見出し画像

レコードと心霊現象

ワタクシ、実は怖い話が大好きなのです。
それなりに心霊体験もあったりします。信じるか信じないかは人それぞれでいいと思いますが、実際に経験している身としては「いる」としか言えないですね。ほら、今、貴方の後ろにも…(ー ー;)。

今回はレコードにまつわる怖い噂の話をしたいと思います。

岩崎宏美「万華鏡」

「レコードに幽霊の声が入っている」というのは、昔からよくある話です。私も中学生の時、岩崎宏美氏の「万華鏡」を聴き、3日間電気をつけて寝るハメになってしまいました(笑)。

「万華鏡」とは1979年のシングル曲です。リアルタイムではまだ9歳だったので覚えはそれほどありませんでしたが、当時「万華鏡のレコードに幽霊の声が入っている。サビの部分で男の苦しそうな声が聞こえる」という噂は知ってました。その噂は何となく聞いたことがある程度でしたが、中学2年生の時「俺ん家に万華鏡のレコードあるぜ!」という友人がおり、みんなで聴きに行ったという、中学男子丸出しのことをしたのでした(笑)。

結論から言うと、その幽霊と思われた男性の声は、幽霊ではありませんでした。コーラスの男性の声だったのです。元々「万華鏡」は、ゴスペル風のアレンジが施されており、それっぽいコーラスが録音されていたのですが、そのアレンジが没となり、そのコーラスも没テイクとなってしまいました。しかし、ミックスダウン時にフェーダーが下がりきっていなかったのか、ほんの僅かにマスターテープに残ってしまい、幽霊騒ぎになったということだったのです。

それを先に知っていれば、3日間電気をつけて寝ることもなかったのですが・・。でも本当に怖かったんですよ。

オフコース「YES-YES-YES」に絡みつく様々な…

オフコースにも噂話があります。有名なのは「YES-YES-YES」という曲に、女性の声で「私にも聞かせて」という声が入っているというのです。2コーラス目の中盤、街頭のノイズSEに紛れて聞こえるとのことでした。この噂は発売後すぐに話題になり、その後様々な尾ひれがついていきました。それは私が大学生の頃、1989〜90年辺りのことです。

その噂にはストーリーもありました。レベッカのNOKKOの後輩がオフコースファンで、オフコースのライブに行く途中で交通事故に遭って亡くなってしまい、レコードの声はその人の声だ、というのですが・・。

実はこの話、非常に興味深い話なのです。

これまた結論から言うと、「YES-YES-YES」の声は幽霊ではありません。しかも、幽霊の声とされる女性の言葉は「私にも聞かせて」ではなく、「私のこと好き?」という言葉でした。

「YES-YES-YES」の2コーラス目は「君の嫌いな東京も 秋は素敵な街 でも大切なことは ふたりでいること YES-YES-YES」の後に、街頭のSEに被さる形で「ねえ、私のこと好き?」という女性の声が微かに入り、次のフレーズ「もっと大きな声で 聞こえない聞こえない」に繋がっていくのでした。つまり、その女性の声は「聞こえない聞こえない」に繋がる演出という訳なのです。オフコースらしい緻密な仕掛けですよねぇ。

しかし何故、「私のこと好き?」が「私にも聞かせて」になり、NOKKOの後輩まで出てくるのでしょうか?ここからが面白いところなのです。

実はこの話、3つの怖い話がこんがらがっているのだと思われます。

まず、1つ目の本当に聞こえる女性の声は、そもそも演出であるというお話は前述の通りです。

2つ目、NOKKOの後輩の件は、レベッカの「MOON」という曲に「せんぱ~い」と叫ぶ幽霊の声が入っているという噂がありました。しかしこれも、幽霊の声ではないということが後に判明しております。それでもリリース当時は大きな話題となり、音楽ファンは恐怖に震え、心霊ファンは喜びに震えました(笑)。

そして3つ目の「私にも聞かせて」ですが、これは1970年代に遡ります。当時、人気絶頂だったグループ「かぐや姫」のライブがラジオで放送されたのですが、南こうせつ氏のMCの後に「私にも聞かせて」という声が至近距離で入っていたというのです。これはラジオでそのまま放送され、大騒ぎとなりました。未だその声の原因は分かっていませんが、亡くなったファンの声だという話になっているようです。

かぐや姫のコンサートに行く途中に交通事故に遭って亡くなった人がいるとか、コンサート直前に重い病気で亡くなった人がいるとか、幾つかの説があるようですが、亡くなってしまったためコンサートに行けず、どうしても行きたかったという念がそのような現象を引き起こしたのでしょうか…。

この話に関しては、本当のことが分かっていません。ただ、不思議な声が入ってしまった放送が流れたのは事実です。ライブ収録時に観客の声が入ったのではないかという意見もあるようですが、観客に向けてそんな単指向性の強いマイクを使うはずがありませんし、そんな声を拾えるのであれば、もっと多くの声を拾っていることでしょう。録音しているのは放送技術のプロフェッショナルです。放送事故になりかねないことをするはずもありません。そんなことが起きたら懲戒処分ものですから。

「YES-YES-YES」の心霊現象は、このように幾つかの噂が絡まって出来上がったものでした。しかも面白いのは、絡み合った噂の年代がバラバラなことです。「YES-YES-YES」のシングル発売は1982年6月10日ですが、レベッカの「MOON」のリリースは1988年2月26日、かぐや姫のライブは1975年です。NOKKOの後輩が「YES-YES-YES」以前のオフコースのコンサートに行くとすれば「over」か「we are」のツアーでしょうから、NOKKOの中学か高校の後輩だとすれば1965年生まれとして高校1~2年。コンサートに行き始める年代ではあるでしょうが、そもそも「YES-YES-YES」の頃にレベッカはデビューすらしていません…。

そんな風に、噂というものは冷静に考えれば有り得ないことが、まことしやかに拡がっていくものなのだということが分かります。まぁ、この程度の噂であれば笑い話で済みますから良いんですけどね。

今は色んなことが瞬時に伝わるデジタル社会ですが、この話のように長い年月を経て、上書きされていく噂話というのもアナログチックで面白いですね。時間の流れがゆったりしていて、昭和的でなんだかホンワカしてしまいます。

それにしても、かぐや姫のラジオの件は本当に不気味です。それが本当だとは言えないとしても、本当にそういうことはあるんですよね。それはアナログだろうがデジタルだろうが関係ないと思います。
いつも聴いている曲をもう一度じっくり聴いてみると、聞こえなかったものが聞こえるかもしれませんよ・・・・・。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?