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RICOH XR500はどう使うべきカメラか

フィルムの機械式一眼レフの中では比較的有名な機種の中に、XR500というカメラがあります。
RICOHが1978年に発売した機械式一眼レフで、上位機種XR-1の機能を削って廉価にしたファミリーカメラとして非常によく売れたカメラでした。
参考:RICOH IMAGING

当時よく売れたことから、現在でも中古市場でよく見かけるカメラですが、果たしてこれは現代でどう使うべきカメラなのか、他機種と比較した時の利点と欠点、実際に使って感じた感想を交えて考えていきます。


XR500の概要

まず、XR500とはどんなカメラかというところを軽く紹介しておきます。
詳しい仕様はRICOH公式サイト他、詳細に解説されているサイトが多数ありますのでそちらを当たってください。

先述の通り、XR500はXR-1という上位機種をベースに一部機能を削減し廉価版として発売した、機械式フィルム一眼レフです。
特長的な点をいくつか挙げるとするならば

  • Kマウントレンズに対応している

  • 一眼レフではかなり安価

  • プラスチックを多用した外装

  • シャッタースピード B,1/8s-1/500s

こういった点が挙げられます。
ここからわかる事と、巷でのこのカメラの評判も加えて利点、欠点を整理します。

利点

  • レンズの選択肢が非常に多い

  • 安価で入手できる

  • 比較的軽量

欠点

  • 金属外装に比べて耐久性が低い

  • シャッタースピードの制約で利用シーンが限られる

  • ファインダーが暗い


XR500をどう使うべきか

さて、XR500の利点、欠点を列挙したところで、今度はこのカメラをどうつかうべきか考えます。

結論から述べると、僕はこのXR500は日常使いのスナップシューター、あるいはメイン機とは別用途のサブ機としての使い方が適していると思います。
その理由をこれからひとつずつ説明します。


安価な実用カメラである

何と言っても最大の理由がこれだと思います。
カメラの中には、存在自体が希少なものや、カメラ史において歴史に残る名機が存在し、それらは美術品の如くカメラそのものに価値がつくものが存在します。
XR500は、当時高級品だった一眼レフカメラ市場に圧倒的廉価で登場したという意味では歴史に残るカメラではあるのですが、安く提供して沢山売り広く普及させることが目的のカメラなので、一台一台にそれほどの価値はありません。実用機として売られた関係上、使いこまれた個体も多くコレクションや美術目的で収集できるような美品は殆ど存在していないと思っていいでしょう。
そういった観点から、現在は数千円で入手できるカメラとなっています。これは一眼レフの中では最安値の部類です。僕がこの記事を書くにあたり実際に購入したXR500は2,000円でした。

レンズもKマウント対応であることから非常に選択肢が多く、メインはペンタックス製レンズとなりますが、純正のRIKENONレンズ、マウントアダプターでM42マウントにも対応し、タムロンアダプトールや、COSINAやCHINONといった国産メーカーの物や、出自の怪しいソ連や韓国製のレンズなど、探せばいくらでもでてきます。これらすべてが選択肢となります。
僕は中一光学のCREATOR 35mm f2というデジタル用のフルサイズ対応レンズを付けていて、こちらは残念ながら露出計も自動絞りも非対応ですが、全体のサイズ感や重量バランスがまとまっていて非常に気に入っています。

XR500にCREATOR 35mm f2


用途を割り切ったシャッタースピードである

これも先に結論を述べておきますが、XR500は三脚に据えてじっくり撮るカメラでもなければ、ボケを活かしたアーティスティックな写真を撮るカメラでもありません。

XR500が発売されたころのカメラというのは、コンパクトカメラではKONICA C35が登場して約10年経ってもはや自動露出は当たり前、一眼レフでも電子化がされるようになってきてCANON AE-1やPENTAX MEなど自動露出が搭載され始めたあたりの時代です。
報道現場だけでなく一般庶民も楽しめるレベルで写真が普及している時代です。
そこにこのXR500の存在意義というのは安く手に入る一眼レフ、それに尽きると思うのです。

実際にレンズ交換をするかは別としてレンズ交換できるカメラの方がなんか良さそうとか、コンパクトカメラより一眼レフの方がなんかいい写真取れそうとか、今でもそう思う人いるじゃないですか。それです。
一眼レフルックで廉価だったから売れたカメラで、このスペックでコンパクトカメラだったらそこまで売れて無かったと思います。

これを踏まえてシャッタースピードの話になります。
低速1/8sというのは僕の経験上、手持ちでギリギリブレない限界の速度です。
めちゃくちゃ顔や体にカメラを押し付けて我が身を三脚とする、通称人間三脚という技術を会得した者のみが、1/8sより遅いシャッタースピードを手持ち出来ます。これは特別な訓練が必要です。
ちょっと頑張って息を止めてどうにかなるのが1/8s。
つまり、XR500が低速1/8sまでしかついていないのは、首からカメラをぶら下げて撮り歩くならどうせ1/8s以下は使わないんだから無くて問題ないよね、ということです。それ以下のシャッタースピードが必要なときはB(バルブ)でどうにかするか、諦めろという事だと僕は解釈しています。
経験上、僕が使うカメラは殆どが一眼レフですが、1/8s以下の低速シャッターを使う事は殆どありません。でもたしかに、1/1s-1/4sまでついていないとなんか不安な気持ちになりますよね、実際は使わないのに。低速シャッターってそういうものなんだと思います。割り切りましょう。

高速側が1/500sまでしかないというのも、割り切りで解決しましょう。
ISO100のフィルムのパッケージには、晴天時はf5.6で1/125sが適正露出と書いてあります。
これを基準に、ISO200ならf8 1/125sかf5.6 1/250s、ISO400ならf8 1/250sで撮ることを軸に考えましょう。
絞りを開けてぼかしたければシャッタースピードを速くする必要がありますが、XR500には1/500sまでしかついていません。速くできません。なので仕方ありません、絞って撮りましょう。これはそういうカメラです。


こう考えると、自ずとXR500というカメラの利用シーンが見えてきます。

  • 三脚が必要になる暗所や失敗が許されないシーンでは使わない

  • 絞りを開けて撮るポートレートやボケを活かした撮影には向かない

  • 手持ちで撮れる範囲の被写体に限る

  • 積極的に動き回ったり持ち歩いて気楽に使うカメラである

  • 絞って全体を写し取る撮影に向いている

具体的にすると、広角から50mmくらいまでのレンズをつけてISO100からISO400までのフィルムを入れてf5.6からf8やf11くらいまでで絞って撮る写真に向いていて、カメラにはストラップを通して首に下げたり手に持ったりして持ち歩きながらスナップ撮りするスタイルに向いている、ということです。

安いカメラなので多少ぶつけようが擦ろうが気にしません。
「機械式カメラも資産なので使えるうちは丁寧に…」などと言われることもありますが、それは10万20万で売っているカメラで丁寧にしてあげればいいと思います。逆に10万20万のカメラにできなくて数千円のカメラにできることがあるとするならば、そういうラフでカジュアルな使い方です。
あと、このXR500に限った話で言うと、多分買った時点ですでに傷が付いていると思いますので。


実際の使用感

ここまで、スペック上からXR500の使い方を考えてきたわけですが、実際使ってどうかというお話と、XR500についての補足説明を何点かしようと思います。

まず、実際に使用感についてですが、廉価機種というコンセプトとスペックではあるものの、使う上で触れる各部の動作についてはきちんと作られていて、決してガタついたり引っかかりやぎこちなさがあるわけでなく、すべてスムーズに動作します。この仕上がりには、曲がりなりにもカメラメーカーとしての意地というか、こだわりが感じられるところだと思いました。
ただ安く作るだけならいくらでも手を抜き材料をケチって安くできるわけですが、カメラメーカーとして作るからにはどこを安くできて、逆にどこにお金を掛けないといけないかをちゃんと判ったうえでのコストダウンがなされています。

シャッター幕についてですが、XR500はメタルシャッターが採用されています。
布幕やゴム引き幕のシャッターは劣化で伸びたり穴が開いて光線漏れすることがありますが、メタルシャッターはその点丈夫なので、安心して使うことができます。
PENTAXの一眼レフを例に出すと、M42マウントのSP系、KマウントになったKX系まではゴム引きや布幕シャッターが採用されていましたが、その後MX・ME系になるとメタルシャッターが採用されるようになります。
XR-1・XR500が発売されたのも時期的にはこれらと近く、きちんと時代の流れに則ってメタルシャッターを採用するあたり、設計に手を抜いていないことがわかります。

ファインダーが暗いという評価をちらほら見受けるのですが、使った限りではそのようには感じませんでした。
廉価とはいえまだマニュアルフォーカスの時代、ペンタミラーではなくプリズムを採用しているあたり、ファインダーの見やすさは充分に実用レベルを満たしています。
体感ではCOSINA CT-1superと同程度、PENTAX SPと比べると同程度か少し明るく感じるくらいの、至って標準的なファインダーだと思います。
流石にNkon F3やMINOLTAのアキュートマットなどと比べられると劣りますが、実用上困るようなレベルのものではないと思います。普段からマニュアルフォーカスのフィルム一眼レフを常用している僕の感想なので、この点は信じてもらっていいと思います。
暗い暗い、というのは普段デジタルをつかっていてたまにフィルムを使う人や、上記のような特別明るいファインダーを載せたカメラを常用している人の感想なのかな、と思っています。
f2よりも明るいレンズをつければまずピント合わせで困ることはないでしょうし、なによりもそんなに暗いところで切れる低速シャッターがないので、暗ければ撮るのを諦めればいいのです。
ちなみに、スクリーンの関係なのか、ピントの合わせやすさはよく使っているCOSINA CT-1superより合わせやすいと感じました。XR500の方がより精密にピントを合わせられる感じがします。誤差レベルの違いかもしれませんが。

シャッター音について、これは個人的に一番気になっていたことなのですが、僕がこれまでいろいろ触れてきたフィルム一眼の中でもXR500はトップクラスにシャッター音がうるさいです。
正確にはミラーの上下する動作音なのかな。音自体もそうですが、その音がミラーボックスの中で反響して残る残響も明らかに聞き取れて、けたたましいったらありゃしない。音にまで配慮した設計にするにはコストがかかるのか、音に関しては写真を撮る事に影響がないから無視されたのか。
ただ、これは動作確認のために空シャッターを切った時の感想で、レンズを取り付けて撮影をしてみると、このけたたましいシャッター音が心地よく感じるようになるのです。
わざとらしいくらいの「シャッターを切ったぞ!」と主張する音が、いかにもフィルム一眼を使っていると感じさせてくると言うか、手応えを与えてくれて、とても満足感を得られる感覚があります。
いま考えてみると、この手ごたえは中判のMAMIYA M645のシャッターの手応えに…似ているとまでは言わなくとも、通ずるものはあるかもしれません。およそ普通の35mmフィルム一眼では得られない手応えです。
僕の経験上、こういう仰々しいシャッターの手応えは、でかくて重いカメラ程感じられると思っていたので、XR500のような標準的なサイズでプラスチック外装のカメラでも感じられるとは思いませんでした。
その癖、シャッターのタッチは比較的バネの効いた滑らかさがあるので、それはもう無意味にシャッターを切りたくなってしまう中毒性があります。写真を撮るのが無性に面白くなってしまいます。トリガーハッピーならぬシャッターハッピー。


総括、XR500とは

ここまで長々とお付き合いありがとうございました。
総括としましては、XR500は『勝負をする場面や洒落た写真を撮るカメラではないが、普段使いにはこれ以上に無い潔さと気持ちよさを与えてくれるカメラ』という結論とさせていただこうと思います。

安いなりの理由があって、使い方はちょっと考えないといけないけど使い方の範囲内ならとても良いカメラです。これはXR500に限った話ではなく、どんなものにも言えることなのですが。
今の時代、こんなに中古カメラが溢れかえっている中で、まさかわざわざXR500にすべてを求める方もいないかと思いますので、他にメインカメラを持っていてサブ用途やいつもと全く違うカメラを使いたいときの選択肢として、XR500がちょうどいいポジションだと思います。万能ではないし最上にもなれないカメラではあると思います。それだけは断っておきます。


いかがだったでしょうか。
今回XR500を取り上げたのは、巷でよく見聞きする「低速シャッターがないのが不満」とか「ファインダーが暗い」といったネガティブな評価が本当なのか、正当な評価なのかということを検証したいというところから始めました。
製造年代から考えれば確かにチープで低機能なカメラではあるのですが、何故このような仕様になったのか、どう使えばいいのか実用面から考えると、意外にも無駄のない理に適ったカメラなのではないかと思っています。
こうしてレビューするために使ってみて、僕自身XR500が大好きになりました。
このXR500に対する魅力が、皆様にも伝われば幸いに思います。


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