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ブリキのバケツ(詩)

ベルトコンベアから溢れた段ボール箱
床に落ちちゃってるから全部廃棄さ

誰もいない工場の隅っこは雨漏りだらけ
垂れた雫を飲んで生きる蛙が俺さ

言われた事すら忘れて 迷惑かけるなら
ブリキのバケツになって 中身は何もなくて
干からびた夏の中で 背景と同化していたい

風が吹き カラカラと持ち手が鳴る 寂しい

誰も彼も自分よりも有能だと思える夜に
首を括る勇気すらない事に気がついた

誰もいない深海でも浸透圧が苦しめてくる
貝なんてなれないから来世も憂鬱さ

言われたことすら忘れて 嫌われていくなら
ブリキのバケツになって 中身は何もなくて
赤く染まる夕暮れの中で ただ反射をしたい

風が吹き カラカラと持ち手が鳴る 寂しい

早く僕を諦めてほしいの
透明人間にしてほしいの
無闇な期待ってやつはさ
ひたすら僕を苦しめてる

言われたことすら忘れて 気を遣われるなら
ブリキのバケツになって 中身は何もなくて
星が綺麗な深夜の中で 暗闇に紛れていたい

風が吹き カラカラと持ち手が鳴る 寂しい

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