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真面目で一途で不器用なお兄ちゃん

私が付き合った男性たちには共通点がある。

まず一つが、お兄ちゃんであること。
それも弟がいるお兄ちゃんだ。
一人だけ三人兄弟の三男坊がいたけど、その人以外は全員が弟のいるお兄ちゃんだった。

もう一つが男子校に通っていたこと。
公立の共学校育ちの人もいたが、ほとんどが中高一貫の男子校に通う人だった。そのため、女性慣れしてなさそうな人が多かった。

元彼に「僕の中で女の子は小学六年のときで止まってたみたい。だから凛を初めてみたとき、あれ(小学六年のときの同級生の女の子)が、たった六年でどうしてこう(大学時代の私)なるんだ?ってびっくりした」と言われたことがある。
そして、私を未知のものみたいに慎重に扱っていた。
とても大事にされたなと思う。

もう一つは真面目ということ。
めちゃくちゃな一面もあったけれど、やはり真面目に勉強しないと京大や医大には合格できないと思う。
父を教訓に、付き合うなら真面目な人と考えていた私には、彼らのこの一面はとても嬉しいものだった。

真面目な性格と関係あるのかもしれないが、彼らはとにかく一途だった。
勉強でも趣味でも、彼らは一つのことを深く探ろうとする癖がある。粘り強い。
わからないからといって投げ出したりしない。知ろうとするし解こうとする。そして他のことが目に入らなくなる。
専門職に就く人が多いのもそのためだろう。

結婚するならともかく、付き合うことはお試しみたいなもので嫌だったらすぐに別れて他の人と付き合えばいいと考えていた私は、彼らのしつこさに驚いた。

「別れたい」と言えば、どうして別れたいのか理由を問われ、理由を答えればその問題を解こうと頭をひねる。
正直、恋愛ってそういうもんか?と首をかしげたが、彼らの考える癖はいつしか私に伝染して、最後は私も一緒に考えていた。
でも、こういうタイプは別れるとき、すごくもめるんだよね。
友人から「いつのまにか連絡が途絶えた」とか「よくわからないまま別れることになった」という話を聞くことがあったけど、私の場合、別れるときは常に修羅場だ。
あんなに泣いて怒りをぶつけあって別れるなんて、どこの昼ドラやねん。毎回、一気に老け込んだわ。

今はアプリで、気軽に出会えて付き合えて、合わなければさっさと別れてまた出会い求めてという感じなのだろうけど、元彼らはこういう器用なことはできないんだろうな。
確認したことないから知らんけど。

学生時代、キョウが「お見合いはできない」と言っていたことを思い出した。
「お見合いなんて何も難しくないと思う」と言っても、彼は「結婚を頭に入れて、知らない人といきなり会うなんて僕にはやっぱり無理だ」と言う。
頭のいい人はどうしてこうもいろいろ考えすぎるんだろうと思ったけれど、おそらくキョウだけじゃない。元彼たちも、きっと同じだろう。彼らは、とても不器用だから。

ヨーグルと初めて会ったとき、ずっと怒ったような顔をしていて表情の変化に乏しかった。
でも彼が怒ってるんじゃなくて緊張しているだけということは元彼たちから学んでいる。
話すことといえば小説の話ばかり。これも元彼たちと同じだなと思った。

男性の中には「女の人と会ってるときは仕事のことは忘れたい」と、仕事や勉強の話題を嫌がる人がいる。
でも、元彼たちはみんな自分の学んでいることや仕事の話を好んでしていた。それが不器用な彼らの最も話せる分野ということもあるが、何より自分の仕事や勉強が好きだからじゃないかと思ってる。

とにもかくにも、私の周囲にいる男性は、昔、私が読んだ少女漫画に出てくるような明るくて積極的でキラキラしている男の子とは真逆の位置にいるような人たちだなとずっと思っていた。

でも、最近の少女漫画を知ってびっくりした。

とても優秀だけど、不愛想で怖くて、周囲から遠巻きにされている孤独な男性のところに無理やり嫁がされた主人公。でもその男性は実は真面目でいい人。ただ不器用なだけ。
そして一途に主人公を溺愛する。

もしかして。

元彼たちは、今の女性から最も需要があるタイプだったのかもしれない。