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ゲームで浦島太郎になる

ヨーグルは小説を書く以外にも、いろんな仕事をしている。
例えば、エッセイや評論、解説を書く。
小説や映画、ドラマのコメントを求められることもある。
講演会やサイン会があったり、大学などで小説を書く講座の講師をしたこともある。
随分と昔の話になるけれど、イベント会社から脱出ゲームの制作にあたって原案の依頼もあった。断っちゃったけど。

総じて、小説家というのは非常に人と関わりの深い仕事だと思う。

それまで小説家は家に閉じこもって、誰とも会わず、ずっと小説だけを書いているイメージしかなかったので、彼があちこち出かけたり人と会ったりしているのをみて、とても意外だった。

さて、その中で変わった仕事だなと思ったものの一つにゲームをプレイして感想をきかせてほしいというものがあった。
もともと本はたくさん送られてくるし、映画の試写会に招待されたりするのだが、まさかゲームまでくるとは思わなかった。

ヨーグルはゲームに興味がなく、スマホゲームさえしたことがないらしい。

「凛子はゲームで遊んだりする?」ときかれた。
ほぼない。
結局、二人ともよくわからないのでお断りしたのだが「とりあえずプレイだけでもしてみてください」とゲームが送られてきた。

まぁ、せっかくだし。
とりあえず、やってみましょう、ということで二人で遊んでみることにした。

驚いた。

なんだ、これは!
小さい!
小さすぎるではないか!

いつのまにソフトってこんな小さくなっちゃったの!
え?そこ?と思われた方。
私の中でゲームといえばファミコンやスーパーファミコンなのだ。
そこで時間が止まってる私は、指先でつまむような、その小さな小さなソフトに度肝を抜かれた。

さて、小さな小さなソフトにびっくりした私をさらなる驚きが待っていた。

出てきた画面にたまげた。

なんだ、これは!
キレイ!
キレイすぎるではないか!

え?そこ?と思われた方。
私の中でゲームといえば「スーパーマリオブラザーズ」なのだ。
あのカクカクしたマリオが横へ横へと動き、ジャンプしてカクカクしたキノコをとり、カクカクしたクリボーをポコッと踏みつけたりするのだ。せっかくカクカクキノコで大きくなったのにカクカク亀にぶつかってチャチャチャッと小さくなっちゃってムキーッとなるのが、私のゲームなのだ。
そこで時間が止まっている私は、そのなめらかなキャラクターにたまげてしまった。
しかも、驚きで私の口から飛び出した魂を吸い込むかのように、なんとなんと

「これは○○ね」


なんだ、これは!
喋っている!
喋っているではないか!!

え?そこ?と思われた方。
私の中でRPGといえば、FF6なのだ。
あの深い深い物語に感動した。
彼らは喋りはしなかった。彼らの台詞はピピピピッと文字になって画面に出ていた。
そこで時間が止まってる私は、キャラクターが声を出していることが信じられなかったのだ。

さて魂が吸い込まれもぬけの殻となった私の耳に、今度はとんでもないものが吹き込まれる。

ちゃらららら~♪

なんだ、これは!(しつこい)
なんて美しい音楽!
美しすぎるではないか!

え?そこ?と思われた方。
私の中でゲーム音楽といえば電子音なのだ。しかも音域が極端に狭い。
でもFF6の音楽は最高だった。CDまで買った。あと、ロマンシング・サガもいい曲だなと思いました。
臨場感あふれるBGMが、魂の抜けた私の身体に満ち満ちていく。

なに、これー。本当にゲームなの?
もうほとんどドラマじゃない?
いつの間にゲームはここまで進化したんだろう。
興奮する私に、ゲームを全く知らなかったヨーグルは「ふ~ん、これがゲームか」と冷静にプレイを始める。

ところが。

プレイを初めて数分後。私たちはちょっと混乱する。
あれ?コントローラーのスイッチ?ボタン?なんか多くない?
こんなにあったっけ?上下右左、あとAボタンとBボタンだけだったんじゃないの?どこまでも基本はファミコンな私。

「ねぇねぇ、このボタン何に使うのかしらね?説明書ない?」
「説明は、この画面でみるんじゃないの?」

なんと!説明書がない!(昭和感まるだし)
う~ん、私はね、説明書をみながらプレイしたいんだけどね(やっぱり昭和)

大興奮してゲームをはじめたものの、ほどなく二人ともギブアップしてしまう。

わからないのだ。
どのボタン押していいのか、わからない。
とりあえず二人ともゲームの内容は理解しているし、なんなら「たぶん、こういうことじゃない?」とゲームの謎もクリアできてるんだけど、そのクリアに至るまでの操作ができないでいる。
自分で書いてて「なんや、それ」とつっこんでしまうわ。

「ここ押したらいいんじゃないの?」
「ん?でも、何も動かない」
「違った?じゃあ、こっちは?」
「違うと思う。あれ?前の画面に戻ったな」
「ええー、またやり直しなの?」

といった感じで遅々として進まないのである。

「子供がゲームばっかりして」と悩んでる世のお母様方に言いたい。
こんなややこしい操作方法を即座に理解して楽しんでる子供たちって、実はすごい頭脳の持ち主なんじゃないでしょうか。
それとも「お買い物は現金に限るわね」みたいな生活している私が化石なだけですかね。

結局、二人ともやめてしまった。
担当さんから「いかがですか?楽しんでいただけてますか?」とメールがきて困っている。

だって、最後までクリアできる気がしないんだもん。