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「クラリネット壊しちゃった」なのか、「クラリネットを壊しちゃった」なのか(エッセイ)

僕の大切なクラリネット、パパから貰ったクラリネット、でお馴染みの曲をご存知だろうか?

そうそう、あの曲。オ パキャマラド パキャマラド パオパオ パンパンパン という謎の擬音がある曲。実はこれ、元々はフランスの軍歌で、このパートの意味は「進もう戦友よ 進もう」というもの。クラリネット全く関係ない。それで、タイトルは?

そう、この曲のタイトル。「クラリネット壊しちゃった」派と「クラリネットを壊しちゃった」派の二つに分かれている。え、どっちなんすか?というのが、今回の話。ここまでくだらないテーマのnoteがかつてあっただろうか。

とりあえずWikipediaを見てみる。項目名は、「クラリネットをこわしちゃった」となっている。しかし、「文献によっては「クラリネットこわしちゃった」と表記される。」とあり、言及を避けた形だ。歯切れの悪い政治家の答弁を見たような気持ちになった。ただ、どうやらどちらでも良いというのが、現在のクラリネットの位置らしい。これはおそらく、「決めるとガタガタ言われそうだし...。」という消極的態度だろう。

ならば、今ここで決めてしまえばいい。クラリネット壊しちゃったに、「を」を入れるのか入れないのか。それではこれより、会議を始める!

文法の観点から見ていく。文法的には、もちろん「を」が入ってる方が正しい。格助詞の「を」は対象を表している。この助詞がなくては、クラリネットと壊しちゃったのは繋がらず、関係性は見えてこない事になる。例えば、「クラリネット壊しちゃった」という一つの単語としても解釈できる。

しかし、現実問題、そこまで気にしている人はいない。助詞がなくても、ああクラリネットが壊れているのだな、と理解できるものにはなっている。この「を」抜き言葉は、日常生活でよく使われる、砕けた日本語と言っていい。パン食べちゃった、チラシ捨てちゃった、など本来必要な「を」を抜く事で、言葉にリズム感を出している。逆に「を」が入るのは、かしこまった場面という事になる。会社の社長なんかに会う時は、パンを食べてしまいました、チラシを捨ててしまいました、となる。

では、この曲はフォーマルかカジュアルか。言うまでもなく、家とカジュアルな場面である。しかし、少年の心情を想像しよう。クラリネットを壊し、恐らくは親に怒られてしまう。それを自分で告白しなくてはならない、という切羽詰まった場面である。ましてや、どうしようどうしよう、と焦るタイプの子だ。謝罪は緊張を伴うものである事は想像に難くない。そんな子が、謝るときに「を」を抜くだろうか?いや、抜かない。こういう子はきちんと、「お父さん、クラリネットを壊してしまいました。ごめんなさい。」と言えるはずだ。

以上の事から、本会議ではこの曲を「クラリネットを壊しちゃった」というタイトルにする事を決定する。いやー、白熱した会議でしたね。それでは、次は「クラリネットを壊しちゃった」の壊しちゃった、ひらがなにするか漢字にするかを会議...。え、もういい?僕も全く同じ事を思ってました。

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