はじロー(20)歴史的な世界の相続人
はじめて読むローマ人への手紙4章13-16節
歴史的な世界の相続人
イスラエルといえばパレスチナ問題が思い浮かびます。中東の一地方の問題だと、普通は思われています。でもパウロは「世界」の相続について語り始めます。
私たち日本人にはイスラエル・パレスチナ問題は遠い地域での紛争に思えてしまいますが、「世界」となると日本も他人事ではなくなります。日本の地だって「世界」の中の一部なのですから。
今から4千年前のアブラハムへの神の約束とは、もともと何だったのでしょうか。世界を相続させる、って?
第一は祝福の約束。メソポタミア、イラクの「ウル」がアブラハムの故郷。そこからトルコにある「ハラン」に移ります。直線距離で約900キロ。ハランで受けた言葉が以下の通りでした。
「あなたは、あなたの土地、
あなたの親族、あなたの父の家を離れて、
わたしが示す地へ行きなさい。
そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、
あなたを祝福し、
あなたの名を大いなるものとする。
あなたは祝福となりなさい。
わたしは、あなたを祝福する者を祝福し、
あなたを呪う者をのろう。
地のすべての部族は、
あなたによって祝福される。」
創世記12章1-3節
第二は子孫と相続地の約束です。アブラハムがカナンの地、今言うパレスチナの地に入ったところで聞いた神の言葉でした。ハランから直線距離で700キロ弱です。
「わたしは、あなたの子孫にこの地を与える。」
創世記12章7節
これが、相続争いのようなものが起きるもとになっているようです。「子孫」とは誰のことを指すのか、「この地」はどこなのか、と。
パレスチナ問題は、アブラハムの二人の息子の争いとも言えます。長男はイシュマエルでしたが、約束の子と呼ばれるのはイサクでした。イシュマエルの子孫がアラビア人として現在に至っているようです。そしてイサクの子孫がイスラエル。(創世記19章)
創世記はその後、ずっとイサクの子孫を追います。神に約束され25年して生まれた子だからでした。イサクの子はヤコブ、改名してイスラエルとなります。その子たちは12人で、四男ユダの子孫からダビデ王が現れ、王国の版図はアブラハムへの神の約束に近づきます。3千年前のことです。その子孫から、イエス・キリストが生まれたのでした。2千年前に。
ややこしいのが、アブラハムの後のモーセの律法です。イスラエルが守るべき戒めの集大成。アブラハムへの約束がなされてから500年後に、一つの大きな民族となったイスラエルに与えられたものです。
それで、イスラエルは自分たちがアブラハムの子孫であり、その証しに割礼をし、さらにモーセの律法を受けその律法を守っている、と神に訴えているのでした。相続者として必要かつ十分な条件を満たしているではないか、と。
ところが肝心なことが欠けていたのです。神の義を満たす信仰でした。イエス・キリストも弟子たちに、「わたしはあなたがたに言います。あなたがたの義が、律法学者やパリサイ人の義にまさっていなければ、あなたがたは決して天の御国に入れません。」(マタイ5章20節)と語っていました。律法学者らは当時のユダヤ教の教師でした。彼らは律法を教えていても、神の義には至っていなかったのです。
というのも、律法は神の義を指し示してはいても、神の義を与えるものではなかったからです。そして、神の義は恵みによって神から与えられるべきものでした。
神の義を与えられた人が、律法を満たす者とされ、相続を受けるのです。
つまり、すべての基盤はアブラハムの信仰でした。イスラエルの過ちは、あとから受けた律法が、先にあった約束よりもずっと重要だ、と思ってしまったことだったようです。
4千年前に治安の保証もない見知らぬ土地に、神の言葉に聞き従って移りゆき、そして約束を受けた。そのアブラハムの信仰がどのような信仰だったのか。それがいよいよ次に語られます。
ローマ人への手紙4章13‐16節
というのは、世界の相続人となるという約束が、アブラハムに、あるいは彼の子孫に与えられたのは、律法によってではなく、信仰による義によってであったからです。もし律法による者たちが相続人であるなら、信仰は空しくなり、約束は無効になってしまいます。実際、律法は御怒りを招くものです。律法のないところには違反もありません。そのようなわけで、すべては信仰によるのです。それは、事が恵みによるようになるためです。こうして、約束がすべての子孫に、すなわち、律法を持つ人々だけでなく、アブラハムの信仰に倣う人々にも保証されるのです。アブラハムは、私たちすべての者の父です。(新改訳2017)
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