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財前ぜんざい@オリジナル小説
2016年3月30日 18:16
彼らの住んでいるマンションの入り口に、私は見覚えがなかった。昨日、突然の発作によって、このマンションを後にしたが、入った記憶がまったくなかった。出て行ったということは、このマンションに入ったということだ。何か一つ覚えていてもいいはずなのに、記憶がすっかりなくなっている。忘れているというものではなく、本当に記憶の流れが途絶えているのだ。 綺麗なエントランスだった。雅臣がポケットから鍵を出して、