りえるあなざー

「ちょっと!これは何?!」

ある日の午後、リビングで持ち帰った仕事の確認作業をしていたはずなのに、平和な日常が崩れ去るのは本当に突然だ。

「ん?それは何?」

よくわからず問い返す。

「君の部屋の掃除してたらこんなの出てきたんだけど!」

そう言って、える姉が詰め寄ってくる。
その手には封筒らしきものが握られている。

「これ!ラブレターじゃないの?!書類の間に隠してあったよ!」

青天の霹靂とはこのことだろうか。
身に覚えが無さすぎて、なぜ責められてるのかわからない。
しかし、える姉が激怒してるのはわかるので、まずは床に正座をした。

「える姉ごめん、身に覚えがないんだけど。」

そう答えるが、その返答がお気に召さなかったようで

「そんなこと言って、浮気の証拠捕まれて焦ってるんでしょ?りえるというものがありながら他の女のラブレター大事に保管してるとかありえないんだけど?」

瞳孔が狭まり、額には特大の青筋が浮いている。
これはしばらくしないと落ち着かないやつだと理解し、この後の展開に覚悟を決める。
こうなるとしばらくはダメだろう。
身に覚えのないことを認める訳にはいかないから、ダメ元で説得は続ける。

「いや、ラブレター?のことは本当に知らないんだ。ちょっと見せてもらってもいい?」

「これ見てよーく思い出して!」

える姉はそう言って今回の元凶を差し出してくる。
黙ってそれを受け取った。
見た目はピンクの可愛らしい封筒だ。
裏返すとハートのシールで封がされている。

「そんな可愛らしい封筒なんて、女の子からしか送られないでしょ?!絶対若い子だし!」

未だに年齢差は、える姉にとって地雷のようだ。そんなに気にしなくてもいいのに。
まぁ、そんな所も可愛いんだが。

「まぁまぁ、とりあえず中身は読んだ?」
「人の手紙勝手に読むほど、りえる非常識じゃないもん!」

もん!いただきました。
さすがにヒートアップしすぎて可哀想になってきた。ひとまず手紙の中身を確認する。

手紙の内容に目を通し、なるほどと納得した。これはこちらに非がありそうだ。

「ごめんえる姉、これは全面的にこちらが悪いです。」
「やっぱり浮気だったんだ!」

更に怒りが増したようだ。

「いや、浮気ではないんだけど。」
「そんなこと言って!どうせ年増のりえるなんて捨てられるんだぁー!」

える姉が泣きそうになっている。

「不安にさせてごめん!この通り!」

そう言って頭を下げる。

「許さない!絶対許さない!」

後頭部をムギュっと踏まれる。
その体勢のまま、弁解を続ける。

「いや、これえる姉の下僕民から預かった手紙なんだけど、なんか渡すのも困って放置してたやつなんだ。」

「え?」

える姉の足がどけられる。
改めて顔を上げると、える姉がキョトンとした顔でこちらを見ている。

「いや、普段からえる姉のお風呂の残り湯くれとか、踏んでくれるよう頼んでくれとか、脇の写真を送れとか言われてて、さすがにしつこくって…。」

「あー、あの人達かぁ…。」

「その人達からのお手紙を預かっちゃって、そのまま放置してたんだった。もっと早めに処分しとけば良かったかなぁ。」

そう言いつつ後頭部をポリポリと掻く。どうも踏まれた後頭部に違和感を感じる。遠くから豚さんの視線が突き刺さっているようだ。

「手紙の中身読む?あんまりオススメしないけど。」

える姉に手紙を差し出す。
手紙を受け取り、読み進めていくえる姉はどんどん顔を青ざめさせている。

「えぇ〜…この人達こんなことまで…うぇぇ…」

える姉から悲鳴が漏れている。

「と、とりあえず、キミが浮気してなくて良かった。疑ってごめんね?」

「紛らわしい物を持ち続けてたのが悪かったから、える姉は謝らなくていいよ。こっちこそごめん。」

お互いに謝罪する。ちなみに手紙については無かったことにしたようだ。

「でも、える姉」
「うん?なーに?」
「後頭部踏んでる時ちょっと楽しそうじゃなかった?」

ピクっとえる姉が震えた。

「そんなことないかなぁ〜。」

どこか白々しい反応だ。

「はぁ…。癖にならないようにね?」

あまり追求してまた怒らせてもいけないので、これくらいにしておく。

「とりあえず、誤解が解けたならいいよ。ヤキモチ妬いてくれるの嬉しいけど、える姉のこと好きだからそこは信じて欲しいかなぁ。」

そう伝えつつ、広げた書類に向き直る。

「それ今度のテストのやつ?」
「そうだよ。今回は結構面白い問題が作れたと思うんだ。」

高校卒業後、える姉に憧れて教育者の道を進み、そして、今年からあおぎり高校の教員として赴任することになった。
える姉程ではないが、それなりに生徒たちとは円満な関係を築けていると思う。

「またまた〜、そんなこと言って生徒から大人気の先生じゃん。」

そんなことを言って、える姉は冷やかしてくる。

「そういうえる姉だって、益々人気教師っぷりに拍車かけてるよね?そろそろ下僕民からの圧でこっちが屠殺されそうなんだけど?」

える姉も変わらず教員を続けている。
一時期は教員を続けることに疑問を抱いていたようだが、吹っ切れてからはますます魅力的な教師になり、歳を経るごとに女性としても魅力が増し、今では過去と比較にならないほど下僕と化した生徒や教員が増えている。
一説では累計で12万人を超えているとか…。

ただし、自分と付き合っていることは隠していないので、下僕民からの要望の手紙や嫉妬の眼差しが止まらない。

まぁ、そんなものに負けず、える姉を守り続けるつもりだが。

「そういうキミだって、女子生徒からの人気ヤバいんだからね?りえるも相当恨まれてると思うんだけど。」

「まさかー、える姉一筋なのにそんな女子いるわけないでしょ。」

そう軽く受け止めていたが

「そう言うけどね、キミにピンクの視線がいくつも向けられてるんだよ?キミは周りのことには鋭いくせに、自分のことには本当に鈍感なんだから。」

そう言って、呆れたため息をこぼされた。

「うーん、まぁ気をつけておくよ。」

そう返しつつ、える姉の腕を引っ張って抱き寄せる。

「きゃっ!いきなりひっぱらないでよ〜。」

「ごめん、でも抱きしめたかったんだ。」

「そういう甘えたがりなところは相変わらずだよね。」

そんなことを言いながら、抱きしめ返してくれるえる姉はやっぱり女神だと思う。

周りは騒がしいし、当時は卒業したての元生徒と教師のカップルということで良くも悪くも話題になった。
今では、そんな環境にも慣れ、大人になって悪い噂もたたなくなった。
まぁ同じ職場なので、風紀に気をつけるよう教頭からお小言はもらっているが。

「本当にあの年増教頭うるさいんだよねー。」

そう言ってえる姉も愚痴る。

「でも校長先生は理解してくれてるし、教頭の言うことも大事なことだってわかってるでしょ?大人なんだし、節度は保たないとね。」

「相変わらずどっちが年上かわかんないなぁ。」

「そりゃえる姉と並べるように常に頑張ってるからね。」

そう言いつつえる姉を抱きしめる力を強くする。

「夜は赤ちゃんみたいに、このKcupに夢中なのにねぇ〜。」

「あー、いやー、ほら、そこは、ね?男の子ですし?」

突然の指摘にしどろもどろになる。恥ずかしすぎて顔が熱い。

「フフフ、ごめんね。イジワルしちゃった。」

ペロリと舌を出して謝るえる姉が可愛い。

「あんまりいじめないでよ。ただでさええる姉には勝てないんだから。」

そう言って唇を尖らせる。
その瞬間える姉の目にハートが灯ったように見えた。

「もー!キミはカッコイイし可愛いし!ダメ!我慢出来ない!」

える姉に押し倒される。

「ちょっと!まだ仕事がああぁぁぁぁー。」

その後半日ほど、彼の姿を見たものはいなかった。

そんなこんなで、える姉との日々は続いている。いつかは結婚もと考えているが、この調子だと早そうな気はしてる。

その前に下僕にされそうな気もするけど。

でも、どんな立場になろうと、える姉は魅力的で、いつでも応援したいと思う。

彼女がいる限り、側で支え続ける。
小さな頃の誓いは今でも胸に輝いているのだから。

fin






【あとがき】
りえるあふたーだと思った?こっちもあなざーだよ?
あふたー書こうと思ったけど、一部の下僕が叫ぶんだ
「脇を出せー!LCLをよこせー!踏んでくれー!」って…(ほんとごく一部の下僕の事だと思います。)

なので、あふたーから脱線してあなざーになっちゃいました。

もしこれ読んでキュンとしたらあなたも下僕です。
今すぐ我部りえるの配信かアーカイブで豚になりに行きましょう。

閑話休題

書いてて楽しかったですw
読んでるみなさんはいかがでしたでしょうか?
もし面白いと思っていただけたのなら、あおぎり高校のメインチャンネルや我部りえる含むメンバーのアーカイブ見て、一緒にあおぎり沼にはまりましょ(*´ω`*)

それではまた、次のSSで会いましょう〜

2022年11月22日
づにあ


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