、stDYDXを受け取れるようになる。stDYDXを使えば、ユーザーは30日間のアンボンディング期間を待たずしてDeFi等での運用やEXITができる。

DYDXのステーキングは、ステーキング報酬の大半をUSDCで配るユニークな仕組みだ。これはステーキング報酬の原資がdYdX取引所にUSDCで支払われる取引手数料であるためだ。昨年11月末にフルトレーディングが始まって以来、dYdXのステーカーとバリデーターに配布されたUSDCはMintscanで確認できる。基本的に取引量が増えて取引手数料が増えれば、ステーキング報酬が増えることになる。マーケットのボラティリティは日々変動するため、APRも8%くらい〜35%ほどまで変動している。

引用:Mintscan 「USDC建てのステーキング報酬額の推移」

StrideのDYDXのリキッドステーキングの仕組みは以下の通りだ。

  1. DYDXがユーザーのウォレットからStrideのウォレットに移動。Strideチェーンに預けられる。ユーザーはstDYDXを受け取る

  2. エポック毎(6時間毎)にStrideに預けられたトークンが事前に選ばれたバリデーターにステーキングされる 。

  3.  エポック毎にStrideがUSDC建てのステーキング報酬を受け取り (Claimして)、Osmosisに移してDYDXにスワップし、ステーキングに回す(複利効果)。

バリデーターの中央集権化問題

dYdXには、現在60のアクティブバリデーターがいる。60という数字が妥当かどうかはコミュニティが今後決めていく話になるが、dYdXは一部のバリデーターにステーキング量が偏ってしまっているという問題に直面している。これは、バリデーターの中央集権化問題と呼ばれている。

引用: Mintscan 「dYdXのバリデーター Top10」

dYdXのガバナンスでは、33.4%の得票数を集めれば拒否権を発動できる。逆に言えば、66.7%の得票数を集められれば、dYdXガバナンスの方向性を決めることができる。現在、Top7のバリデーターが67.43%のステーキング量を保有しているので、理論上、仮にTop7が談合してdYdXの方針を自分たちが好きな方向に決めることが可能だ。これは大きな問題だ。

(ちなみにOsmosisの場合、10のバリデーターが33%以上で42のバリデーターが67%以上のステーク量を持っている)

一つ言えることは、分散化には時間がかかるということだ。dYdXチェーンがローンチしてからまだ2ヶ月程しか経っていない。その間、少しずつではあるが上位バリデーターから下位バリデーガーにステーク量の意向が始まっている。

もう一つは、Strideのようにバリデーターへのデリゲーションプログラムには大きな期待がかかっている。Strideが今回選んだバリデーターは以下の通りだ。

  1. Imperator 

  2. Polkachu 

  3. Kingnodes

  4. PRO Delegators 

  5. Crosnest 

  6. Strangelove 

  7. Cryptocrew x Defi Dojo

  8. Enigma

  9. ECO Stake

  10. Smart Stake

Strideが選ぶバリデーターには自動的にStrideに預けられたDYDXが流れることになる。

Strideが選考基準にあげているのは、バリデーターのパフォーマンス、アクティブセットに入っていること、下位66%であること、ガバナンスへの参加率、エコシステムへの貢献度などだ。この基準についてはコミュニティのフィードバックを元に変更される可能性があるし、そもそもStrideが選ぶバリデーターにも変更の可能性がある。

以前の投稿でも書いたが、分散化は一日してならずだ。そもそも多くのエコシステムメンバーが分散化を意識したステーキングを行うこと、Strideをはじめ多様なバリデーターにDYDXトークンをステーキングできる委任プログラムが発展することが期待される。

トレジャリーデータ

DeepDAOによると、1月15日時点でDAOトレジャリーの総額は331億ドルと前週比で10.7 %増加した。内訳は、流動性のある資産(Liquid)が284億ドル、権利が確定していない資産(Vesting)が47億ドルだった。
ガバナンストークン保有者は990万人で、アクティブDAOユーザーは290万人だった。

Treasury額で見るDAOトップ10は以下の通りだ。

著者:大木 悠 (Hisashi Oki)Head of Asia, dYdX Foundation
早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、テレビ東京のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。2018年に日本に帰国し、コインテレグラフジャパンの編集長を務めた。2020年12月にクラーケンジャパンの広報責任者に就任。2022年6月よりdYdX FoundationのJapan Lead。2024年1月より現職。



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