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DXレポート「2025年の崖」を乗り越えた先進事例!レガシーシステムの刷新を果たした豆蔵×損保ジャパンを考察してみた♪

基幹システム全面刷新プロジェクト『未来革新プロジェクト』

豆蔵、損保ジャパン様の攻めのDX実現に貢献! 次世代基幹システムのアーキテクチャ構築と 技術者教育のタッグで超大規模開発を牽引

というタイトルのプレスリリースを本日見たとき、とても心が踊りました♪

株式会社豆蔵(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:中原 徹也、以下 豆蔵)は、損害保険ジャパン株式会社(本店:東京都新宿区、取締役社長:西澤 敬二、以下 損保ジャパン)の基幹システム全面刷新プロジェクト「未来革新プロジェクト」に、アーキテクチャ構築と技術者教育のタッグで支援サービスを提供し、その成果を基幹システム刷新事例として、2021年2月に公開しました。

DXレポートで有名になった"2025年の崖"を乗り越えた先進事例として、今回は、この記事を考察してみたいと思います!

2025年の崖とは

多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変するデジタル・トランスフォーメーション(=DX)の必要性について理解しているが・・・
・ 既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化
・ 経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、
現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている
→ この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)
DXレポート サマリ 2ページより引用

デジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)を実現するためには、社内のレガシーシステム(複雑化・ブラックボックス化した古い既存システム)を刷新する必要があるが、これを実行できなかった場合に、膨大な経済損失が生じる可能性があることを"2025年の崖"と呼んでいます。

詳細は、こちらの記事でも解説しているので、ぜひ読んでください。

「開発自前化の技術者教育」に注力

この"2025年の崖"を乗り越えた先進事例として、豆蔵×損保ジャパンが6年がかりで実現した、基幹システム全面刷新プロジェクト「未来革新プロジェクト」は、日本の大企業に勇気を与える事例だと考えています。

損保ジャパン様は、長年のニーズ対応で複雑肥大化した基幹システムを刷新し、攻めのDXの中核となる柔軟性のあるプラットフォーム構築を目指されました。豆蔵は、次期基幹システムに適用するフレームワークの評価をきっかけに、進化的なアーキテクチャ構築、開発自前化の技術者教育をご支援しました。豆蔵のアーキテクチャチームにより作成されたフレームワークとアプリケーション設計ガイドは2期開発に向け現在では2,000名強の開発者に利用されています。豆蔵の教育を受講することによって未来革新プロジェクトならではの設計手法を「理解」し、その理解とガイドをもとに「設計」し、フレームワークを使って「実装」するといった実開発にシームレスに繋がる独自教育のモデルを構築し展開することを実現しました。

まさに"2025年の崖"で説明されていたレガシーシステムを刷新し、DX化の第一歩を遂げたわけですが、豆蔵が行った支援は、「進化的なアーキテクチャ構築」「開発自前化の技術者教育」の2つであると書いています。

「進化的なアーキテクチャ構築」は、豆蔵のアーキテクチャチームが作成したフレームワークとアプリケーション設計ガイドのことを指しています。

特に注目するべきは、「開発自前化の技術者教育」です。これが普通に書かれていること自体がすごいことなのです。

DXレポート2にも書かれているのですが、ITシステムベンダー企業は変革を求められています。

これまで多くのベンダー企業は、ユーザー企業が持つ IT システムを個別に開発・納入する受託開発型のビジネスを展開してきた。多くのシステム開発において、大手ベンダー企業がユーザー企業から業務を請け負い、そのうち一部を下請企業に開発委託する多重下請構造が取られてきた。
ここには、ユーザー企業とベンダー企業の商習慣に起因する、4.3.2 にて後述する解決すべき課題が存在するため、ベンダー企業にとって、生産性の向上や新規技術の習得にインセンティブが働かない、という問題は無視できない。
これに対して、デジタル社会においては、ベンダー企業とユーザー企業は共に、高収益な領域で利益率の高いビジネスへと DX を推進していく必要がある。そのために、現行ビジネスの維持・運営(ラン・ザ・ビジネス)から脱却する覚悟を持ち、価値創造型のビジネスを行うという方向性に舵を切るべきである。

まさに上記の太字を実現しようとしており、ITシステムベンダー企業である豆蔵が「システムを作り、納品して終わり」ではなく、ユーザー企業である損保ジャパン内に技術者を育成し、その技術者がレガシーな基幹システムを刷新したのです。

これは、今までのソフトウェア開発業界では考えられない革新的な取り組みだと考えています。なぜなら、業界にある暗黙のルールを破る取り組みだからです。多重下請構造を自ら破壊する取り組みだからです。

レガシーシステムが抱える問題を解消する

【プロジェクトの背景について】
損保ジャパン様は新商品や商品改定など長年に渡る様々なニーズへの対応の結果、複雑肥大化した基幹システムが抱える問題を解消するため、システムを全面的に刷新することを決断されました。損保ジャパンは株式会社日立製作所との合弁により既存システムの開発を行うシステム子会社とは別に基幹システムの再構築に特化したSOMPOシステムイノベーションズ株式会社(以下 SSI)を設立。基幹システムの再構築プロジェクトはSSIにより『未来革新プロジェクト』とし2015年から開始され現在は1期カットオーバーに向け佳境を迎えています。

この基幹刷新プロジェクトの特徴:
メインフレーム/COBOLで構築された現行基幹システムのオープンプラットフォームでの再構築
Javaを用いたスクラッチによる基幹システムの再構築
・JavaEEを中核としたアプリケーション基盤の利用
・国内外を問わず大手開発ベンダーが複数参画するマルチベンダー開発
・数年に渡る工期とピーク時最大開発要員数が2,000人強となる国内屈指の超大規模システム開発

まさに"2025年の崖"に書かれていることを、DXレポートが出される2018年よりもずっと前に課題だと捉えており、3年も前になる2015年から「基幹システムの再構築プロジェクト」に取り組み始めています。

このようにDXの推進に取り組み始めるのが早い企業は、自社のビジネス課題をきちんと捉えられていることがまず特徴として挙げられます。

2つ目の特徴としては、ITシステムをただのコストと捉えておらず、自社の競争優位性を築くためのツールであると捉えている点です。

3つ目の特徴は、将来的な自社の競争優位性を築くために、数年がかりの超大規模投資にOKを出せる、ITやDXに精通した経営層がいた点です。

この3つの特徴がないと、このような「基幹システムの再構築プロジェクト」を進めること自体、できないと考えています。

ITシステムベンダーである豆蔵の革新的なサービス

【豆蔵が提供したサービスの概要】
豆蔵はこの基幹システム刷新プロジェクトにおいて、アプリケーション基盤となるアプリケーションアーキテクチャの構築、及びそのアーキテクチャ上でアプリケーション開発を行うエンジニアに対する技術者教育、主に2つの支援を中心に行ってきました。今回はこのプロジェクトに対するアーキテクチャ構築と技術者教育という一見異なる2つの側面に対する豆蔵の活動と支援内容を事例として紹介します。

<アーキテクチャ構築支援サービス>
・アプリケーション基盤の評価
・アーキテクチャ構築支援
・アーキテクチャ利用ガイド作成支援

<技術者教育支援サービス>
・講座カリキュラムの策定支援
・技術教育(オブジェクト指向/Java/JavaEE)の実施
・独自教育の構築と展開

ソフトウェア開発自体は損保ジャパンの社内にいる技術者が行い、それを実施できる環境を整えることを豆蔵は支援した、と捉えることができます。

<お客様の期待と豆蔵が提供した支援の成果>
お客様の期待(1):内製化促進を目的にエンジニア社員の「技術の習得・スキル育成」を実現する講座カリキュラムの策定
支援の成果:
・豊富な教育サービス提供実績にもとづいた人材育成的観点によるコンサルティングと受講カリキュラムのテーラリング
・アーキテクチャチームからの技術要素と深度のフィードバックによる最適化

お客様の期待(2):未来革新プロジェクト独自の開発手法に沿った独自教育の開発と展開
支援の成果:
・豆蔵が持つ教育ノウハウをもとにしたコンテンツの作成
・アーキテクチャチームと教育チームの緊密な連携による実開発にシームレスに繋がる独自教育の構築と展開

とにかく損保ジャパン内でソフトウェア開発ができるように(内製化支援を目的に)、独自教育を開発し展開した、という点を成果としています。

アーキテクチャチームにより作成されたフレームワークとアプリケーション設計ガイドは2期開発に向け現在では2,000名強の開発者に利用されています。また、技術者教育は内製化の促進に向け2016年から現在まで展開されており、延べ数百人の方に受講されています。さらに、独自教育については当初SSI社員だけを対象にしていたが想定を上回る高い評価をいただき、現在では開発ベンダーにもその門を開いています。
異なる担当領域ではあったがそれぞれのチームが強みを生かし双方で協調しながら支援を行いました。この結果、独自教育を受講することによって未来革新プロジェクトならではの設計手法を「理解」し、その理解とガイドをもとに「設計」し、フレームワークを使って「実装」するといった実開発にシームレスに繋がる独自教育のモデルを構築し展開することを実現しました。
このように本紹介はアーキテクチャ構築と技術者教育の両面で豆蔵がサービスを提供し超大規模開発を牽引した例となります。

全てが損保ジャパンでの内製化支援につながるように支援サービスを提供した豆蔵は、革新的なソフトウェア開発の事例を作り上げました♪

終わりに

最後に、本プロジェクトの責任者である損保ジャパンの浦川取締役専務執行役員CIOのお言葉に、今までの苦労や大切にしてきたことが凝縮されていると感じたので、ご紹介します。

東京海上日動や三井住友海上といった財閥系の大企業に挑む損保ジャパンの攻める姿勢・DX化への想いを感じていただけるのではないかと思います。

【損害保険ジャパン株式会社様からのコメント】
損保ジャパンの浦川です。プロジェクト責任者として一言お伝え申し上げます。
2021年3月、いよいよ数年がかりで取り組んできた基幹刷新プロジェクトの本稼働を迎えることとなりました。今回の難事業を改めて振り返りまして、弊社IT子会社を含むIT部門において、顕著な変化が二点ありました。
まず一点目は、弊社社員の技術力、プロジェクト遂行力が格段に向上し、独り立ちできたという点。長らく保守中心、ベンダー依存が続いたため、大規模な新規開発プロジェクトを自ら遂行するには、多くの苦難がありました。豆蔵様には、アーキテクチャ、そして社員教育、この弊社技術力向上の要の2施策で中核となり、弊社社員を支えて頂きました。現場目線でのアーキテクチャ設計と、技術研修を両軸で遂行できる企業は稀だと思っています。作成いただいた研修資料を拝見しましたが、JavaEE7を保険アプリケーションの特性を理解した上で利用方法について具体例を交えて記載してあり、感動いたしました。多数の社員を育成いただき、お陰様で内製化への道筋も見えて参りました。
二点目は、当初社内でも反対意見があった最新オープン技術を基幹システムに全面採用したのですが、その方針が正しかったと確信できた点。特に、アプリケーションフレームワークとして採用したJavaEE7は、日本で本格採用している企業は稀で、日本人技術者も多くはありませんでした。豆蔵様は先進的な技術力で弊社のニーズを把握し、アーキテクチャレビュー、その知見を生かした弊社社員教育の両面で、プロジェクトメンバーの確実な技術力向上に高い貢献をいただきました。
JAVAは、基礎的な研修は多々存在するのですが、金融機関の基幹業務を開発するにあたって、どのようなアノテーション(API)を使うべきなのか、再利用性やパフォーマンス、資源効率化など、さまざまな観点での考慮を十分に取り込み、取り組んでいただけました。
立ち上げ当初、マイクロサービスアーキテクチャはまだそれほど世の中に広まっていませんでしたが、今回の基幹システムの根底にある設計コンセプトとしていました。ただ、実務レベルでこのアーキテクチャを具現化している例も稀で、実装にはかなり苦労をしました。その度に、豆蔵様と膝詰めでレビューを進め、性能が十分に出る実装方法にたどり着くことができました
今回のアーキテクチャは、Cloud Nativeとの親和性が非常に高いため、SORに相当する基幹システムながら、攻めのDXの中核とすることができる、柔軟性に富んだインフラを手に入れることができました。ブレのない設計思想でサポートいただいた豆蔵様のご支援の賜物と考えております。
末筆になりますが、本稼動を迎えるにあたり、改めて豆蔵様の高い技術力、お客様に対する貢献したいという強い熱意、そして諦めない強い意志に敬意を表し、深く御礼申し上げます。

損害保険ジャパン株式会社 取締役専務執行役員CIO 浦川 伸一


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