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昔から犬が嫌いです。
明確な理由は自分でもわかっていて、そこまで好きではない親戚が実家に遊びに来るときに連れてくるあのちっこい犬。
あいつには本当に手を焼いた。

名前は多分チョコだったと思う。あの犬はもう家中を勝手に歩き回るし少し臭いし最悪なのは僕の自室にうんこをし、それを僕が素足で踏みつけると言う事件が起こった夜。

それ以来本当に犬が嫌いになった。
その割になぜか今までの人生、動物に好かれることが多い。野良猫やリードに繋がれた犬には近寄られるし、動物園のふれあいゾーンなんかではみんな僕に寄ってくる。

阿佐ヶ谷の焼き鳥屋で楽しく食事をしているときに隣に犬を連れた夫婦がやってきた。
常連らしく、店主も何も言わず、犬を連れた男性は僕の横に座った。
やきとりひとつくれやと言ってるような、私ってかわいいだろって言ってるようなあのつぶらな瞳。
無性に腹が立った。
犬であることだけで周りの人間に可愛いともてはやされ、居酒屋にまで入店を許される犬。
何度か顔見知った関係だと思っていた店主に僕は覚えてもらえておらず、犬は覚えてもらっている。
腹が立った僕は犬の目を見ながら少しだけ微笑み、そいつが一生味わえないであろう焼き鳥や酒のアテを食い、二階堂ソーダ割りで流し込み会計を済ませた。

帰り道ふと考えた。でもあの犬可愛かったなと。ちょっと触りたい気持ちもあった。
考えてみたらInstagramで犬のアカウントをフォローしてる自分もいる。
じゃあなぜあそこまで犬が嫌いと思ってたのか。新しい議題が脳内会議にあげられる。

答えは簡単だった。
犬を飼ってる人の、見て私の犬可愛いでしょ感、この世の全員が犬を好きだと思いこみ行動している様、のこのこと居酒屋に入ってきたり、ちょっと犬が吠えてきたりくっついてきても怒らない様子が嫌いだったのだ。
そう言うことか。僕は犬が嫌いじゃなくて犬を飼ってる人が犬を連れてみんなに絡んでる様が嫌いなんだと初めて認識した。

それからはあまり街で犬に対して嫌悪感を感じることはなくなり、日常に平穏が戻った

彼女にこう言われた「大家さんの飼ってる子可愛いよね」
僕はこう答えた「あ、あの犬っころ?」

犬に対しての感情はまだフラットではないらしい。

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