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創世記ノート 神の救いのみわざのはじめと10の歴史

概観

神の御救いのみわざを、天地創造以降の地上における出来事に注目してまとめた書巻。「知恵の書」にあるヨブ記のようには、天の裏話は記されていません。

宇宙の創生物語から、人間の堕落物語を経て、数千年の時代を鳥瞰する「創世記」は、人間の本質がその堕落後の当初から現在に至るまで変わらない者であることを印象付けています。

エデンの園から現代に通じる歴史の記録

「エデンの園」のパラダイス状態が、いったいどのようなものだったのか、今となっては、その片鱗を知ることしか許されていませんが、罪のない状態であったといわれる人間原初の姿を取り戻すこと、むしろ、さらにそれを超えるものとして、新しく作り変えられることが、聖書全体に流れるテーマのひとつであることは、確かです。その原初人間像をわずかに示しているのが、唯一、この創世記なのです。

世界に数多くの宗教の聖典があるでしょうが、創世記のように、現在にまで続いている人間世界の歴史を無からの創造の原初からを伝え、人間の根本問題を浮き彫りにしながら、永遠の神がずっとこの人間にかかわり続けてきたことを証言する書物としては、他に類ないものだと思います。

創世記の資料と成立

伝承として伝えられたのは、それこそ、アダムの時以来でしょうが、文字に書きとどめられて伝えられるようになったのは、モーセの時、紀元前15世紀。文字が使われていたのは、5000年以上も前からであったと言う考古学の検証結果もふまえると、モーセが書きとどめる以前から資料としての文章があったと考えても、間違いではないのでしょう。この年代の古さ。まとまったものとして伝えられる日本の最古の歴史文書が、紀元8世紀の古事記であるのと比べると、古さの程度の違いが歴然です。

もちろん、学者によっては、聖書の成立を紀元前8世紀くらいにまで引き下げる人もあるようですが、そして日本で一般に出回っている聖書の解説本はその立場をとっているのがほとんどですが、そうだとしてもなお、その古さを感覚としてイメージするのは難しいものです。

創世記の中に時々見かけられる、後世の状況を示す記述の存在が、モーセよりもさらに後に創世記を含む「モーセ五書」、あるいは「モーセの律法」と呼ばれる五つの書巻が編集され、完成したと考えさせる要因になっています。預言者サムエル(BC1107年?~BC1030年?)が、最終的に五書をまとめたという論は、納得がいくものだと思います。

10の系図の書

創世記は、「はじめに」の天地創造に続く、長短10個の「toledoth 由来・系図トレドース」の巻物の集まりです(2:4; 5:1; 6:9; 10:1,32; 11:10; 11:27; 25:12,13; 25:19; 36:1,9; 37:2)。親から子へと口伝で伝えられてきた、神とどのように関わってきたかのそれぞれのひとまとまりだったでしょうか。

最近は、まとまった物語として聖書のそれぞれの書巻を読む傾向に傾いていますが、本来的にそのように読むべきものだったでしょう。そうでなければ、読者の恣意にまかせた解釈で終わってしまうことになります

創世記をどのように読むかは、聖書全体をどう読むかを決定づけるものでしょう。はじめが肝心です。

全体の概略・段落ごとのタイトル

はじめに(1:1-2:3)  
   (1) 天地創造とその後の宇宙(1:1-2)
   (2) 六日間の創造(1:3-31)
   (3) 第7日目(2:1-3)

1.天地創造の由来(2:4-4:26)   主な登場人物: アダム・エバ;  カイン・アベル 
   (4) 人間の創造とエデンの園の周辺(2:4-14)
   (5) エデンの園のきまりとエバの創造(2:15-25)
   (6) 神に不信となりとがを得た人間(3:1-7)
   (7) 神の呼びかけに対する人間の応答(3:8-13)
   (8) 罪に定められたへびと人間(3:14-19)
   (9) エデンの園からの人間の追放(3:20-24)
   (10)アベルを殺害したカイン(4:1-16)
   (11)カインの子孫とセツ(4:17-24)
   (12)アダムの子セツ(4:25-26)

2.アダムの系図(5:1-6:8)   主な登場人物: エノク 
   (13)アダムから7代目エノクまで(5:1-24)
   (14)8代目メトセラから10代目ノアまで(5:25-32)
   (15)ネピリムの由来(6:1-4)
   (16)人の悪に対する神の決定(6:5-8)

3.ノアの系図(6:9-9:29)   主な登場人物: ノア、セム、ハム、ヤペテ 
   (17)ノアに対する神の恵みの命令(6:9-22)
   (18)洪水直前の主の命令(7:1-5)
   (19)洪水ですべてが滅び箱舟にいたものだけが残る(7:6-24)
   (20)洪水が引いて地が現われる(8:1-14)
   (21)ノアたちに対する神の約束(8:15-22)
   (22)ノアたちに対する神の祝福(9:1-7)
   (23)ノアと子孫に対する神の契約(9:8-17)
   (24)セム、ヤペテへの祝福、ハムへののろい(9:19-28)

4.セム、ハム、ヤペテの系図(10:1-11:9)   主な登場人物: ニムロデ 
   (25)ヤペテの子孫(10:1-5)
   (26)ハム(末の子)の子孫―初の権力者ニムロデ―(10:6-20)
   (27)セム(ヤペテの兄)の子孫(10:21-32)
   (28)全地の言葉が乱された由来(11:1-9)

5.セムの系図(11:10-26)   主な登場人物: テラ 
   (29)(アダムから11代目)セムから(19代目)テラまで(11:10-26)

6.テラの系図(11:27-25:11)  主な登場人物: アブラハム、サラ、ハガル、イシマエル、イサク 
   (30)テラの子孫と移住(11:27-32)
   (31)アブラムのカナン移住(12:1-9)
   (32)エジプト寄留時の事件(12:10-20)
   (33)ロトとの別離と主の約束(13:1-18)
   (34)カナン戦争に巻き込まれるロト(14:1-12)
   (35)ロトと財産を取り戻しメルキゼデクの祝福を受ける(14:13-24)
   (36)アブラムへの神の契約(15:1-21)
   (37)ハガルによるイシマエルの誕生(16:1-16)
   (38)契約のしるし割礼の定めと実施(17:1-27)
   (39)主の顕現とイサク誕生の確約(18:1-15)
   (40)ソドムとゴモラの裁きの予告とアブラハムのとりなし(18:16-33)
   (41)ソドムの滅びとロトの救い(19:1-29)
   (42)ロトと娘たち、その子孫(19:30-38)
   (43)ネゲブ寄留時の事件(20:1-18)
   (44)イサクの誕生とイシマエルの追放(21:1-21)
   (45)ペリシテの地でのアブラハムとアビメレクとの契約(21:22-34)
   (46)イサクをささげる試み(22:1-19)
   (47)ナホルの子供たちについての知らせ(22:20-24)
   (48)サラの死と埋葬地の取得(23:1-20)
   (49)イサクの妻リベカを得る(24:1-67)
   (50)アブラハムの再婚、死(25:1-11)

7.イシマエルの系図(25:12-18)  主な登場人物: イシマエル 
   (51)東部に移り住んだイシマエルとその子孫(25:12-18)

8.イサクの系図(25:19-35:29) 主な登場人物: イサク、エサウ、ヤコブ、ヤコブの12人の子供たち 
   (52)イサクの子、エサウとヤコブの誕生(25:19-26)
   (53)長子の特権をエサウがヤコブに売り渡す(25:27-34)
   (54)ペリシテ人の地への寄留(26:1-16)
   (55)ペリシテ人との井戸の争い(26:17-33)
   (56)エサウの妻たち(26:34-35)
   (57)イサクの祝福をエサウから奪うヤコブ(27:1-40)
   (58)エサウの憎しみとヤコブの逃避(27:41-46)
   (59)ヤコブのパダンアラム寄留とエサウの次の妻(28:1-9)
   (60)べテルでのヤコブの夢と誓い(28:10-22)
   (61)ヤコブとラケルの出会い(29:1-12)
   (62)ラバンに対する労働とヤコブの結婚(29:13-30)
   (63)妻たちの争いとヤコブの子たち(29:31-30:24)
   (64)帰郷する準備をするヤコブへの報酬(30:25-43)
   (65)帰郷に向けて出立するヤコブとラバンとの契約(31:1-55)
   (66)マハナイムでのヤコブの悩みとヤボクの争い(32:1-32)
   (67)エサウとの再会と祭壇のシケム建造(33:1-20)
   (68)デナの事件でシケムの町をシメオンとレビがかすめる(34:1-31)
   (69)シケムを出立しベテルで神の言葉を受ける(35:1-15)
   (70)ベニヤミンの誕生とラケルの死(35:16-20)
   (71)ルベンの姦淫、ヤコブの子たち、イサクの死(35:21-29)

9.エサウの系図(36:1-8; 9-43)  主な登場人物: エサウ 
   (72)セイルに移るまでのエサウの子達(36:1-8)
   (73)セイルでのエドム人の系図(36:9-43)

10.ヤコブの子孫 (37:1-50:26) 主な登場人物: ヤコブ、ヨセフと他の兄弟たち 
   (74)ヨセフの夢と彼をエジプトに売り渡した兄弟たち(37:1-36)
   (75)タマルによるユダの子ペレヅとゼラ(38:1-30)
   (76)ヨセフがエジプトで投獄される(39:1-23)
   (77)獄中で給仕長、料理長の夢を解き明かす(40:1-23)
   (78)パロの夢を解き明かしてエジプトの宰相となる(41:1-46)
   (79)豊作期の到来とヨセフの子供たちの誕生(41:47-52)
   (80)飢饉の到来とヤコブの子達のエジプト来訪(41:53-42:5)
   (81)ヤコブの子達に対するヨセフの対応(42:6-38)
   (82)ヤコブの子たち、ベニヤミンのエジプト来訪(43:1-34)
   (83)ヨセフがヤコブの子達に素性を明かし一族をエジプトに招く(44:1-45:28)
   (84)ヤコブの一族のエジプト移住(46:1-47:12)
   (85)飢饉の継続とエジプトの奴隷化(47:13-26)
   (86)死期の近づいたヤコブへのヨセフの誓い(47:27-31)
   (87)ヤコブからヨセフの子らへの祝福(48:1-22)
   (88)ヤコブの子らに対する預言とヤコブの死(49:1-33)
   (89)ヤコブの埋葬(50:1-14)
   (90)ヤコブの子達とヨセフの最期(50:15-26)

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