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ビスポーク・テーラー

その店は、少し暗い裏路地にあった。一本通りに出てしまえばよく知った街なのに、その存在を今まで知らなかった。人懐っこい笑顔で出迎えてくれた赤髪の人物が、店の主だった。

店主と一時間ほど話し込む。することはそれだけで店を出る。後日、家に商品が届く。私の元へ届いたのは、柔らかな室内着だった。室内着だ、と思った。本当にそうなのかは分からない。

店での会話から、店主はその客の服を仕立ててくれる。「あなたはワイシャツのような人ですね」と言われていたから、てっきりワイシャツが仕立てられてくるものと思っていた。

柔らかなその服に顔をうずめて、今日は早く寝よう、と思った。

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